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2017年5月6日

8824; うつ病で視力低下も 目と心の密接な関係:(毎日新聞)記事紹介です

9健康に暮らす誰も言わない うつの本音

うつ病で視力低下も 目と心の密接な関係
2017年5月6日 西川敦子 / フリーライター(出典;https://mainichi.jp/premier/health/articles/20170502/med/00m/010/016000c)

神経眼科医清澤のコメント:
 これは、毎日新聞に掲載された若倉雅登先生のインタビュー記事です。

 主にはベンゾジアゼピン系の向精神薬による薬剤性眼瞼けいれんのお話ですが、そのあたりにはうつ病のスクリーニング質問票で高い点を示して鬱症状を示す例がある、ということでよいのでしょうか?

 私もレジデント時代以来30年近く若倉先生の後輩としての活動をしており、「日本神経眼科学会」「心療眼科研究会」、「眼瞼(がんけん)・顔面けいれん友の会」、そして最近では「目と心の健康相談室」の開設にも参加しています。ボトックスを用いる眼瞼痙攣や片側顔面痙攣の治療も、井上眼科病院ほどの数ではありませんが、月に150から200件程度を手がけています。
 今日は、若倉先生の登場する記事を広くお読みいただく目的で、ここに引用させていただきます。

  ーー記事の引用ーーー
うつ病で視力低下も 目と心の密接な関係

 なかなか治らない目の疾患の陰に、じつは脳の問題が隠れていた--。こんな意外な事実を、井上眼科病院(東京都)の若倉雅登名誉院長が教えてくれた。「加齢のせいかも」などと見過ごしがちな目の不調と心の関係について聞いた。

◎視力低下の原因はうつ病?

 視力が低下した。乾きがつらい。目が開けづらい。暗いところでもまぶしい。目の周りが勝手に動いてしまう--。目のさまざまな症状の中には、じつは心の問題が関わっている場合があることをご存じでしょうか。

 私は井上眼科病院院長を経て、2012年、名誉院長に着任しました。東京大学医学部非常勤講師、日本神経眼科学会理事長などを兼務した後、現在、15年に設立したNPO法人「目と心の健康相談室」の副理事長を務めています。この他、心療眼科研究会共同代表世話人、メンタルケア協会評議員、日本神経眼科学会相談医、眼瞼(がんけん)・顔面けいれん友の会顧問としても活動しています。

 「どうもよく目が見えないのです」。ある日、近くのクリニックから紹介され、Aさん(20代男性・会社員)が私のもとを訪れました。1カ月前から左目の痛みがあり、両目とも次第に視界がぼやけてきたとのこと。たしかに視力は低下しており、とくに左目は眼鏡をかけても0.1以下という状態です。

 「ほかに気になることは。たとえば、夜はよく眠れますか」。私がこう問いかけるとAさんは、不眠に悩んでいること、目が覚めても気分が悪く起き上がれないことなどを打ち明けてくれました。さっそく質問票を使って抑うつの程度を調べてみると……やはりスコアを見る限り、うつ病が強く疑われる状態でした。精神科を受診するよう勧めたところ、半年もたたない頃でしょうか、「抑うつ症状とともに視力もよくなりましたよ」と元気な声で報告してくれました。

◎「まぶしい」の犯人は……

 目は脳と密接につながった感覚器。それだけに、心身の状態が表れやすいといえます。Aさんのように、ストレスが原因で目に症状が起こることもありますが、その逆に目の症状から心の病気に発展してしまう--というケースも見られます。たとえば緑内障は現代医学では完治できず、進行スピードを遅らせることしかできませんが、そのことを気に病み、不眠や食欲不振などの症状が表れる人もいます。

 こんな例もありました。「ずっと眼科に通っているのですが、よくならないんです」。Bさん(60代女性・音楽教師)は目に不快感があり、まばたきが多くなったと思ったら、だんだんまぶしさが強くなり、開けたい時でもまぶたが開かないほどになりました。人と会うのもはばかられ、外出もままなりません。もちろん車の運転もNG。眼科では「疲れ目やドライアイの影響でしょう」と言われ、治療薬を処方されていますが、改善が見られず、私の診察に訪れたとのことでした。「私の目は一生このままなのだろうか」と思うと気持ちが落ち込み、次第に生きる希望も見失ってしまった、と打ち明けてくれました。

 彼女が抱えていた症状は、「眼瞼けいれん」といいます。自由に目を開けにくくなったり、まばたきが増えたりする病気で、いわば目の開閉スイッチが故障した状態(この状態が「けいれん」です)といえるでしょう。女性に多く、40~50歳以上の年齢層によく見られます。

◎薬の服用が引き金に

 話を聞くうち、もともと不眠や抑うつ感がひどく、精神科にも通っていることがわかりました。数年にわたり、睡眠導入剤や抗不安薬が手放せない状態だそうです。薬の名前を尋ねると、Bさんが挙げたのは、ベンゾジアゼピン系といって、脳のGABA-A受容体に働きかけ、脳の興奮を抑えるタイプのものでした。

 眼瞼けいれんは脳の神経回路の不調によって引き起こされる疾患です。原因には加齢のほか、遺伝、心理的ストレスがありますが、薬の服用が引き金となっていることも多いのです。とくに私の臨床経験では、ベンゾジアゼピン系の向精神薬、抗不安薬、睡眠導入剤を長期間飲んでいる人によく見られるようです。

 Bさんに「薬の服用が原因になっているのでは」と告げたところ、精神科の主治医と相談し、間もなく別の薬に切り替えたとのことでした。新しい薬との相性はよかったようで、睡眠や気分に問題はなく、つらい眼瞼けいれんの症状も治まったそうです。

◎私が「心療眼科」を創設した理由

 目と心、あるいは脳の問題に密接なつながりがあることは、一般にはあまり知られていません。医療の側もそれぞれの専門の立場からしか疾患を診ようとせず、大切な要因を見逃してしまうことがあります。

 しかし、実際にはここに挙げたケースに見られるように、目にまつわるあらゆる疾患の背景には、その人自身が持つ他の疾患や不調、さらに言えば生活習慣、遺伝、そして性格があります。たとえば、同じようにベンゾジアゼピン系の薬を服用していたとしても、目に不調が表れる人とそうでない人がいます。真面目で完璧主義な人はうつ病になりやすいと言われていますが、同じ傾向は眼瞼けいれんにも見られるようです。

 そこで私は10年ほど前、「心療眼科研究会」の創設に携わり、15年にはNPO法人「目と心の健康相談室」を設立しました。目の疾患は生命の危険に関わるものが少ないだけに、異常を訴えても深刻に捉えてもらえないケースが見られます。そんな患者さんたちの不安に応えていきたい、という思いもありました。

◎目は心身の健康のバロメーター

 昔は地域の人たちの健康をいつも見守ってくれる“町医者”がいました。どこの家のおじいちゃんが病気で、どの家に赤ちゃんが生まれたか、など町の人たちのことを何でも把握していたものです。しかし、現代の医療はあまりに専門化、細分化が進んでしまいました。また、大病院やへき地の病院では診療時間が極端に限られており、医師が患者さんについて詳しく知ることが難しいのが実情です。いずれも日本の医療制度の負の側面といえるでしょう。

 だからこそ、みなさん一人ひとりに目は心身の状態のバロメーターであることを知っておいていただきたいと思います。目の不調だけでなく、その背景の問題にもぜひ思いをはせてください。

 また、どこか不調があると不安になり、より高度な専門知識のある医師に診てもらいたいと大きな病院に飛びこみたくなってしまいますが、身近なかかりつけ医とのつきあいを深めていくことも重要ではないでしょうか。そして、悩みを聞いてくれる自分のキーパーソンをぜひ見つけてください。家族で適当な人がいなければ、友人、知人、あるいはカウンセラーでもよいのです。

 今抱えている不安や悲しみが少しでも解決すれば、今抱えている目の不調も和らぐかもしれません。それくらい目の健康と心、さらに人生は深くつながり合っているのです。

   ◇   ◇   ◇

わかくら・まさと 医療法人社団済安堂「井上眼科病院」名誉院長。北里大学客員教授。東京都出身。専門分野は神経眼科、心療眼科。視神経炎、レーベル病など視神経や眼球運動の異常を専門とし、最近は眼瞼けいれんや抑うつによる目の異常など、他施設で扱いにくい病気を多く診ている。「病院は身体の異常だけみればよいのでなく、ロービジョン者(見えにくい人)の社会、心理的支援もすべきだ」と考え、井上眼科病院に「目の相談室」を開設した。現・日本眼科学会評議員、Neuro-ophthalmology誌代表顧問、日本神経眼科学会理事、アジア神経眼科学会名誉会長。一般書に「医者で苦労する人、しない人:心療眼科医が本音で伝える患者学」「健康は“眼”にきけ-名医が教える眼と心のSOS」(以上、春秋社)、「目は快適でなくてはいけない」「目力の秘密」「目の異常、そのとき」(以上、人間と歴史社)など。小説に「芽花(つばな)流しの診療所」(青志社)など。

西川敦子 フリーライター

にしかわ・あつこ 1967年生まれ。鎌倉市出身。上智大学外国語学部卒業。釣り関連の編集プロダクション勤務、温泉仲居を経て、2001年から執筆活動。経済誌、新聞、人事関連雑誌などで、メンタルヘルスや家族問題、働き方をテーマに取材を続ける。著書に「ワーキングうつ」(ダイヤモンド社)など。
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Categorised in: 視力低下