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2018年7月31日

10042:急性前部ぶどう膜炎(Acute anterior uveitisとは)

急性前部ぶどう膜炎(AAU)とは、

急性前部ぶどう膜炎図の出典
久方ぶりにAAUを考えるケースです。前回の記載(2010年08月16日 1596 急性前部ぶどう膜炎(AAU)とは、)をたどって加えるべき内容も考えます。
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急性前部ぶどう膜炎(AAU)の特徴をおさらいしておきます。

急性前部ぶどう膜炎(acute snterior uveitis:AAU)は片目に突然発症する、繊維素(フィブリン)の析出を伴う炎症の強いぶどう膜炎です。その、原因は依然不明ですが、組織適合抗原HLA-B27(白血球の血液型のようなもの)を持つことが多いことが分かっています。

フィブリンとはいうのは、血液の中の液体成分である血漿(けっしょう)から分離される糊のような物質です。炎症で破壊された組織を補修する役割があります。しかしこの病気で、前房にフィブリンがでてくると、虹彩を水晶体前面や角膜後面と癒着させてしまい、眼圧の上昇などの原因となりますから、目には悪い効果を及ぼします。また、房水の中に貯まると下方に沈着して「前房蓄膿(ぜんぼうちくのう)」と呼ばれる状体をおこすことも有ります。

古典的な急性前部ぶどう膜炎の症状は、痛み、充血、羞明、かすみであり、数日にわたって急速に発症するとされます。また、急性前部ぶどう膜炎の典型的な所見は①角膜周囲の充血、②角膜後面沈着物、③縮瞳、④前房内細胞、⑤フレア、⑥フィブリン、⑦蓄膿、⑧虹彩後癒着、⑨前部硝子体内細胞であるという記載が有ります。

発病時には全身倦怠感や発熱などの風邪のような症状も出ることがあります。急性前部ぶどう膜炎AAUは、1回のエピソードであってもよく、再発性であってもよく、症状および兆候は、少なくとも3ヶ月後にすべての治療の炎症がなくなった後に再発します。これはステロイド減量中に再発する他のぶどう膜炎との違いであるといいます。急性前部ぶどう膜炎では、特に痛みを強く感じるところが症状が似ているベーチェット病との違いであるという研究者もいます。

急性前部ぶどう膜炎(AAU)は全身病としての「強直性脊椎炎」に伴って起こることがあります。強直性脊椎炎は、脊椎と仙腸関節(背骨と骨盤を結合する関節)に炎症を起こすという原因不明の病気です。この患者の約90%がHLA-B27を持っていることが知られています。AAUとの最も一般的な関連は強直性脊椎炎ですが、HLA B27に関連するインフルエンザ性関節炎との関連の論述も有ります。一方この組織適合抗原を持つ人は日本人では1%程度しかいません。

最近の病態生理に関する議論では、感染因子に対する遺伝的素因を有する個体の曝露が、結果として生じる虹彩炎を伴う眼特異的抗原(分子擬態)との交差反応性をもたらすと仮定している説があるようです(注)。

診断にあたっては、「既知の危険因子(HLA-B27)の設定における特徴的な疾患」で、他の考えられる原因を排除します。 すべての患者は、最低限の梅毒抗体力価および胸部X線検査を受け、患者インタビューの間に得られた追加の歴史的事実に基づいて追加の検査を受けるべきであるとされます。鑑別には、梅毒、結核、サルコイド、ウイルス(単純ヘルペス、帯状ヘルペス、サイトメガロウイルス)、特発性の急性前部ブドウ膜炎の他の原因を除外します。   

強直性脊椎炎患者の半数にはその発症数年後に急性前部ぶどう膜炎(AAU)が見られます。強直性脊椎炎は、白人に多く、欧米では強直性脊椎炎がぶどう膜炎の主要原因の一つとされます。

急性前部ぶどう膜炎の治療は、基本的には他のぶどう膜炎と変わるところはなく、症状に応じてステロイド薬、非ステロイド抗炎症薬、散瞳薬の点眼・内服・結膜下注射などが行われます。多くの解説を見ますと、早期に集中的な治療がなされれば、比較的良い予後が得られる疾患であるという事の様です。

合併症としては虹彩癒着による続発性緑内障を考えますが、急性前部ぶどう膜炎はまた、中心視力を担う網膜黄斑部に嚢胞状黄斑浮腫(CME)を起こすことが有ります。 これらの合併症は治療の選択に影響を与える可能性があります。

急性前部ぶどう膜炎(AAU)は再発することが多いので、この疾患と診断がついたら、患者が異常を感じた時には早めにかかりつけの眼科医を受診する様に指導しておくのが良いでしょう。
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注:この記事は前回の清澤眼科医院通信記事(2010年08月16日 1596 急性前部ぶどう膜炎(AAU)とは、)のほか、アメリカ眼科学会Eye wiki の最新ページ(2017年12月12日改訂)を参考にしました。この記事作成時にそのページは178,938回もアクセスされた信頼できる記事です。読んでみると交差抗体説(本文の注)が新しいトレンドのようです。
診断と治療の何処までを当院のような開業医で行うのか?言い換えれば、HLA-B27の検出や前房水のウイルス等の感染性物質のPCRによる専門的な分析までを大学に依頼して行うのか?は患者さんとの相談や医師の判断を要する部分という事になるでしょう。
 

Categorised in: ぶどう膜炎