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2019年3月15日

10540:マルコフモデルを適用した点眼治療中の正常眼圧緑内障における視野欠損進行に対する定量的眼内圧低下の効果:論文紹介

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清澤のコメント:本日参天製薬社員に届けられた「Frontiers in Glaucoma」2019, 57号;77-81に「NTG治療:眼圧削減の再検討」という吉川眼科クリニック院長吉川啓司先生らの著した記事が出ていました。

結論は最初の眼圧を25%下げよということ。そして、投稿を読んでみますと上記の原著論文を含む2報がその邦文報の幹をなす論文でした。そこでその元論文を日本語に翻訳して採録してみました。開業後20年にして大学の中ではなく、個人の範囲でこの様に意味のある臨床研究を発信し続ける吉川先生に敬意を表するものです。

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Clinical Ophthalmology  2018; 12:1617-1624。オンライン公開2018年8月30日

吉川啓二 、 サントカズノリ 、 2ヒザキヒロコ 、 橋本雅代

要旨

目的:正常眼圧緑内障(NTG)治療における眼圧(IOP)低下と視野欠損(VFD)進行との関連を定量的に評価する。

患者と方法:2006年4月から2016年3月までの間に、311人の原発開放隅角緑内障およびNTG患者622眼の臨床データが収集された。これらの患者のうち、正常眼圧、アンダーソンの基準による緑内障視野欠損(VFD)、矯正視力≧0.7、> 5年間の点眼治療、12ヶ月間隔で5回以上の視野検査、5回以上の視野検査信頼度係数≦33%、および初期視野検査での平均偏差(MD)が-20 dBを下回ったものをこの後ろ向きデータに含めて分析した。 ベースライン時および5年後のMDおよびIOPデータを収集した。 MDを段階Iから段階IVに分類した後、段階遷移行列をマルコフモデルを用いて生成し、VFDの変化を評価した。 眼球をベースラインからのIOP減少(0%、10%、15%、20%、25%、30%)に基づいて分けた。 マルコフモデルおよびカットオフ値としてのIOP減少率を有するMD勾配を用いてVFD悪化を比較した。

結果:全体として、132人のNTG患者の132個の眼が適格基準を満たした。 ベースラインに対して5年間でMDは有意に減少した( P <0.0001)。 追跡調査の間、マルコフモデルを使用した視野ステージは、60%で一定であり、移行したものは40%であった。 IOPはベースラインと比較して5年間で有意に減少した( P > 0.001)。 様々なIOP減少カットオフ値を達成した各群とカットオフ値を達成できなかった対応する群との間でMD勾配は有意に異ならなかったが、VFDにおける有意な差(  = 0.0432)が 25%カットオフ値を達成したグループとマルコフモデルを使用して評価したときに達成しなかったグループ 間で見出された。

結論:NTG患者では、ベースラインから25%以上のIOP低下を有する群で、VFD悪化が有意に抑制された。

キーワード: 正常眼圧緑内障、視野欠損(VFD)進行、長期経過観察、眼圧低下、マルコフモデル

注:マルコフ過程(マルコフかてい、: Markov process)とは、マルコフ性をもつ確率過程のことをいう。すなわち、未来の挙動が現在の値だけで決定され、過去の挙動と無関係であるという性質を持つ確率過程である。

このような過程は例えば、確率的にしか記述できない物理現象の時間発展の様子に見られる。ロシア人数学者、アンドレイ・マルコフにちなんで命名されている。

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