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2018年11月27日

10300:眼疼痛の心身医学:第12回心療眼科研究会印象記(1)

眼科医清澤のコメント:この記事は眼科ケア2018年11号に執筆された
私の学兄である若倉雅登先生の「私の提言、苦言、放言シリーズ第149回」からの採録です。私の演題も講評の俎上に上っています。毎号面白い記事を掲載されておいでですから、是非各医院で購入していただき、購読いただきたいと思います。⇒会のプログラム

 --記事採録---

第149回 眼疼痛の心身医学:第12回心療眼科研究会印象記(1)

 去る2018年7月14日、東京都の御茶ノ 水で 第12回心療眼科研究会は開催された。今回は私の世話で企画運営し、テーマは通常の各眼科学会ではほとんど取り上げられたことがない「眼疼痛の心身医学」とした。全国から70名を超える参加者と過去最高の7題の応募演題があった。眼科の日常診療で、「眼痛」がいかに解決しにくい問題を含んでいるかを語っている。

各講演を聞いての筆者の印象を記す。

冒頭は、清澤源弘氏(清澤眼科医院(東京都))による「眼の痛み総論」であり、現在、医学的に疼痛をどのように分類して考えられているかが示され、ここから計三時間半に及んだこの研究会の聴衆がまさに「眼痛漬け」になった瞬間であった。

志村由依氏(順天堂大学附属順天堂医院)と筆者(若倉)らは、右限に野球のバットの先が当たり、当初の角膜上皮障害治癒後も疼痛が継続し、眼疼痛性障害として、長年経過をみていた症例を紹介した。就寝中、起床時、仕事中など、疼痛の時期や性状は一定せず、しだいに職務にも影響するほどになった。当初の傷害角膜の範囲は狭く、すでに治癒しており、疼痛の直接原因とは思われなかった。しかし、念のため、角膜の専門家にセカンドオピニオンを求めると、わずかな上皮内水疱があることから、接着不良の可能性もあるとして点眼薬が処方された。その10カ月後、角膜所見に変化はないものの疼痛が継続したため、角膜表層穿刺を行ったところ、疼痛が半減した。器質的障害だったとは断言しがたいが、本人の仕事を継続する意欲がふたたび出てきたことからも、少なくとも一部は器質的だったのかと考えつつ、疼痛の難しさを痛感した例であった。

 岩田文乃氏(いわた眼科(東京都))は、自内障の術中術後に合併症が起こり、激しい疼痛が継続している女性の症例を示した。いわゆる白内障の術後不適応で、対応に非常に苦慮していた。本症例もそうだが、こうした症例の多くは術者とのコミュニケーションが断たれている。術者でない場合でも、専門家として傾聴し、気長にごまかさずに対応するしかないのであろう。

 山本昇伯氏(山本眼科医院〈和歌山県〉)らも、何者かにより車の窓ガラスを鉄パイプで壊されたのを契機に不安と恐怖が増し、眼痛を来した症例を提示した。神経過敏などに処方される桂枝加竜骨牡蛎湯の処方と、カウンセリングにより1カ月後に痛みは消失した。1回のみのカウンセリングだが、勤務地変更などにもつながり、適切な対応だった。このような早期の医療的介在がPTSD(心的外傷ストレス障害)への移行や頑固な慢性疼痛を防ぐと好評だった。

竹田眞氏(竹田眼科〈北海道〉)は広義の三叉神経痛に対して、鍼、漢方薬を用いた7症例を紹介した。いずれも眼嵩上孔か眼宙下孔部に圧痛を確認できたもので、その部分に10分置鍼の施術や黄連湯などの漢方薬の処方により半数以上に効果がみられた。臨床医、患者の双方にとって、治療の選択肢がなくなることほど惨めになることはない。こうした漢方治療の選択肢があるのは、日本人の特権でもあろう。

 岡田正喜氏(市立豊中病院〈大阪府〉)は、「中枢性差明患者を手術しないために」と題した演題を発表した。何年も前に自内障手術をし、手術自体に瑕疵はなく、術後の視機能も良好だったのに、術後に高度かつ長期化する差明が継続した症例を機に、彼が考察してきたものを披露してくれた。中枢性と考えられる疼痛と差明とには共通項がある。痛みの長期化には「扁桃体と前頭前野の発火が関係する」との機能的MRIの成績を引用して説明した内容は、長年の医学のテーマである慢性疼痛のメカニズムの一部が解かれ出していることを示し、印象に残った。

安藤伸朗氏(立川綜合病院(新潟県))には第1回から参加いただいているが、今回も網膜色素変性を有する男性看護師の就労の難しさを示すものであった。障害者の中でも視覚障害者の就労はとくに困難であり、従来の障害者就労に対する法的誘導だけでは、視覚障害者には極めて不十分、不利であることを改めて示した内容であった。

後半の招待講演、特別講演については次回紹介する。

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