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2017年9月24日

9204: 代償 井岡瞬(著):読後印象記

51APAZ5hr3L__SX351_BO1,204,203,200_代償 (角川文庫) 文庫 – 2016/5/25

内容(「BOOK」データベースより)

平凡な家庭で育った小学生の圭輔は、ある不幸な事故をきっかけに、遠縁で同学年の達也と暮らすことに。運命は一転、過酷な思春期を送った圭輔は、長じて弁護士となるが、逮捕された達也から依頼が舞い込む。「私は無実の罪で逮捕されました。どうか、お願いです。私の弁護をしていただけないでしょうか」。裁判を弄ぶ達也、巧妙に仕組まれた罠。追いつめられた圭輔は、この悪に対峙できるのか?衝撃と断罪のサスペンスミステリ。

著者について

●伊岡 瞬:1960年東京生まれ。05年『いつか、虹の向こうへ』で第25回横溝正史ミステリ大賞とテレビ東京賞をW受賞しデビュー。その他の著書に『145gの孤独』『七月のクリスマスカード』がある。2010年、短篇「ミスファイア」が日本推理作家協会賞短篇部門の最終候補作となる。

清澤のコメント:

2016年啓文堂書店文庫大賞というのだけれど、この作品に対する多くの否定的なコメントが述べる様に、普通の家の人々なら、危なそうな人達とは付き合わないだろう。不幸な人とは関係を持たぬが上策とは思っていても、行きがかり上、関係を断ち切れないという場合はままあるとは思う。この家族は、なぜ悪童の達也及びその母道子との関係を拒絶しきれなかったのだろうか?この本を読み直したら、断れなかった理由が見えてくるのだろうか?単にお人よしとするならば、現在の世相ではあまりに不自然である。

他の書評をする多くの読者が述べているように、前半部分は主人公のふがいなさや、悪い奴らの厚かましさと強い悪意に強い嫌悪感を感じて読み続けるのがつらい。30ページ程度で断念したという読書評も多いようである。

怖いもの見たさで読み進めるのだけれど、家を焼かれ、財産を乗っ取られ、親しい女生徒を乱暴されという流れには、読者はいささかイラつく。弱くて反撃出来ないのは、むしろ主人公の罪ないし欠点であると感じた。

主人公圭輔は司法試験を一発で受かる秀才。達也という遠縁の?子供はこれまた稀にみる悪知恵ものという設定である。不幸の中に育てば、このような性格も出来ようというのも、作者は決めつけが激しいとも感じた。

後半では、友人の助けも借りては嵌められそうになった主人公圭輔は悪人の達也を世から除く事でハピーエンドというのではあるが、この悪人達也は反省もしていないし、最後まで達也からは何も取り返せてはいない。蛇は殺せばよいと言うものでもなかろう。悪人に対する暖かい眼も多少は欲しい。伏線を生かして物語の前後が調和していると言っても、なんとも読後に心のぬくもりを感ずるのが難しいサスペンスであった。サスペンスミステリーというものが、その程度のものと言うわけでもなかろうが。

彼の代表作、『いつか、虹の向こうへ』はどうしようか?


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