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2017年3月25日

8707:恐怖記憶を消去するニューロフィードバック技術を開発

8707:恐怖記憶を消去するニューロフィードバック技術を開発:記事紹介
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恐怖記憶を消去するニューロフィードバック技術を開発:

要点:人間の脳が恐怖体験を記憶しやすいのは、危ないものに二度と近づかないようにする防御反応として意味があるからだといわれる。しかし、それがトラウマ(心的外傷)となって日常生活に支障をきたすこともある。このほど、最新の情報学的技術を脳科学に応用して、恐怖記憶を消去する新しい技術が考案され、新創刊のNature Human Behaviour に報告された。

清澤のコメント:視覚にも関連した話で、神経眼科医にも興味深い話題です。最近のサルの実験では大脳視覚領の電気信号パターンで見たもののおおよその形まで推測できるという話(8589:『視覚のふしぎと脳の謎』藤田一郎先生:聴講印象記 ⇒https://www.kiyosawa.or.jp/archives/54710078.html)があり、この研究でいう脳血流パターンで見ているものを推定するデコーダーの制作は十分に予測されるものです。それを恐怖感情などの2次的な脳の反応に結びつけさせる場合、その被験者にフィードバックさせる情報は第一次視覚野(ブロードマン17野)の血流反応パターンでよいのでしょうか?それでよいとすれば、自分の脳(視覚野)が何を見ているかを教えているということになりますが?。長大な記事なので概要を以下に抄出してみました。
(わかりやすいプレスリリースは https://www.nict.go.jp/press/2016/11/22-1.html)

ーー記事本文の抄出ーー
投稿日: 2017年03月19日 16時08分 JST
 恐怖記憶を緩和する治療法として、従来よく用いられてきたのは、曝露(ばくろ)療法。安全な環境下で恐怖の対象の写真を何度も見せることで、怖くないことを学習させる。今回治療の過程でストレスを感じることなく、恐怖記憶を消去する別の方法を開発した。

 それは、DecNef(Decoded Neurofeedback)法という方法を応用したもの。被験者の脳の活動をfMRI(機能的磁気共鳴画像法)でリアルタイムに計測して画像化し、被験者にすぐにフィードバックする。

 被験者はその画像を見ながら、自分の脳の活動が望ましいものに変化していくように、トレーニングする。fMRIで得られた画像データを、人工知能技術で自動的に処理し、脳の初期視覚野のfMRI画像データをもとに、脳活動パターンを計測する。人工知能技術とは:コンピューターの機械学習アルゴリズムで、「スパースロジスティック回帰アルゴリズム」と呼ばれるものを利用。

 大脳視覚野の神経細胞が作る構造体の大きさは、数百μm程度。一方、fMRIの分解能は、3×3×3mmの単位(ボクセル)。多数のボクセルにより作り出されるパターンを解析するのが有効。

 スパースロジスティック回帰アルゴリズムでは、まず、被験者が観察した画像と、そのときの脳のfMRI画像を対応させたデータを収集しておく。これらのデータをサンプルとしてこのアルゴリズムを備えたコンピューターに入力し、コンピューター自身に機械学習を行わせ、対応関係のルールを抽出させる。

 fMRIで新たな脳活動を計測して、その画像データをこのコンピューターに入力すれば、コンピューターはそれがどんな脳活動であったかを推測する。画像データを解読(デコード)してくれるので、このアルゴリズムを備えたコンピューターのことを「デコーダー(解読器)」と呼ぶ。

実験の手順:健常な被験者に赤色の図形を見せ、同時に、被験者の手に微弱電流刺激を与える。これを繰り返すことで、被験者は赤い図形が電流刺激と関連していることを学習し、恐怖反応を示すようになる。恐怖反応の程度は、皮膚の発汗などで定量的に計測する。

トレーニング:fMRI装置の中に入ったまま、被験者にいろいろに脳を働かせてもらう。そのときのさまざまな脳活動パターンが「赤い図形を見る」脳活動パターンにどのくらい近いかを、デコーダーはリアルタイムで計算し、その計算結果を得点にして被験者に見せる。このトレーニングを繰り返すと、被験者は、「赤い図形」の脳活動パターンと「高報酬」が条件付けされる。

トレーニング終了後:被験者に実際に赤い図形を見せたが、発汗などの恐怖反応を示さなくなった。つまり、「赤い図形と恐怖が結びつくという記憶」を、消去できた。

―― 被験者は試行錯誤しながら、その脳活動パターンに近づいていくということ?。

 被験者は、得点(報酬)の表示を大きくしようと、一生懸命、試行錯誤する。最初は手探り状態でいろいろ試し、偶然、得点が高くなったときに、それを繰り返していった。

―― 恐怖の記憶が再現されることなく、消去された。

 厳密に言うと、赤い図形を見たというエピソードとしての記憶そのものが消去されるわけではない。その特定の記憶が恐怖と結びつくこと(連合)を解除している。

 恐怖刺激と結びついていた脳活動パターンが、初期視覚野に表れるたびに報酬と結びつけられた結果、ついには恐怖から切り離された。この連合は、無意識下で起こっていると考えられる。

―― 今回用いられたDecNef法は、どんなことに応用できるか。

 fMRIで計測したデータをデコーダーで解析し、それを被験者にフィードバックしてトレーニングするDecNef法は脳活動を操作できる技術で、現在は視覚野の脳活動が主体ですが、図形の識別能力、色の見え方、顔の好みなど、さまざまな応用が可能であり、すでに多くの論文を発表している。

―― この10年間のシステム神経科学の進歩は大きかった?。

 脳の解明をめざすいろいろな研究プロジェクトが米国を中心に進行した。特に、ヒトの全脳の領野間の結合が機能と解剖学の両方から調べられ、Human Connectome Data Setという1000人規模のデータベースが得られたことが大きい。機械学習アルゴリズムをはじめ、人工知能技術を応用する研究が飛躍的に進歩した。

―― 今後はどのようにこの研究を発展させていく?。

 脳で実際に何が起こっているのかを神経細胞レベルも解明していきたい。応用面では、さまざまな精神疾患や発達障害、自閉症、うつ病、強迫性障害、さらには統合失調症などへの適用についても積極的に探っていく。

Nature Human Behaviour 掲載論文 2017-03-16-1489633068-4031745-vjjlytmxkxfc23c26c11894ccc13dc0cf48067c5fd.jpg

Letter: 恐怖対象への意識的な暴露を伴わない脳活動の強化学習による恐怖反応緩和
Fear reduction without fear through reinforcement of neural activity that bypasses conscious exposure Nature Human Behaviour 1 : 0006 doi:10.1038/s41562-016-0006 | Published online 21 November 2016

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