お問い合わせ

03-5677-3930WEB

ブログ

2017年1月13日

8486:眼瞼痙攣(日本眼科学会サブスペシャリティサンデー演題のご案内)

0) 眼瞼痙攣は眼周囲の不随意なジストニアを示す疾患である。
 鈴木幸久、清澤源弘、若倉雅登が診断、治療、そして社会医学的側面から解説する。
鈴木からは「眼瞼痙攣の診断と眼瞼痙攣患者における脳機能変化」として眼瞼痙攣の鑑別診断を挙げ、診断に有用な方法をわかりやすく説明する。鈴木は眼瞼痙攣の脳機能異常を解明する「陽電子放射断層撮影(Positron Emission Tomography: PET)を用いて多くの研究を手がけてきた。その成果を含め、神経科学的解説も加える。
 清澤からは「眼瞼痙攣と片側顔面痙攣の治療を成功させる10のコツ」として、片側顔面痙攣までを含めた実際的な治療のコツを話す。治療ガイドラインでは、ボトックス投与をファーストラインとするが、治療選択において、医師は患者の希望を聞く度量も必要である。患者は正しい診断に辿り着くまでに疲弊し満足できない治療に絶望している。医師の忍耐とスタッフ間のチームプレーにより可能性のある治療の選択肢を提示しつつ、患者が満足を得られる治療に持ち込む必要がある。
 若倉は日本一多くの眼瞼痙攣患者に対応し、社会医療的改善にも先進的に取り組んできた医師である。医学的側面だけでなく、造詣の深い社会的サポートの観点から「眼瞼痙攣患者の生活実態を社会医学的側面から考察する」というテーマのもと、障害年金や国民年金への対応法についても解説する。

1)眼瞼痙攣の診断と眼瞼痙攣患者における脳機能変化
Diagnosis of blepharospasm and cerebral functional alteration of blepharospasm

鈴木 幸久 1,2,3)、清澤 源弘 2,4)、若倉 雅登 5)、石井 賢二 3)
Yukihisa Suzuki1,2,3) JCHO三島総合病院眼科1)、医科歯科大2)、健康長寿研神経画像3)、清澤眼科医院4)、井上眼 科病院 5) Mishima General Hospital1)、Tokyo Med and Dent Univ2)、Neuroimaging, Tokyo Metropolitan Institute of Gerontology3)、Kiyosawa Eye Clinic4)、Inouye Eye Hospital5)

眼瞼痙攣は、眼輪筋の間欠性または持続性の不随意な過度の収縮により開瞼困難をきたす疾患である。局所性 ジストニアの一型であり、病因についてはまだ解明されていないが、脳の機能的異常が原因と考えられている。 眼瞼痙攣患者の自覚症状の訴えは、「まぶしい」、「眼を開けていられない」など多様で、特に初期では眼輪筋の 異常収縮がみられないことも多い。眼瞼痙攣と鑑別を要する疾患として、ドライアイ、眼瞼ミオキミア、片側 顔面痙攣、開瞼失行症などが挙げられるが、これらの疾患は眼瞼痙攣に合併することもある。診断は、問診、 視診、既往歴などから総合的に判断するが、特に明らかな眼輪筋の異常収縮がみられない症例に対しては、速 瞬、軽瞬、強瞬などの誘発試験を用いると有用である。また、薬剤性眼瞼痙攣も存在するためベンゾジアゼピ ン系薬などの服薬歴の聴取も必要である。ポジトロン断層法と 18F-フルオロデオキシグルコースを用いて原発 性眼瞼痙攣患者21例、薬剤(ベンゾジアゼピン系)性眼瞼痙攣患者21例、ベンゾジアゼピン系薬を使用して いる健常人24例の脳糖代謝を測定した。原発性および薬剤性眼瞼痙攣群では、健常群63例と比較して両側視 床の糖代謝亢進がみられ、薬剤使用健常人においても視床の糖代謝亢進がみられた。眼瞼痙攣では、基底核視床‐大脳皮質回路の賦活化によって視床の糖代謝亢進がおこっており、それが病因の一つになっていると推測した。

[ 利益相反 公表基準:該当 ]  無 [ 倫理審査:承認 ]  有 [ IC:取得 ]  有
【個人番号: 60027】サブスペシャリティサンデー
  -----
2)眼瞼痙攣と片側顔面痙攣の治療を成功させる10のコツ
Ten tips to successfully treat blepharospasm and hemifacialfacial spasm

清澤 源弘 1,2) Motohiro Kiyosawa1,2)
清澤眼科医院 1)、医科歯科大 2) Kiyosawa eye clinic1)、Tokyo Med and Dent Univ2)

治療ガイドラインは、ファーストラインがボトックス投与であるとした。しかし、医師には患者の希望を聞く 度量も必要である。1)痙攣を的確に把握するには、若倉の「自己評価表」が良い。眼輪筋にも注目し片側顔面 痙攣も探す。眼瞼痙攣の多くが抑うつ状態を示すが、眼の治療で解消する。2)涙液の質と量の評価を行い、ド ライアイ例には涙点プラグと点眼で涙液を補う。ドライアイは眼瞼痙攣に必発だからコラーゲンまたはシリコ ンプラグの併用が良い。3) MRI画像診断。特に片側顔面痙攣では vascular compressionがよく見つかる。4) 「眩しさ」や「痛み」への治療もする。遮光眼鏡を処方し鎮痛にも配慮する。5)眼輪筋へのボトックス投与が最 有力な治療法で、重症度と反応を見て量を増減する。20%の初期無効症例があり、皮下出血などの副作用も事 前に説明する。6) 経口薬の併用も考える。リボトリールやアーテン投与が可能だが、薬剤依存には留意する。 ベンゾ系抗不安薬投与が原因の薬剤性眼瞼痙攣の存在にも留意する。経験的には抑肝散加陳皮半夏も有効。7) 知覚トリック利用のクラッチ眼鏡が有効。8)眼輪筋切除(兼眼瞼挙筋短縮術)も重症例には使える。ボトック ス施注頻度は減らず、表情が変わる欠点がある。9) 患者への積極的働きかけと定期的観察が重要。10) 患者の ニーズを常に考える。院内に話を聞く係を設定できると猶良い。眼瞼・片側顔面痙攣患者友の会への参加も薦 める。

[ 利益相反 公表基準:該当 ]  無 [ 倫理審査:該当 ]  無 [ IC:該当 ]  無
【個人番号: 60036】サブスペシャリティサンデー
    -------
3)眼瞼痙攣患者の生活実態を社会医学的側面から考察する   
Important aspects of social medicine in blepharospasm
若倉 雅登 Masato WAKAKURA
井上眼科病院 Inouye Eye Hospital
眼瞼痙攣は、開瞼困難だけでなく、眼疼痛、羞明、眼部不快感などの高度の感覚過敏症状が継続するために、 自在な視覚の利用が不能になる疾患である。しかし、視力視野などの視機能検査では表現されないため、本症 の一般的理解は進んでいない。 NEI VFQ-25や自作診断表を用いた過去の研究では、視覚関連QOL(生活の質)の低下は明らかであった。そ こで、本症の実態を社会医学的側面から考察を加える。 演者らが 2012年の 1年間に当院を初診した 1116例(男女比3:8、平均年齢66歳)の本症(本態性:薬物性= 2:1)について、その臨床的特徴を調べたところ、自作診断表で QOL低下と判断されたものは 33.7%に及び、 特に重症度(若倉分類)の高い4と5ではその 49.7%で低下していた。 さらに気分障害が併存している例は半数近くあり、一般に理解されている以上に患者は 社会生活が困難になっている実態が明らかになった。 しかし、視覚障害者は視力などの数値で判断されるため、それと認識されず、障害年金においても、近年「眼 瞼の異常」に含まれたものの、準3級として扱われ、国民年金だけの加入者では極めて認定されにくい。つま り、本症により就労が不可能、あるいはパート勤務しかできない例などでも全く福祉の支援が得られない状況 にある。 こうした実態を我々は十分把握、理解し、専門家の立場から福祉政策に改善を求めるべきであろう。

清澤のコメント:以上が全体抄録と3人の演者が提出した抄録です。リーズナブルなお話になると思いますから、最終日午前のサブスペシャリティサンデーには、わたくしたちの眼瞼痙攣のセッションにご参集くださることをお願い申し上げます。

Categorised in: 未分類