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2016年9月28日

8174:海綿静脈洞部脳硬膜動静脈シャント(Dural AVM, CCF)の眼症状とは

海綿静脈洞部脳硬膜動静脈シャント(Dural AVM, あるいはCCF)とは?

 海綿静脈洞部脳硬膜動静脈シャントは頸動脈海綿静脈洞瘻(CCF;carotid cavernous fistula)とも呼ばれますが、その臨床症状では、徐々に増悪する結膜充血が特徴的。眼圧上昇も特徴的で、これは上強膜静脈圧の上昇を反映している。眼筋麻痺もしばしば見られる。患者が夜間などに目の奥にいわゆる雑音を感じることもある。また、医師が聴診器を目に当てると血管雑音ブルーイが聞こえることもある。

MRIで上眼静脈の拡張を確認することは診断に有用で、脳硬膜の肥厚などもありうる所見、確定診断や治療には血管内にカテーテルを入れての造影が行われるが、それをきっかけに自然消退することもある。逆説的増悪paradoxical worthningという言葉(Sergat)があり、疾患が診断される頃に増悪する結膜充血や複視の増悪が、海綿静脈洞部脳硬膜動静脈シャントの自然消退につながる前兆である場合があるというものである。

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海綿静脈洞部脳硬膜動静脈シャントとは:

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高齢女性にみられる上強膜血管の怒張とこれに伴う眼球運動の制限という症状は、低血流タイプの海綿静脈洞部脳硬膜動静脈シャントでは典型的なものである。患側の結膜充血が強いことは多いが、節流が前方に迂回しない場合には正常でもよい。複視を示すので、外眼筋麻痺などと紛らわしいし、時によっては外転神経麻痺、動眼神経麻痺ないし滑車神経麻痺の形をとることもある。

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これらの脳神経麻痺は、海綿静脈洞圧の上昇によるものと考えられる。うっ血が前方に広がって眼窩の静脈圧が高くなれば、目の充血などの眼球症状が出現してくる。Phelps らはred eyed shunt syndromeと呼び、私はこれを雑誌「神経眼科」への症例報告で、赤眼短絡路症候群と翻訳した。これは数ヶ月以内に自然消退することも多い。

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臨床症状では、徐々に増悪する結膜充血が特徴的である。これは上強膜血管と結膜表層血管の角膜輪部での吻合が拡張したものであって、メドゥーサの頭(caput medusae)と呼ばれるものである。スリットランプでよく見ると、直筋に沿って後ろから流れてきた静脈性の血液は網目状に拡張しながら強膜上を角膜輪部に進み、そこで結膜上の静脈に吻合してその両者を拡張怒張させ、充血を見せている。

図11

数ヶ月も経つと両社の直接の吻合が発達して、この充血は目立たなくなる。眼圧上昇も特徴的で、これは上強膜静脈圧の上昇を反映しており、その眼圧は通常20-25mmHgと中等度の上昇にとどまる。

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隅角をスリーミラーで見ると、シュレム管には逆流した血液の流入が見えることがある。網膜でもうっ血が静脈拡張や眼底出血としてみられることがある。眼筋麻痺もしばしば見られるが、うっ血による外眼筋腫大に伴うものか、神経の虚血や圧迫によるものかは必ずしも明らかではない。CT やMRIで上眼静脈の拡張を確認することは診断に有用であるが、確定診断や治療には血管内にカテーテルを入れての造影や、コイルの挿入などの治療が行われる。
図12

鑑別診断として、複視に対しては外眼筋麻痺、充血に対しては結膜炎や上強膜炎、 眼圧上昇に対しては緑内障、そして眼底変化に対しては網膜静脈閉塞症などが考えられるが、海綿静脈洞部脳硬膜動静脈シャントを正しく診断できるかどうかは、眼科医が総合的にこの疾患をイメージできるかどうかにかかっている。

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治療では、まず軽症例ではあわてないことである。眼圧上昇、網膜静脈閉塞症、眼筋麻痺などに注意して症状の回復を待つことで、自然治癒する場合が少なくない。点眼治療で眼圧下降をはかるが、上強膜静脈圧が上昇しており、眼圧降下剤の効果は通常は不良である。しかし、眼圧上昇の期間が数か月と短いため、緑内障性視野変化が起きることは少ない。網膜静脈閉塞が起こる前に、動静脈ろうが自然消退して眼症状は寛解をすることが多い。眼球運動障害は脳神経麻痺でも生じるし、外眼筋自体の腫脹でも起こるが、複視は通常、3月以上は持続しない。

 祖0の成因は明らかではないが、糖尿病の合併は多く、シャントとか動静脈奇形と呼ばれるが、その発症は少なくとも中年以降であることが多いから、後天性の疾患と考えられそうである。シャント血流の多いタイプと少ないタイプに分けられるが、外傷を契機に脳硬膜上の動脈が損傷して海綿静脈洞に血流が漏れるタイプではシャント血流は多いことが多い。

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重症例に対しては、眼科では眼圧上昇に伴う緑内障対策、眼球運動障害に伴う複視対策、眼球突出に伴う角膜障害対策などを行った上で、脳外科に治療を依頼すればよい。脳外科では海綿静脈洞部硬膜動静脈シャントに対する血管内手術で静脈洞に金属コイルを充填する治療が検討される。その治癒率は高い。

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海綿静脈洞部脳硬膜動静脈奇形を論じた当ブログ記事もご覧ください。

2006年02月01日
42 海綿静脈洞部の脳硬膜動静脈奇形⇒リンク

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