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2016年9月21日

8150:眼科医にとってイートン・ランバート症候群とは

眼科医にとってのイートン・ランバート症候群とは:

 このブログに以前記載した神経眼科勉強会における日大のご発表のメモに戻ってみると、「イートン・ランバート症候群の頻度は10万人に0,75と少ないが、筋無力症の10分の1を占めるともいわれる。眼症状は少ないが、それでも2割では眼瞼下垂がみられる。抗P/Q型VACC抗体と筋電図が診断の決め手。」ということでした。

 長年、神経眼科外来を拝見していても、これがこれが典型的なイートン・ランバート症候群だという例には出会いませんでした。しかし、今回は年齢と性、合併する肺腫瘍の診断などもそれらしい患者さんを拝見しました。

 さて、今日はランバート・イートン症候群を日本語「wikipediaを参考にお浚いしてみます。勝手な略号を知らない方が悪いといわんばかりの記述は医師であるわたくしにも実にわかりにくかったですから、アルファベットの略語はすべて略さない形に戻してみました。下の動画は患者さんが世のために自ら写した得難いものです。

  --記事引用開始--
 ランバート・イートン症候群またはランバート・イートン筋無力症候群(Lambert-Eaton myasthenic syndrome、LEMS)は傍腫瘍性神経症候群である。80~90%にP/Q型電位依存性カルシウムチャネル自己抗体(抗P/Q型VGCC抗体)が検出される神経筋接合部かつ自律神経疾患でもあり血漿交換やステロイド治療に反応する。

 過半数の症例(50~60%)で肺小細胞癌(SCLC)を合併し、肺癌の治療によりランバート・イートン筋無力症候群(LEMS)自体も寛解する。極めてまれではあるが悪性疾患以外でも1型糖尿病、自己免疫性甲状腺炎、関節リウマチといった自己免疫疾患の合併例や家族集積性が報告されている。また約10%に小脳失調がみられ発症機序は傍腫瘍性神経症候群と推察されている。

◎疫学
オランダでの検討では100万人あたり2~3人の有病率である。稀な疾患のため正確な頻度は不明である。日本での検討では男女比は3対1であり平均年齢は62歳であった。肺小細胞癌(SCLC)の合併率は61%であり、その他の癌が8%、31%が癌を合併していなかった。癌合併例ではその84%で悪性腫瘍の発見前に肺小細胞癌(LEMS)の症状が出現している。ランバート・イートン筋無力症候群(LEMS)からの立場では肺小細胞癌(SCLC)の合併率が高いが、肺小細胞癌(SCLC)の立場ではLEMSの合併率は極めて少なく数%以下である。

◎病態
ランバート・イートン筋無力症候群(LEMS)の病因自己抗体はP/Q型電位依存性カルシウムチャネル自己抗体(抗P/Q型VGCC抗体)と考えられている。腫瘍に対する免疫反応を契機に産出された自己抗体が神経終末の電位依存性カルシウムチャネル(VGCC)に対して交叉反応を起こす。その結果、同チャネル量が減少し、カルシウムイオンの流入が減少することで神経終末からのアセチルコリン(Ach)放出が抑制され筋力低下や自律神経症状といったランバート・イートン筋無力症候群(LEMS)の症状が出現すると推察されている。

小脳失調の合併

以前よりランバート・イートン筋無力症候群(LEMS)は小脳失調症を合併しやすいことが報告されており亜急性小脳変性症などと命名されていた。傍腫瘍性小脳変性症を合併したランバート・イートン筋無力症候群(PCD-LEMS)とも言われる。傍腫瘍性小脳変性症を合併したランバート・イートン筋無力症候群(PCD-LEMS)は、ほぼ全例で肺小細胞癌(SCLC)を合併していること、数週間から数ヶ月以内にランバート・イートン筋無力症候群(LEMS)症状と傍腫瘍性小脳変性症(PCD)症状が混在する。抗P/Q型VGCC抗体はランバート・イートン筋無力症候群(LEMS)単独群と比べて高値を示す。免疫学的な治療はランバート・イートン筋無力症候群(LEMS)の症状は改善させるが傍腫瘍性小脳変性症(PCD)に対しては難治性であるといった特徴がある。

◎症状

ランバート・イートン筋無力症候群(LEMS)症状はの90%以上は体幹、四肢筋、特に下肢の筋力低下で発症し歩行障害が生じる。下肢の筋力低下は筋の強収縮後の筋力改善(post-tetanic potenciation)がみられる。

眼球運動障害と眼瞼下垂の頻度は低く、重症筋無力症(MG)のように眼症状のみが出現することは殆ど無い。口渇、散瞳、膀胱直腸障害などの自律神経障害や小脳失調も認められる。ランバート・イートン筋無力症候群(LEMS)の増悪時は球症状を示しクリーゼに至る。

高齢で悪性腫瘍を随伴する症例では自律神経障害が重篤な傾向がある。重症筋無力症(MG)では深部腱反射の低下は起こらないがランバート・イートン筋無力症候群(LEMS)では深部腱反射が低下する。反復運動後は深部腱反射が亢進する。

◎検査所見

○反復刺激筋電図検査:(清澤の付す脚注;waxingとwanibg)

ランバート・イートン筋無力症候群(LEMS)の診断に必須であり、重症筋無力症(MG)との鑑別にも有用である。重症筋無力症(MG)では反復刺激筋電図検査(CMAP)振幅の低下はないがランバート・イートン筋無力症候群(LEMS)では反復刺激筋電図検査(CMAP)振幅が著明に低下する。運動や高頻度刺激、数分間の低頻度刺激では筋の疲労がみられ反復刺激筋電図検査(CMAP)の漸増がみられる。低頻度刺激ではwaning現象が観察されるが重症筋無力症(MG)の減弱waningと異なり1発目から10発目まで徐々に漸減する。重症筋無力症(MG)の場合は4、5発目以降で漸増することが多い。高頻度反復刺激筋電図で100%以上の増強(waxing)現象があればランバート・イートン筋無力症候群(LEMS)と診断できる。

複数の筋すべてにおいて50%以上の増強(waxing)現象が認められた場合もランバート・イートン筋無力症候群(LEMS)の可能性が高い。さらに抗P/Q型VGCC抗体陽性患者のほうが陰性患者よりも反復刺激筋電図検査(CMAP)振幅が低く、増強waxingが大きい。

○抗P/Q型VGCC抗体;長崎大学第一内科で測定可能である。

○塩化エドロホニウム試験(テンシロン試験、アンチレックス試験のこと)

ランバート・イートン筋無力症候群(LEMS)患者では重症筋無力症(MG)患者と比較してランバート・イートン筋無力症候群(LEMS)症状が劇的に改善する場合は少ないが注意深い観察を行うと殆どの例で改善が認められる。改善が認められる場合はコリンエステラーゼ阻害薬の使用を検討する。

○サクソン試験

ランバート・イートン筋無力症候群(LEMS)の自律神経系の評価として最も重要である。ランバート・イートン筋無力症候群(LEMS)の自律神経障害では唾液分泌が低下する。また3,4-DAP(ジアミノピリジン)を投与すると唾液量が回復する。

○神経筋接合部生検

ランバート・イートン筋無力症候群(LEMS)では診断の有効性は低い。

○悪性疾患の検索

文献上はランバート・イートン筋無力症候群(LEMS)患者ではランバート・イートン筋無力症候群(LEMS)発症の6年前から発症5年後まで悪性腫瘍が認められており、その中央値は発症後6ヶ月であった。ランバート・イートン筋無力症候群(LEMS)発症後5年間は精力的に悪性疾患を検索するべきという意見もある。

◎治療

ランバート・イートン筋無力症候群(LEMS)の治療の基本原則は肺小細胞癌(SCLC)の発見とその根治的治療である。なぜならランバート・イートン筋無力症候群(LEMS)患者の肺小細胞癌(SCLC)を化学療法、放射線治療、外科手術で治療し根治させるとランバート・イートン筋無力症候群(LEMS)症状も著明に改善するからである。症状改善のための治療として3,4-DAPの投与やコリンエステラーゼ阻害薬の投与も検討される。悪性疾患が指摘できない場合は重症筋無力症に準じて免疫学的な治療を行う。

◎予後

肺小細胞癌(SCLC)の治療反応による。

清澤の付す脚注:筋電図のwaxingとwainingとは

反復刺激試験;神経・筋接合部(neuromuscular junction)の機能の評価に用います。

運動神経と筋の接点である神経・筋接合部(または終板 end-plate)は、神経終末の細胞膜(シナプス前膜)と、筋形質膜(シナプス後膜)とが間隙をはさんで接しており、アセチルコリン(Ach)によって興奮が伝達されています。

正常な場合には刺激周波数や刺激回数が増減しても誘発筋電図上M波の振幅・面積は一定に保たれるが、疾患などによっては漸減現象や漸増現象が見られます。

  ★ 漸減現象(waning):低頻度の反復刺激をすることにより、M波の振幅・面積が減衰する現象をいいます。

アセチルコリン受容体(AChR)数の減少によるもので、重症筋無力症(myasthenia gravis;MG)で認められます。通常では、漸減現象は4、5発目まで徐々に振幅・面積が減衰し、それ以降は横這いかやや回復傾向を示します。

MGの診断では、外眼筋・頚筋・上肢の近位筋に続いて手掌筋が侵されることが多いため、とくに外眼筋の検査は欠かさないことが重要です。しかし、外眼筋の検査は手技的に困難であるため、一般的には眼輪筋が利用されます。

  ★ 漸増現象(waxing);筋無力症候群(Lambert-Eaton-myasthenic;LEMS)では、シナプス前膜のACh遊離部位数が減少するため、放出されるACh量子数が減少しています。その為、低頻度刺激でのM波の振幅や 面積は非常に小さいが、高頻度(10Hz以上)刺激にてM波の振幅に著明な増大が見られます。この現象を漸増現象(waxing)といい、それは特に20~50Hz刺激で顕著となります。

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