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2016年5月1日

7708:研修医の先生方に:開業医ならではの手技を見て帰ってください。

清澤眼科医院には院長の他に非常勤の医師としてそれぞれの専門分野を持つ多数のベテラン医師と、大学から交代で派遣される東京医科歯科大学および東京女子医科大学からの後期研修医の先生方がいます。

後期研修医の先生方にはさまざまな評価や治療を手伝っていただきます。大学や専門病院への時間のかかる紹介状の作成もお願いしています。本日は4件もの白内障手術などの依頼状も記載していただきました。この依頼状にもお作法があります。

 大学では経験することの少ない開業医ならではの治療も様々ありますので、時に応じてその治療を見て貰い、場合に依っては安全を見極めて涙管通水程度の処置なら手伝って戴くこともあります。最近は、後でこのことを話してあげようという事を記載メモするノートを作って診療終了後にお話したり、個々の症例が特定できないように工夫しながらこのブログに記載したりするのを楽しみにしつつ診療を進めています。

 次の各項目が本日の診療後に後期研修医先生に確認と説明をした事柄です。

 今日の応援の先生も学ぶ姿勢の見られる優れた医師でした。

1)ボトックス注射について:眼瞼痙攣および片側顔面痙攣が対象です。数か月で薬効が切れて再投与が必要になることは多いですが、値段の高い薬剤の注射は、「一度投与を受けたら無限に投与継続が必要になる」という間違った認識を与える説明をすべきではありません。「薬効が切れて、再投与を受けたいと患者さんが言うならば満2か月以上の間をおいてボトックスを打つ。」というだけで、「再投与が必要になる」のはボトックスの責任ではありませんし、「原因を治す治療」がある訳でもありません。また、2割程度の割合でボトックスが効かないと訴える患者さんはいつでも存在します。しかし、その半数は、数か月後に再投与を希望しますから、全く効いていないわけではないと判断しています。

2)SSOH:先天的な視神経低形成で下方または耳側にマリオット盲点に繋がる視野欠損を持つ患者さんが居ます。これをSSOH(superior segmental optic nerve hypoplasia)と呼びます。緑内障なのか?この疾患なのかが問われるケースがしばしばいます。SSOHでは視野欠損は比較的進行しにくいですが、緑内障のような進行が無いと決まったものでもないので、「これは緑内障ではないから点眼を出すのは間違い」という言い切った説明は乱暴だと思います。確実な定期検査か、状況に応じたなにがしかの点眼も考えられるでしょう。緑内障疑いの患者さんの中にも、この疾患が混ざっていることは覚えておきましょう。

3)オルソケラトロジー:夜間にハードコンタクトレンズを載せて、翌朝レンズを外した時に裸眼視力が良くなっているという手技を毎晩繰り返す治療です。子供に行うと、近視の進行がある程度抑えられるという利点が示されていますが、1)20歳以下に対する適応は「主治医の裁量権」に基づいて行われているものであるという現況の説明と、2)それゆえ、私費診療であるという事への納得を得る必要があります。

 今月の『日本の眼科』(日本眼科医会発行)にもこの療法に関する眼科医アンケートが掲載されておりました。(この記事は採録準備中)研修医の方々もこの記事を見ておいて下さるとよいでしょう。

4)先天眼振:生まれつきないし生後数か月くらいで見つかることが多い水平方向の眼振(眼の揺れ)です。原発性で原因が特定できない場合と、眼白児症で黄斑の形成が悪い場合があります。片眼を覆うと反対眼に特有な眼振が発生し、残された開放眼の視力が下がることがあって、これを潜伏眼振と呼びます。視力不良例であれば特殊な斜視手術もあります。当医院では山田先生が月に一度、専門の外来を持って居て、彼が属する国立東京病院のプロトコール(国立病院にてIRB取得済み)に従ってその薬剤治療に取り組んでくれています。

5)ミグレイン、閃輝暗点(シンチレーション・スコトーマ):月に数回くらいの頻度で視野欠損の発作が起きます。ギザギザとした形の光が両眼の視野の中央に見えて、やがてそれが周辺に向けて広がり、中央は見えなくなります。やがて頭痛や吐き気を伴うこともあります。視野と画像診断で脳腫瘍などの症状ではないことまでを調べ、最少量の内服薬を投与してコントロールを付けるべく、外来管理を開始します。人口の5%程度存在するそうです。

6)最重要:やや漠然としてしまいますが、神経眼科診療では次のことが大切です。

『科学を重視すると、現実から離れる。実地本位に流れると、科学を失う。いずれを採るか、個々の患者のニーズも違う。 ”いま目の前にいる患者さん”のために良きように。』 藤野貞(1991.10.15「神経眼科臨床のために」初版の巻頭言、原著者は2005年12月逝去享年83歳)

 夏目漱石の『草枕』冒頭にある「智に働けば角が立つ。 情に棹させば流される。 意地を通せば窮屈だ。 兎角に人の世は住みにくい。」に似ておりますけれど。藤野格言には答が示されています。

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