お問い合わせ

03-5677-3930初診受付

ブログ

2016年3月20日

7584:難治性の甲状腺眼症の話を井上立州先生に伺いました:聴講記

38793bef-0fdd-4cc5-899d-612a3eeb3205
難治性の甲状腺眼症の話をオリンピア眼科病院の井上立州先生に伺いました
(第29回甲状腺眼症研究会) 
1、 難治性の甲状腺眼症 井上立州先生
平成17年4月から井上眼科に入職

ガイドラインにおける甲状腺眼症の定義(http://www.japanthyroid.jp/doctor/img/basedou.pdf)
眼瞼:抗体浮腫、結膜:充血。角膜、視神経症など

○治療消炎治療(ステロイド、放射線))か、手術治療か
○球後の炎症:ステロイド治療してもさらに眼窩減圧術が必要であった例がある。
○難治性甲状腺眼症
繰り返す、障害が残る、ほかの特徴を持つ
オリンピアクリニックでは2013年の甲状腺眼症患者の初診は2537例だった。
ステロイドが必要な患者は3分の一、ステロイド全身投与が188例で、初回ステロイド投与は120例程度であった。

甲状腺治療では、抗甲状腺薬使用例が88例。
これらにはTRAb陽性例(注2)が多い。

再発例のプロフィールは、甲状腺眼症発症から38か月で、眼症発症から5か月であった。喫煙歴があるものが半数で多い。

初回治療後の患者を改善群82例、再燃群44例として両社の特徴を比較した。
再燃群に行われた治療は:ステロイド19、リニアック26、眼窩減圧は2例。
再燃群ではTRAbが高く、TSAbも高い。

MRIで:眼球突出と外眼筋肥大が強い。炎症も残っていた。
TSAb:再燃群では再発の有無に因らず何時も高い

再燃群は初めての発症からの期間が短い、CAS(脚注2)が高い、治療前の炎症所見が強い。

症例1:結膜が腫れて、閉瞼不能。浮腫になった結膜を切除し瞼瞼縫合、球後注射、メルカゾルとステロイド投与。:眼窩減圧術(内方と下方)を施行した。斜視には:内直筋と下直筋を後退した。

症例2:アイソトープ治療されていた例。:FT3が5.3。喫煙歴あり。MRIで筋は腫れていない。RI後2年以上してからの再発例。FT3=4,4, TS高値。
再診時に複数の筋に肥大があった。局所治療は無効だったためパルスを追加した。TSAbは全経過で高かった。
症例3、バセドーでメルカゾール内服中。複視が強いので紹介された、ホルモンは高くなくて、抗体値は高い。眼球運動障害は強く、視神経症も発症している。ステロイド漸減と球後注射を施行。眼窩下減圧術を行った。再発で、2度目のステロイド。直筋を下げる手術をした。TSAb6000%と高い。
症例4:RI治療を30年前から受けていた例。TRAb、TSAbとも高値。ステロイドで筋の肥大が改善した。外眼筋の後転手術。2年で再発した。TSAB900%。筋が腫れていたときにはTSAbが上昇していた。

眼科医清澤のコメント:これだけの数の甲状腺眼症をバタバタしないで的確に処置していることには今更ながら脱帽です。甲状腺眼症の治療を成功させるのには局所ステロイド(球後注射)、ステロイド経口投与、ステロイドパルス、放射線照射、そして眼窩減圧術が機動的に行える準備が必要です。なんでも其処に送ればよいという事ではなくて、集中的な治療が必要なケースを見極めてあげないと、多くの場合には内科治療は近所で行われているでしょうから、軽症の患者さんには紹介はかえって迷惑です。
複視を訴える患者さんが当医院や医科歯科大学に来院した場合、私は甲状腺ホルモン値の他、抗甲状腺関連抗体などを含む「甲状腺関連の採血」をセットで出し、MRIも同時にオーダーします。眼窩部の異常が軽微で、甲状腺関連の採血に明らかな異常があれば、医科歯科大学の内科(糖尿病、内分泌)部門に紹介して眼は眼科で引き続き拝見します。もし眼症状が著明であれば、今日話を聞いたオリンピアクリニック井上眼科病院に時を移さず治療開始をお願いするようにしています。オリンピア眼科では特有な評価様式が確立されていて、各部分の評価にチェックがなされた返書が来ますから、その後の治療の成果とともに、私たちでの見立ての評価もできます。
講演後、演者に「IgG4関連眼症で、バセドーと紛らわしいものが少なくないのではないか?」と聞きました。「少なくはないが、今日の症例からは、そのような例は慎重に覗いてある。」という事でした。

清澤注1: TSHレセプター抗体(TRAb)は甲状腺細胞膜上にあるTSHレセプターに対する自己抗体で、甲状腺を刺激する抗体(甲状腺刺激性レセプター抗体、TSAb)とTSH作用を阻害する抗体(TSH作用阻害抗体、TSBAb)に分類される。

TRAbはバセドウ病における甲状腺機能亢進症の原因といわれ、TRAbがTSHと同じように甲状腺を刺激することにより発症する自己免疫性疾患であることが判明している。

甲状腺機能亢進症はバセドウ病だけでなく、亜急性甲状腺炎や無痛性甲状腺炎などがあり、特に無痛性甲状腺炎とバセドウ病は臨床症状や甲状腺ホルモン検査だけでは鑑別しにくく、バセドウ病治療で使用される抗甲状腺薬は重大な副作用が報告されていることから、日本甲状腺学会では「甲状腺疾患診断ガイドライン2010」でバセドウ病の診断鑑別にTSH、FT4、FT3とTRAb検査((甲状腺刺激性レセプター抗体、TSAb)とTSH作用を阻害する抗体(TSH作用阻害抗体、TSBAb)のこと)を行うとしている。

清澤注2: 甲状腺眼症の活動性の評価 Clinical activity score (CAS):
□ 後眼窩の自発痛や違和感 、□ 上方視、下方視時の痛み、 □ 眼瞼の発赤、 □ 眼瞼の腫脹、 □ 結膜の充血、 □ 結膜の浮腫、 □ 涙丘の発赤・腫脹
European Group on Graves’Orbitopathy (EUGOGO)は、眼症の活動性の評価を7点満点で評価(上記の項目を各1点として合計点で評価)、 CAS≥3以上は活動性の眼症としている。

Categorised in: 未分類