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2015年12月31日

3728:利益増加で賃金が減る、それには理由がある:週刊ダイヤモンド、野口悠紀雄:を読みました

yjimage 毎週土曜に送られてくる定期購読の週刊ダイヤモンド。12月19日号にはおやっと思わせる記事が出ていました。
 思い出してネットでダイヤモンドx野口で探しても、出版したばかりで見つからず。諦めかけていたところ、年末に机の整理をしていましたら脇机の方から元の本が見つかりました。本と、ダイヤモンドオンライン、それに「語られる言葉の河へ」(http://blog.goo.ne.jp/humon007/e/685769050d10e59c52a70fa4ee51b1c3?st=0)を拝読して。これらを参考にサマライズ。

清澤のコメント:日本の産業界は生産性も給与水準も低い中小零細と、生産性も給与水準も高い大企業の2重構造であると。現在の円安と株高にも拘わらず給与水準が上がってないのは中小零細企業の影響であると。最近の映画でもはやりの「下町ロケット」のように中小零細企業でも特殊技術を持つ優良企業は確かにあるようですけれど。
 振り返って、我々医療業界は労働集約型で典型的零細スタイル。工夫の仕様がなくはないですが、労働生産性をあげるという事を声高に叫ぶことも難しいです。それでも参考になるエッセーでありました。
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企業の利益増加で賃金が減る それには理由がある

週刊ダイヤモンド 2015年12月19日

○企業の利益が増加している。他方、賃金所得は目立って増加しない。
 なぜこのようなことになるのか? 

○「企業は儲かっているのに、内部留保として溜め込んでいる。だから、それを賃金に配分せよ」という意見が出てくる。しかし、人件費削減をせざる得ないメカニズムは、企業を産業別・規模別に区分してみないとよく分からない。円安による影響は、産業や規模によって大きく異なるから。

○法人企業総計により、アベノミクスの前と後を比較する。
   ①「大企業」・・・・資本金10億円以上の企業
   ②「中小零細企業」・・・・資本金1千万円以上1億円未満の企業

○円安の恩恵を受けているセクターは、製造業の「大企業」。このセクターの多くは輸出産業。売上原価が増えずに、円で評価した輸出の売り上げが増加している。そのため、売上高の増加とほぼ同額だけ利益が増加している。利益の売上高に対する比率が低いので、売上高が2.25%でしかないのに、利益の増加率は75%を超える。

○平均株価に主として反映されるのは、このセクターの動向。このセクターと他のセクターの事情は大きく違うので、平均株価によって判断すると、日本経済全体の状況を見誤る。

○「中小零細企業」は、円安によって負の影響を受ける。売上高が減少したり、円安による原材料価格の高騰に直面する。

○中でも「製造業の中小零細企業」が、影響を強く受ける。多くは、大企業の下請け企業。大企業の売り上げ増は生産の拡大を伴わないから、下請けに対する発注は増えない。他方、部品調達が海外に移行しているため、大企業から国内下請けに対する発注は減少する。同期間中の売上高の減少率は10%にも及ぶ。これに対応して、売上原価も人件費も約1割減少。

○円安によって負の影響を受けているもう一つのセクターは、「非製造業の中小零細企業」だ。売り上げが減少しているにもかかわらず、ガソリン価格や電気代の値上がり等で売上原価が増大。やはり人件費を削減せざるを得なくなる。このセクターの人件費は66.4兆円という巨額なもの。

○以上を整理すると、
   大企業の人件費総額は約50兆円(製造業24.7兆円、非製造業25.1兆円)で、これが約2%削減されている。
   中小零細企業の人件費総額は約80兆円(製造業18.8兆円、非製造業66.4兆円)で、これが約1割削減されている。

○これらの企業は、売上高の減少や、原材料価格の高騰という問題に直面して、やむを得ず人件費を削減している。そうした企業が賃金を引き上げれば、企業は存立できなくない。問題は、売り上げが減少したり、原材料価格が高騰すること。それを改善せずに企業に賃上げを求めるのは酷だ。

○人件費削減の大部分は、正規労働者を減らし、非正規労働者を増やすことで行われている。非正規労働者は、すでに全体の4割まで増加している。非正規雇用が増えるのは、確かに問題だ。しかし、これは倫理的に好ましくないと非難するだけでは、問題は解決しない。非正規雇用を増やさざるを得ない条件を改善しなければならない。

○他方、製造業の大企業では、利益が急増している。しかし、これらの企業も、現時点で賃金を上げる合理的な理由はない。生産量は変化していない。利益が増えれば賞与を増やすことはある得るだろうが、人件費全体を増やすようなことはあり得ない。

○非製造業の大企業はどうか。ここでも利益が増えている。しかし、それは、人件費を減らして効率化しているから。そうした合理化をしなければ、利益が減るだけ。

○人件費削減の大部分は、中小零細企業で生じている。ここは春闘にも法人税にもほとんど関わりがない。もともと生産性が低い。よって、多数の労働者を雇用していた。そのセクターが人件費を削減せざるを得なくなっている。これが雇用者の所得を減らし、消費を減らし、経済を停滞させているのだ。

○日本経済には高度成長期においては二重構造といわれていた。そのような構造が現在に至るまで続いている。
 人件費当たりの売上高を見ると、産業別・規模別に大きな違いがある。
 大企業は約50兆円の人件費によって、約500兆円の売上高。
 中小零細企業は、約80兆円の人件費によって、約570兆円の売上高。 
 よって、同じ生産性を実現できるなら、現在の人件費のうちの約28.8%は余分なものとなる。だから、さらにこれだけの人件費が削減されても不思議はない。この構造が変わらなければ、賃金問題は解決できない。

○大企業の売り上げが伸びても、中小零細企業の売り上げは増加しない構造。しかも、労働生産性が低いので、人件費を削減せざるを得ない。ただし、生産性を上昇させるだけでは、人件費はさらに減る。

○解決の方法がないわけではない。
 中小零細企業が大企業の下請けの立場から脱却し、独立して売り上げを増やせるような構造にし、生産性を高める。そうしたことを可能とする新しい技術は、登場してきている。そうした技術を用いる産業を成長させ、中小零細企業の生産性を高めるのだ。 

□野口悠紀雄「利益増加で賃金が減る それには理由がある ~「超」整理日記No.787~」(「週刊ダイヤモンド」2015年12月19日号)

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