エヴァの時代 アウシュヴィッツを生きた少女
エヴァ・シュロッス/吉田寿美 訳
アンネ・フランクの義姉が、40余年を経て初めて語る真実。アウシュヴィッツへの移送、解放から帰国までの奇跡の生還の日々を綴った感動のヒューマンドキュメント。1991年刊の同名書の増補新版。:と言うのが出版社の案内です。
清澤のコメント:「琥珀の眼の兎」以来、私はナチスドイツに蹂躙されたユダヤ人という概念が気になって様々な本を手にしています。
確かにこの本には強制収容所に入れられてからユダヤ人が経験した事柄も書かれており、そこが、「アンネの日記」とは違う所です。この本を読みながら、彼ら家族がオーストリアからオランダまで移住したのに、どうして、イギリスやアメリカまで渡ってしまわなかったのか?が悔やまれました。同じ言葉を話し、その地で収入を得て暮らしていける場所を求めたからではあるのですが。ドイツがベネルクスやフランスを占領することが予想できなかった訳です。
時系列で見ますと①1939年9月3日にドイツのポーランド侵攻を受けてイギリス・フランスがドイツに宣戦布告。②1940年にはノルウェー、ベネルクス、フランス等を次々と攻略、これでイギリスへはもう渡れません。③1940年6月にロシアがバルト三国に侵攻。④ドイツは1941年6月ソビエト連邦に侵攻。東方のドイツとロシアの戦線が開かれるまではシベリア鉄道で陸路ヨーロッパから日本そしてアメリカへ船で退避という道も残って居たようです。
http://www.aiisf.org/education/station-history/jewish-refugees?start=140
この著者はオランダで逮捕されていますし、フランスでも官憲が協力して多くのユダヤ人を収容所に送っています。イギリスにはユダヤ人の子供を避難させたという人がいたという事ですし、日本人の外交官にも自分の職を賭して「命のビザ」を発行した人がいました。
著者は3人の子供を持ってから、それまで抑圧してきた悲しい記憶を掘り起こしてこの本を書いています。世代としては、ほぼ私の父母の世代に重なるものです。
訳者のあとがきによれば、ナチの手で虐殺されたユダヤ人の総数はヨーロッパに住んでいたユダヤ人の3分の2に当たる600万人に達し、そのうち5年に満たないアウシュビッツ存続期間中におよそ400万人の人々が此処で死んだ:という事です。それにしても、3分の2というのは恐るべき数です。
このブログにおけるナチスとユダヤの関連記事
2011年08月11日 2511 マルカの長い旅。 を読みました(第二次世界大戦下のドイツ軍に占領されたポーランドに住んでいたユダヤ人一家の物語。https://www.kiyosawa.or.jp/archives/52727139.html)
2011年12月02日 2860 「サラの鍵」(仏)と言う映画だそうです。
https://www.kiyosawa.or.jp/archives/53238464.html
2012年01月28日 3018 『琥珀の眼の兎』エドマンド・ドゥ・ヴァール(早川書房)
(https://www.kiyosawa.or.jp/archives/53459031.html)
2013年08月05日 4518 民主政体でなぜ独裁?=「ナチス憲法」Q&A:の記事です
https://www.kiyosawa.or.jp/archives/53992438.html
2013年08月13日 4644 HHhHプラハ、1942年、(Himmlers Hirn heiszt Heydrichヒムラーの頭脳はハイドリッヒと呼ばれる)ローラン・ビネ著
(https://www.kiyosawa.or.jp/archives/53999547.html)
2014年03月02日 5216 クリミア半島割譲?(ズデーテン地方のナチスドイツへの割譲と相似形)
https://www.kiyosawa.or.jp/archives/54102900.html
2015年10月23日 7108:ナチスの戦争 1918-1949 民族と人種の戦い:リチャード・ベッセル著 大山晶訳を読んでいます。
https://www.kiyosawa.or.jp/archives/54535904.html
2015年10月31日 7142:アンネの義姉「重荷だった」という記事の紹介です。(この本を読むに至った記事)
https://www.kiyosawa.or.jp/archives/54542397.html
Categorised in: 未分類