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2015年10月13日

7070 視覚障害? 矛盾だらけの基準 若倉雅登先生の記事です

7070 視覚障害? 矛盾だらけの基準 若倉雅登先生の記事です

0.02以下+0.6以下=視覚障害? 矛盾だらけの基準

 前回、眼科で行う視力検査や視野検査の結果は、日常視で用いる実用視力とはしっかり対応していないと述べました。

 「一眼の視力が0.02以下、他眼の視力が0.6以下のもので、両目の視力の和が0.2を超えるもの」

 これは、視覚障害の最も軽い等級である6級の基準です。ここでの視力とは、もちろん適切な眼鏡をかけた矯正視力です。

 一眼の視力が0.02、他眼の視力が0.6のAさんは、基準通り6級になります。しかし、一眼の視力が0で、他眼の視力が0.7のBさんも、一眼の視力が0.05、他眼の視力が0.2というCさんも、視覚障害者とは認定されません。

 Aさんの場合、日常視では0.02の視力の眼は使えず、0.6のほうで生活しています。両眼でみてはじめて認知できる両眼視機能(距離感や立体感の認知)は欠如しているのです。その意味ではBさんも同じです。結局、視覚障害者でないBさんと、視覚障害者のAさんとの違いは、見える方の眼が0.6か0.7かだけということになります。おそらく、日常生活の不自由度は二人の間に有意な差はないだろうと考えられます。

 ではAさんとCさんを比べてみましょう。Cさんも立体視は欠如しています。そうなると、よい方の目の視力での勝負になりますが、これは明らかにAさんの勝ち。日常生活は、Cさんの方がずっと不便でしょう。それでも法律に則のっとれば視覚障害者にはなりません。

 障害者等級には、このように小さくない矛盾が沢山たくさんあります。左右の視力和というのが規則に出てきますが、そもそも算術的に足し算した視力でものを見ているわけではないので、これも論理的にも破綻しています(左右眼とも1.2の人が、両眼視力2.4で見ているなどということはありえないことです)。

 日本では0.1未満の視力を、細かく測りますが、欧米では普通はまず測りません。0.1未満の視力は学問的には多少意味があるかもしれませんが、実生活では意味をなさないので測定しないのでしょう。大変合理的な考えです。

 身体障害者福祉法の第一条は、以下のように記載されています。

 ―――この法律は「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」と相まって、身体障害者の自立と社会経済活動への参加を促進するため、身体障害者を援助し、及び必要に応じて保護し、もつて身体障害者の福祉の増進を図ることを目的とする。

 日本国憲法第14条の法の下の平等や、第25条の生存権などの精神に貫かれた、格調の高い理念となっています。第二条以下の条文や、附則、細則ではそれに基づいて細かな規定が書かれていきます。視覚障害等級の基準もその一つです。

 細かな規則を作っていくうちに根本原理を忘れてしまったのではないかと、矛盾だらけの視覚障害基準をみていて思うのです。

◆若倉雅登(わかくら まさと)

井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
(2015年8月6日 読売新聞)

清澤のコメント:
 流石に患者さん思いの若倉先輩の書く記事です。
 確かに片眼を失明し、他眼に0,7程度の視力があっても、日々の苦労に押しつぶされてくると、「ダメでもいいから身体障碍者の申請を出してみたい」と診断書を求める患者さんもいます。
 そんな場合、私は身体障害の認定を受ける程の障害でなくてよかったと考えましょうと患者さんを励ましています。極言すれば、私は制度の矛盾には逆らうことはしません。 
 国だって何とか身体障害者数を増やしたくはないのですから。身体障害者の診断書は、「出すだけ出したら運よく認められることもある」というような甘いものではありません。症状を問い合わせられたり、この記述では当然駄目ですよという事もあります。
 ちなみに視覚障害には視力の他に視野という括りがあります。しかし、眼球運動障害や両眼視・立体視などはそもそも身体障害の評価対象外なのです。
 更に、その診断書を書ける資格というものがあって、今は開業医であったとしても、大学病院の医局長や都道府県立病院の眼科部長程度の肩書の時に申請してやっともらえる程度の狭き門です。おそらく実際には眼科医の半分もいないのではないかと思います。主治医にその資格のある医師を紹介してもらうか、初めから都立病院などの大きな病院に行き、その診断書記載の依頼をするのが良いでしょう。

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