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2015年10月12日

7067:日米激突! 再生医療ビジネス化の最前線

日米激突! 再生医療ビジネス化の最前線
フォーブスジャパン·テクノロジー
飯塚真紀子 = 文 2015年9月号 : P.92 〜 93(原典 http://forbesjapan.com/summary/2015-09/post_8870.html) 2015.10.02,

眼科医清澤のコメント:
ヘリオスという日本の会社の社長、鍵本忠尚氏の記事がネットのフォーブスジャパンに載っています。先に作った内境界膜用の染料はブリリアントブルーで、九州大学のHPで見ることができます。日本で研究中のiPS細胞を普遍的な移植材料として上市しようと頑張っている模様です。

 iPS細胞の実用化にはいくつかの競争企業もあり、時間との競争もあるようですけれど、記事を見る限りでは少し先を走れている印象です。臨床医を離れて、このような研究をリードする経営に向かう方は時々見かけますが、果たしてうまくゆくものでしょうか?競争も激しいのでしょうけれど、米国のほうが日本よりもベンチャーに対する扱いは慣れている気もします。長い記事ですから抄出してみます。

 なお、「京都大学iPS細胞研究所からの再生医療用iPS細胞受領に関するお知らせ」が同社のホームページに掲示されています。これは、日本人に最も多い免疫タイプ(HLA)に対して免疫拒絶反応が低いと考えられるiPS細胞株であり、今後、この再生医療用iPS細胞を培養・分化誘導して、加齢黄斑変性等の 眼疾患を対象としたiPS細胞由来網膜色素上皮細胞(RPE細胞)を用いた国内共同開発のパートナーである大日本住友製薬株式会社とともに、治験及び商用生産に用いるRPE細胞を作製していく所存、なのだそうです。

 日本の加齢黄斑変性への抗VEGF抗体の500億円の市場のすべてを外国勢に取られている現実を見ると、素直にヘリオスがんばれと思います。

  ---本文の要点は---
ヘリオス社長の鍵本忠尚氏。1976年生まれ。九州大学病院で眼科医として勤務後、起業。眼科手術補助剤を開発し、欧州で上市を果たす。加齢黄斑変性の治療という初心の実現に向けて、2011年ヘリオス設立。

◎その最初の“戦場”は「眼」になる見込み。

日本のヘリオスと米国でトップを走るOCATA社による再生医療ビジネス“日米戦争”。2030年には、国内1兆円、世界では12兆円の市場規模が予測される再生医療のスタンダードをめぐる日米の先陣争いは、日本経済の未来さえも占う重要な意味を担っている―。

6月、日本の再生医療界が大きな一歩を踏み出した。バイオベンチャー企業、ヘリオスがマザーズ上場。日本再生医療界の期待の星。
 
同社が開発しているのはiPS細胞由来の網膜色素上皮細胞(RPE細胞)。iPS細胞は最初は、眼のRPE細胞から入るのが適切とされる。
 
昨年9月、理化学研究所の高橋政代が加齢黄斑変性の患者にiPS細胞から作ったRPE細胞を移植する世界初の臨床研究を実施。ヘリオスはこのRPE細胞で、世界の再生医療市場に打って出ようとしている。
 
発端は、九州大学眼科学教室で3人の研究者と開発した眼科手術に使う染色剤だった。補助剤は最初にヨーロッパで認可を受け、デファクト•スタンダードを取った。ある時、高橋からiPS細胞からRPE細胞を作る治療法の実用化の打診を受けた鍵本は直感した。これは治療法として成立する!

鍵本の短期的目標は、日本で医薬品としての承認を受けて、日本市場の足固めをすること。それに向けて、ヘリオスは、大日本住友製薬とサイレジェンという細胞製造会社を設立、すでに体制づくりに入っている。

市場規模は大きい。現在、加齢黄斑変性の治療には抗血管新生薬(抗VEGF抗体)注射が行われており、日本市場で500億円、グローバルでは8,000億円を超える。同社の製品がどれだけ抗VEGF抗体の市場シェアを置き換えることができるか。ヘリオスは、17年に他家細胞による治験を開始し、20年の製造販売承認取得を目指す。

◎またも「ガラパゴス化」への懸念
 
日本の再生医療が経済成長に貢献できるかは、国内市場だけではなく、世界市場をどれだけ握れるかにもかかっている。再生医療を携帯電話端末のようにガラパゴス化させないことは誰もが願うところだ。その危険性もあると危惧するのは、東京医科歯科大学大学院教授で医療経済学を専門に研究している川渕孝一。

「今、日本で市場に出ている再生医療品目は、ジャパン•ティッシュ•エンジニアリング(J-TEC)の自家培養表皮と自家培養膝軟骨の2品目。同社は1999年の創業以来、17年連続の赤字。J-TECの実態を見ると道のりは大変厳しい」「日本の場合、制度設計する人たちに国際性やしたたかさが欠けていた。最終的に製品のデファクト•スタンダードが取れるかどうかにかかっている」

◎戦いの現場はアメリカ
 
海外市場で、製品においても市場においてもライバルになると予測されるのがアメリカ。特に加齢黄斑変性の市場ではES細胞から作られたRPE細胞がライバルになる。市場規模も大きく、アメリカだけで3,700億円超の市場。
 
RPE細胞の分野で現在、アメリカで最もリードしている企業がES細胞からRPE細胞を製造しているOCATA社。2月にナスダック市場に上場、最近、約37億円の資金調達もした。同社CEOのポール•ウォットンは自信を見せる。「2011年に、安全性を確認する初期の臨床試験を開始して、安全性だけではなく、有効性のシグナルも、すでに見て取ることができた」
 
同社は、7月から有効性のシグナルを確認するフェイズ2の臨床試験に入り、17年には終了して、フェイズ3で患者の視覚の改善と細胞の再生を最終確認して、製品を市場に送り出すのは、22~23年を予定。20年の承認販売を予定している鍵本のヘリオスとべて、数年のビハインド。しかし、アメリカでは先進医療の承認をさらに迅速化するイニシアティブが法制化されるのも時間の問題。OCATA社が製造しているES細胞由来のRPE細胞が市場に出るのも早まる可能性がある。
 
理研の高橋も「エグゼクティブ」誌の取材で「アメリカで、ES細胞から作ったRPE細胞より先に、認可を得て、市場を押さえたい」と意気込む。再生医療のスタンダードをめぐる“日米戦争”の様相。
 
国内にも大きなライバルがいる。iPS細胞由来のRPE細胞の研究を進めているセルラー・ダイナミクス・インターナショナル社(CDI)で、5月に富士フイルムホールディングスの傘下に入った。日本企業間での米国市場争いもすでに始まっている。同社CEOに就任した平尾和義は言う。「心臓、肝臓、脳、血管など、臨床研究に対応できる12の適正製造規範(GMP)レベルの組織細胞を提供しています」

CDIは製造能力の高さを誇っており、世界中の製薬企業など約200社に供給している。RPE細胞については、同社はアメリカの国立眼病研究所と提携して研究中で、前臨床試験段階。OCATA社と同じく、22~23年には製品を市場に出す予定。
 
鍵本は「iPS由来か、ES由来かというのは生まれの違いのようなもので、問題は、生み出されたRPS細胞がどう育っていくか、どちらの機能がより優れているかが争点。我々はさまざまな研究結果を踏まえて改善した方法で育てたRPE細胞を提供していく。臨床成績が当社のRPE細胞の機能の素晴らしさを証明してくれるでしょう」

◎産業界の実力を示す時
 1980年代、研究レベルでは日本が最先端をいっていたタンパク医薬が、市場的にはアメリカにリードを奪われた。「日本のアカデミアたちはタンパク医薬を産業化する仕組みを持ち合わせていなかったし、製薬企業もリスクを感じて二の足を踏んでいた。ところが、すでに多くのバイオベンチャーを誕生させてきたアメリカでは、リスクを取ってこれを事業化した。そして、蓋を開けてみると、タンパク医薬はリピーターを獲得し、ブロックバスター(大型新薬)ビジネスに育った。

産業化の仕組みをすでに持ち合わせている米国勢に先を越されぬようにすることで、鍵本は日本経済を牽引していきたいと使命感に燃えている。最後はリスク•テイキングできるかどうかにかかっている。ヘリオスを“再生医療界のトヨタ”に育てることができるのか。鍵本の挑戦が試される。

飯塚真紀子 = 文
ーー抄出終了ーーー

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