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2015年10月3日

7036:老眼と見紛うなかれ!~「加齢黄斑変性」とは~:飯田教授の記事紹介

老眼と見紛うなかれ!~「加齢黄斑変性」とは~

長い記事なのでサマライズして紹介しましょう。
(1/5) 中高年に忍び寄る目の病:ゆがみ、ぼやけが見えたら、「加齢黄斑変性」という目の病気を疑う。網膜の「黄斑」に障害。国内患者数は70万人。有病率50歳以上の60人に1人。症状は「ゆがみ」「ぼやけ」「暗い」など。日常生活に深刻な影響。適切な治療で、症状は改善

(2/5)「滲出型」が9割

 加齢黄斑変性には、「滲出型」と「萎縮型」の2種類。日本人の加齢黄斑変性の約9割が「滲出型。滲出型加齢黄斑変性:脈絡膜に、加齢による老廃物が蓄積し、炎症を起こす。血管内皮細胞増殖因子(VEGF)が分泌され、異常な血管が生える。新生血管は、黄斑にダメージを与え、組織を破壊。一方、萎縮型は日本人では1割。網膜色素上皮が委縮し、進行は緩やか。

 増加原因は診断法進歩と高齢化。食生活の欧米化。光線暴露時間増加や、喫煙も原因。

( 3/5)「年齢、老眼のせい」は間違い

 「ライフスタイルと目の健康に関する意識調査」によると、「目が悪くなった」と思っている人は84%。「どのような行動を取ったか」との問いに、目薬など市販薬を使用した人が39%、眼鏡・コンタクトレンズで対応した人は25%、眼科受診は24%にとどまる。特に何もしなかった人も29%、理由の約8割は「年齢、老眼と思った」と回答。

 老眼なら老眼鏡や老眼用コンタクトレンズで視力が補える。加齢黄斑変性は、ゆがみ、中心暗点など。片目ずつ進行するので健常眼が補い自覚しにくい。簡単な自己チェック法は碁盤状のマス目「アムスラーチャート」。

(4/5)治療が進化、視力改善も

 滲出型加齢黄斑変性の治療;1990年代の後半~2000年代:レーザー光凝固術や光線力学療法。08年以降に、抗血管内皮細胞増殖因子(VEGF)薬登場。眼球に注射する。抗VEGF薬は継続的治療が必要。

 一方で、理化学研究所などによる人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使った加齢黄斑変性の臨床研究が始まった。将来は網膜そのものの再生医療も期待される。

(5/5)
黄斑障害が生じると、「見たいもの」が見えなくなる。日常生活にさまざま影響を及ぼし、視力の低下は心の不安を生む。加齢黄斑変性は、生活の質を著しく低下させる。

 見づらくなる症状には、深刻な疾患が隠れている可能性も。飯田教授は片目ずつの見え方を定期的にチェックし、見づらさがあれば早めに眼科を受診することが大事と。

ーー以下に全文再録ーーー

(1/5) 中高年に忍び寄る目の病

 講演する東京女子医大眼科学教室の飯田知弘主任教授=2014年8月【時事通信社】

 近頃、新聞やスマホの文字が見えにくくなった。眼鏡を額までずらして顔を近づける。ああ、老眼が進んでいるのかなぁ-。

 そんな日常の不安を抱える中高年は少なくないだろう。でも、それって本当に「老眼」のせいなのだろうか。物がゆがんだり、ぼやけたりして見えたら、「加齢黄斑変性」という目の病気を疑った方がいいかもしれない。

 目の病気には色の付く病名が多い。白内障や緑内障は認知度が高く、その症状も割りと知られている。「加齢黄斑変性」という病名はあまり聞きなれないが、近年、50代以上に増え続けているという。中高年に忍び寄る“黄色信号”のサインを見逃さないためにはどうすればいいのか。バイエル薬品が開いた「加齢黄斑変性」をテーマにしたセミナーに参加し、東京女子医大学眼科学教室の飯田知弘主任教授に解説を聞いた。

加齢黄斑変性の眼底写真[飯田主任教授提供]【時事通信社】

 日本における視力障害の原因の第4位に挙げられるのが「加齢黄斑変性」だ。その名の通り、年齢を重ねるとともに眼球の奥にある網膜の中心部「黄斑」に障害が生じる病気。日本国内の患者数は増加しており、既に70万人以上と推測され、最新の報告による有病率は、50歳以上の約60人に1人とも言われている。

 症状は、物を見るときに「中心がゆがむ」「ぼやける」「暗い」などさまざま。進行すると、細かい字が読めなくなったり、人の顔を見分けるのが困難になったりと、日常生活に深刻な影響を及ぼすという。飯田主任教授は「近年は適切な治療を続けることで、症状は劇的に改善するようになった」と説明する。

(2/5)「滲出型」が9割

加齢黄斑変性の「滲出型」(上)と「萎縮型」(下)の眼底写真[飯田主任教授提供]【時事通信社】

 加齢黄斑変性(age-related macular degeneration、AMD)には、「滲出(しんしゅつ)型」(wet AMD)と「萎縮型」(dry AMD)の2種類があり、日本人の加齢黄斑変性の約9割が「滲出型」だという。飯田主任教授によると、滲出型は、発症すると視界の中心部が暗くなって見えなくなったり、直線がゆがんで見えたりするという。急速に進行し視力に障害を起こし、放置すると失明の恐れがある。

 人が物を見るとき、眼球の角膜と水晶体を通って網膜上で投影された光を、視神経が色や形の情報として脳に伝達し、画像として組み立てられて認識する。

 滲出型加齢黄斑変性の仕組みはこうだ。網膜のすぐ外側にある脈絡膜に、加齢によってドルーゼンという老廃物が蓄積し、炎症を起こす。すると、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)という物質が分泌され、異常な血管(新生血管)が生えてくる。この新生血管は、もろくて血液や水分が漏れ出やすく、大事な黄斑にダメージを与え、放置しておくと組織破壊につながってしまう。

 加齢黄斑変性のイメージ図[資料提供=バイエル薬品]【時事通信社】

 映像がきれいに映っているスクリーンの裏側に異物が溜まっていき、表面まで変形させて映像がゆがんでしまうといったイメージだ。変形が激しくなり、スクリーンが傷んだり破れたりすれば、その部分には何も映らなくなってしまう。

 一方の萎縮型は、欧米ではよく知られており、白人に発症が多いとされる。日本人は全体の約1割を占める。網膜色素上皮が徐々に萎縮していくもので、症状の進行は緩やかな場合が多いという。

 日本人に加齢黄斑変性が増えている理由としては、診断法の進歩に加え、急速な高齢化が挙げられるという。また、欧米では成人の失明原因のトップであることから、「かつて日本人は魚や野菜が主な食事だったが、現代は肉食がかなり増えてきた。食生活の欧米化にも要因があると言われている」。飯田主任教授は、このほかの危険因子として、目が(太陽光だけでなくテレビやパソコンといった)光線にさらされている時間の増加や、男性に多い理由として喫煙などを挙げている。

( 3/5)「年齢、老眼のせい」は間違い

見え方の症状例。「文字がゆがんで見える」(上)と「中心が黒く見える」(下)[資料提供=バイエル薬品]【時事通信社】

 バイエル薬品が全国の50~70代の男女1000人を対象に実施した「ライフスタイルと目の健康に関する意識調査」(2014年7月)によると、「目が悪くなった、以前より見えにくくなった」と思っている人は84%に上る。

 そのうち、「どのような行動を取ったか」との問い(複数回答)には、目薬など市販薬を使用した人が39%、眼鏡・コンタクトレンズで対応した人は25%なのに対し、眼科を受診した人は24%と4人に1人にとどまることが判明。特に何もしなかった人は29%に上り、その理由の約8割は「年齢のせい、老眼のせいと思った」と回答している。

 飯田主任教授によれば、老眼とは正式には老視といい、水晶体の厚さを変えるピント調整の力がなくなってしまう症状をいう。若いうちは弾力性が非常にあり、自由に厚さを変えられるが、年齢を重ねると徐々に硬くなり、ピント合わせの幅が狭くなって近くが見づらくなる。老視は40代で始まり、60代ぐらいでほぼ完成するという。老眼鏡や老眼用コンタクトレンズで視力を補うことは可能だ。

自己チェックのためのアムスラーチャート[資料提供=バイエル薬品]【時事通信社】

 加齢黄斑変性の顕著な症状は、文字がゆがんで見える、中心が黒く見えるなどで、近くが見えにくくなる老眼のそれとは異なる。片目ずつ進行するのも特徴で、健常なもう片方の目が見え方を補ってしまうため、なかなか自覚しにくいところも、症状が見過ごされてしまう要因の一つだ。

 簡単な自己チェックの方法として、碁盤のようなマス目になったシート「アムスラーチャート」というものがある。片目をつぶって約30センチ離れた位置から中心の点を真っ直ぐ見つめる。老眼鏡や近視など矯正用の眼鏡、コンタクトはかけたままで行い、格子状の線にゆがみや暗点などが見当たらないかを確認する。こうした自覚症状があれば、それは老眼ではなく、加齢黄斑変性の可能性があるという。

(4/5)治療が進化、視力改善も
 講演する飯田知弘主任教授【時事通信社】

 滲出型加齢黄斑変性の治療は、1990年代の後半から2000年代にかけて、レーザー光凝固術や光線力学療法が用いられ、症状の進行を抑えるのが可能になった。そして08年以降に、抗血管内皮細胞増殖因子(VEGF)薬が登場し、視力の改善も可能になったという。

 「以前は治療法がないに等しく、症状の進行を遅くする程度だったが、抗VEGF薬により視力改善の効果が見られるようになった。そんな時代がきた」。

 治療は、抗VEGF薬を眼球に注射する。抗VEGF薬は、加齢による老廃物の蓄積や炎症を根本的に治療するわけではなく、あくまで分泌するVEGFを抑え込む働きをするが、ある程度経過すると効果が落ちるため、「継続的な治療が必要」と飯田主任教授は付け加える。

 iPS細胞から作った網膜色素上皮。左からヒトiPS細胞、iPS細胞から変化させた網膜色素上皮細胞、移植用の網膜色素上皮細胞シート(約3ミリ角)[理化学研究所提供]【時事通信社】

 一方で、理化学研究所などによる人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使った加齢黄斑変性の臨床研究が始まっている。iPS細胞の応用第一号だ。

 飯田主任教授の解説によると、計画は抗VEGF薬の治療で効果の出ている患者からiPS細胞を作製し、網膜色素上皮細胞に分化させ、網膜下に移植するというものだ。今回は網膜そのものではなく、網膜を健常な状態に保つために必要な網膜色素上皮の細胞に適用する。患者にとって大きな一歩で、将来は網膜そのものの再生医療も期待されるという。

(5/5)
バイエル薬品が小学生とその祖父母を対象に開催した「見たい!知りたい!目のかがく教室」で講師を務める飯田主任教授【時事通信社】

 今、この記事を室内のパソコンで読んでいるとすると、周辺のキーボードやマウス、部屋の隅っこも視界に入っているはずだ。それは網膜全体でとらえている画像であって、意識して見ようとしているものではない。網膜の中心部にある黄斑には、物を見る機能が集まっていて、ここに障害が生じると、「見たいもの」が見えなくなってしまう。視力検査でも黄斑を使って、検査員が指したマークを追っている。

 見ようとするものが見えないと、「人の顔が認識できない」「値札が見えない」「道路標識、信号が見えない」など日常生活にさまざま影響を及ぼす。こうした視力の低下は、さらに「見えない範囲が広がる」「仕事を失うのでは」「家族に迷惑をかける」などの心の不安を生みだすという。「加齢黄斑変性は、他の疾患に比べても生活の質を著しく低下させてしまう重篤な病」と飯田主任教授は強調する。

 厚生労働省が2014年7月末に発表した調査によると、13年の日本人の平均寿命は男性80.21歳、女性86.61歳で、男性が初めて80歳を超えた。女性も4年ぶりに過去最高を更新。主要50カ国・地域では、女性は2年連続で1位で、男性は順位を一つ上げて4位となった。1947年には男女とも50歳台だった平均寿命は、医療水準の向上などで徐々に延び、男女とも80歳に達した。

 眼科検診の様子【時事通信社】

 前出の意識調査の中に、50~70代が「これからの人生、ずっと見ていたいものは?」という設問があった。その回答は、「大切な人の笑顔」が上位を占める。「夫、妻、パートナーの笑顔」が全体1位の60%だが、孫がいる人に限ると「子供・孫の笑顔」がトップで8割に迫った。「これからやりたい、続けたいことは?」との自由回答をまとめると、「健康に気をつけ、趣味や、仕事、ボランティアを続けたり、孫やパートナーとの関わりを大切にしたい」と考えているようだ。

 物が見づらくなる症状は、痛みは伴わないものの、深刻な疾患が隠れている可能性がある。飯田主任教授は「片目ずつの見え方を定期的にチェックし、見づらさを感じたら早めに眼科を受診することが大事」と、早期発見の重要性を強調した上で、こう締めくくった。「健康を維持しつつ、やりたいことにチャレンジし、大切な人の顔を見続けてほしい」。

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