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2015年8月24日

6912 脳科学でみる安保法案の議論が進まない理由

無題
脳科学でみる安保法案の議論が進まない理由(http://diamond.jp/articles/-/76952);という記事を抄録してみます:

渡部 幹 [モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授] 【第31回】 2015年8月19日

◆議論のポイントが分かりにくい;安保法案を巡る対立

 集団意思決定機関の目的は、最も良い選択肢を見つけ出すこと。意見の対立があれば、議論を尽くし、最良の決定を行う。ここ数か月、国会では安保法案について大きな対立が起きている。賛成派も反対派も、議論のポイントを本当に熟知しているか?。脳科学から読み解く、人間が陥りやすい罠とは?

 「反戦」を唱える団体のロジックは、法案が可決されると「戦争が起こる」「徴兵制が施行される」というもの。また、野党は「安保法案は憲法違反」であることを根拠に反論している。与党は、法案は憲法違反ではないこと、戦争や徴兵はないとしている。感情だけで是非を断じ、議論が尽くされていないように思える。与野党の論戦のポイントがよく分からない。

 議論が進まないのはビジネス場面でも、いつも起こっている。実は、ほとんどの場合、人は論理的に賛成反対を決めているわけではない。

◎脳科学でみる安保法案の議論が進まない理由

◆感情は意思決定の邪魔か?
常識を覆す脳科学の発見。アントニオ・ダマシオの研究。脳損傷患者は論理的な決定をするどころか、決定することすらできない。決定、価値判断には、必ず感情が関わる。「意思決定場面で、脳の感情に関わる部位が活動する」。

 脳の報酬系と嫌悪系と呼ばれる部位。報酬系は、自分に利益がもたらされる際に活動する脳神経回路。部位は、線条体、側坐核、帯状回など。直接的な快感はもちろん、報酬への期待、復讐時にも活動する。嫌悪系は避けたいものや不快なものに反応する神経回路。部位としては島皮質など。

 報酬系と嫌悪系は分離できず、扁桃体などのように報酬系と嫌悪系が重なっている部位もある。これらは、他人に信頼を裏切られたときなどに活動。重要なのは、これらの神経系には前頭前野の理性、計算を司る部位も含まれていること。我々の論理の背後には必ず感情がある。

◆脳は最初に好き嫌いを決めて、理由を後からでっち上げる
 裏付け研究。
はちみつの試食会をよそおい、実験者が客に、AとBの2種類のはちみつを味見してもらう実験。実験者はAかBのどちらが好きかを客に尋ね、このはちみつのどこが好きなのかの理由を述べてもらう。ここでトリック、実験者は「客が選ばなかった方」のはちみつにすり替えて尋ねる。

 自分が2度目に味見したはちみつが、好みのものではないことを、ほとんどの客は見抜けない。気づかなかった客は、その後、もっともらしい理由をいかにも理路整然と語りだす。

 この実験が示したのは、脳での好みの判断と、その理由づけは全く別のメカニズムによって作られている。どんなに理性的に見える意思決定でも、最初は「好きか嫌いか」で判断し、その後、もっともらしい理由を「でっちあげる」というプロセスを踏む。

 安保法制の議論も「好き」「嫌い」が先にあり、後で理由を飾りつけして話している可能性が大きい。野党の反対意見が論理的に聞こえないのも、与党の説明の歯切れが悪いのも、それぞれが「感情による判断」が先に立ちすぎているからだろう。そういった感情的対立を含む案件を議論するためには、感情の入り込む余地のない、論理だけで議論する場を作る必要がある。

 脳研究でも、長期的な視野までを考慮した報酬系が確立されるのは、一般に思春期を過ぎてからと言われる。思春期までは、人はどうしても目先の快感や嫌悪に流されるような意思決定をしがち。快感や嫌悪を一旦抑制して論理的な議論をすることで対立を解消するのが、大人の議論。

 安保法案を巡る対立では、あまり「大人の議論」がなされていない。ことの本質がますますわからなくなっている。ビジネス上の意思決定でも、感情の対立に基づく不毛な議論は山のようにある。その時に、大人の議論をできないのは「恥」であるという規範を、我々は持つべきだ。

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