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2015年5月27日

6604:エボラウイルス、血中から消失後も眼房水に残存:NEJMの記事紹介

エボラウイルス、血中から消失後も眼房水に残存
退院後に急性ぶどう膜炎を発症、エボラウイルス病の晩期合併症か 2015/5/26

眼科医清澤のコメント:眼内は免疫学的にも特殊な場所であるとされています。水痘やヘルペスなどに感染した後、ウイルスが体内からはすでに見つからなくなった後でも、眼内、特に前房水中にはPCRで検出できることがあります。ですからこの報告も、驚くにはあたらないですが、重要な知見であると思います。

 --記事引用--
エボラウイルス、血中から消失後も眼房水に残存

退院後に急性ぶどう膜炎を発症、エボラウイルス病の晩期合併症か 2015/5/26

大西淳子=医学ジャーナリスト

 エボラウイルス病(EVD)の罹患者では、回復期に、眼に合併症が生じる可能性があることはこれまでも報告されている。米Emory大学医学部のJay B. Varkey氏らは、米国人のEVD罹患者で回復期に生じた、片側性で重症の急性ぶどう膜炎について、その臨床経過をNEJM電子版へ2015年5月7日に報告した。この患者では、EVD発症から14週目、血中のウイルスが消失してから9週目の時点で、眼房水にザイールエボラウイルス(EBOV)が検出された。

 EVDの回復期には、眼疾患などの晩期合併症が生じる可能性がある。しかし、EVDの続発症に関する系統的な研究は行われておらず、眼に生じる合併症の罹患率や臨床症状などは明らかではない。

 今回報告された患者は、43歳の男性医師。2014年9月6日にシエラレオネでEVDと診断された。発症から4日目に米国のEmory大学病院に移送され、治療を受けた。症状は深刻だったが、44日目には血液透析が不要になり、精神状態も著しく改善した。その日までに複数回採取された標本に対するRT-PCR検査で、血液と尿からEBOVが検出されなくなっていたため、患者は退院して自宅に帰った。退院日に採取された精液からはEBOVのRNAが検出されたため、患者には3カ月間は性行為を行わないか、コンドームを使用するよう指示した。精液を対象とする検査はその後も継続的に行っている。

 退院からまもなく、患者には、両眼の痛み、異物感、羞明などの眼の症状が現れて、近視用メガネの度の調整が必要になった。患者は14年11月にEmory Eye Centerに紹介された。その時点では、眼圧、瞳孔、眼の動き、視野、スリットランプを用いた前眼部検査の結果は正常だった。矯正視力は両眼ともに20/15(日本式で1.3)だった。散瞳を行って後眼部を観察したところ、それまでの記録には無かった複数の瘢痕が両眼の脈絡膜辺縁に認められた。瘢痕の周囲には色素が薄い部分が暈状に認められた。左目の網膜には、瘢痕に近接して小さな出血も見られた。診断は後部ぶどう膜炎(脈絡網膜炎)で、EVDの続発症と考えられた。

 それから1カ月後(EVD発症から14週後)、患者は急に、左眼に、充血、かすみ目、疼痛、羞明を感じて受診した。左目の眼圧は大きく上昇しており、前眼部検査では、結膜充血、軽症の角膜浮腫、稀な非肉芽腫性角膜後面沈殿物が認められ、前眼房には炎症性の細胞と蛋白質が存在していた。隅角の閉塞は認められなかった。この時点の矯正視力は、右目が20/15(1.3)、左眼は20/20(1.0)だった。診断は、左眼の前部ぶどう膜炎と高眼圧症となった。

 酢酸プレドニゾロン1%点眼薬とアセタゾラミドを含む経口眼圧降下薬などの投与を開始したが、その後48時間のうちに症状は悪化した。酢酸プレドニゾロン点眼薬の投与間隔を2時間に短縮するなど、治療を強化したが、さらに24時間、炎症は悪化を続けた。

 前房穿刺を行い、眼房水を170μL採取してRT-PCRを行ったところ、EBOV RNA陽性となった。前房穿刺前と穿刺から24時間後に採取した結膜スワブと涙膜標本は、EBOV RNA陰性だった。眼房水に存在していたウイルスの遺伝子配列をEVDで入院していた時に分離されたウイルスの配列と比較したところ、複数箇所に変異が生じていた。それらの変異の意義は明らかではない。

 症状発現から5日後まで、ぶどう膜炎は悪化し続け、左目の視力は20/60(0.3)に低下した。プレドニゾロンの経口投与を開始し、72時間で炎症は減少を示したが、硝子体炎は悪化し、1週間の時点では視力はさらに低下(20/400、0.05)していた。

 幸い、ぶどう膜炎発症から3カ月時の検査では、硝子体炎は消失、視力も回復した(20/15、1.3)。著者らはその後も、患者の眼の状態を追跡評価している。

 この患者では、EBVは前房水に存在していたが、結膜スワブと涙膜はウイルスRNA陰性だった。そのため、日常的に発生する軽い接触によって、こうした患者からEBV感染が拡大するリスクはないと考えられる。

 EVD関連ぶどう膜炎の罹患率と発生機序は明らかではないが、EVDからの回復期に生じる眼の合併症は、患者自身にとっても公衆衛生上の観点からも重要だ。著者らは「眼のような、免疫系からの監視を逃れられる免疫学的特権部位にEBVが持続的に存在する頻度と仕組みを明らかにするための研究を行うとともに、EVD合併症の臨床的な管理のための戦略を構築する必要がある」と考察している。

 原題は「Persistence of Ebola Virus in Ocular Fluid during Convalescence」、概要は、NEJM誌のWebサイトで閲覧できる。

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