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2015年5月3日

6522:過換気症候群へのペーパーバッグは既に不適切だそうです

6522:過換気症候群へのペーパーバッグは既に不適切だそうです
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ポール・マッカートニーが再来日してコンサートを開いたという記事が出ていました。昔ビートルズが初来日したころ、コンサート会場で過呼吸症候群によって倒れて搬送されるという若い女性の例が連続し、社会的な注目を集めていました。

最近のネット掲示板に「過換気に対するペーパーバッグは禁忌と言われた、どう思いますか 」という記事があり、その答えに(医学会新聞第2964号 2012年2月6日)http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA02964_04が引用されてました。。

「心理的に興奮して過呼吸になると、血液中の二酸化炭素が不足してけいれんなどを起こす」という過呼吸に対する考えは最近どのように変わってきているのでしょうか。要するに過呼吸のように見えるより重大な疾患を除外せずにペーパーバッグを持ち出してはいけないという事のようで、代替手段はゆっくりした腹式呼吸をさせて、その間に他の原因を除外しろとお言う事のようです。

それで大丈夫? ERに潜む落とし穴 より抜粋引用:

【第22回】過換気症候群

  志賀隆(東京ベイ・浦安市川医療センター 救急部長)

■ 18歳女性。既往や服用中の内服薬は特にないとのこと。薬剤アレルギーなし。呼吸困難感にて苦しんでいるところを友人が救急要請。呼吸困難感,窒息感,胸痛,四肢の感覚異常,動悸を訴える。

■Question

Q1 過換気症候群の診断において必要なステップは何か?
A 除外診断。

 過換気症侯群では,糖尿病性ケトアシドーシス,肺塞栓,発作性上室性頻拍などの不整脈,心筋梗塞,ギラン・バレー症候群,中毒,アルコール離脱,麻薬離脱,など多様な鑑別診断が考えられる。症状が初めてというケースでは,詳細な病歴聴取と身体診察が必要となる。

 特にSpO2が下がっている場合には,過換気症候群と診断してはならない。またSpO2が正常でも,他の病態の除外にはつながらない場合がある。ーーー

 年齢が若く特に既往のない患者に,典型的な呼吸困難感,めまい,非典型的な胸痛,動悸,頻呼吸,しびれ,手足のテタニーなどが認められた場合に診断を考える。特に,頻呼吸が収まってしばらく経ったときにバイタルサインや症状が軽快していれば,検査の実施を最小限にとどめることができる。

 血液ガス検査は,典型的な複数の症状がみられない患者,頻呼吸が持続する患者,呼吸障害を疑う病態の患者にて必要となる。典型的な病歴・身体所見のない若い患者で,救急部での観察後に症状・バイタルサインが軽快した場合には,他の病態が疑われない限り,必ずしも全例行う必要はないだろう。

 以前にも過換気症候群のためのワークアップがなされていたか,診断されたことがあるかどうかは有用な情報であるため,問診にて確認することが望ましい。

Q2 ペーパーバッグ法は勧められるか?
A 勧められない。

 ペーパーバック法を勧められない理由を下記に挙げる。

1)前述のように,過換気症候群は除外診断である。診断がつかない状態でペーパーバッグ法を行ってしまう危険性がある。肺塞栓や心筋梗塞,ギラン・バレー症候群の患者にペーパーバッグ法を行うことは,診断の遅れをもたらすだけでなく,病態の悪化にもつながる。

2)近年,過換気症候群の原因は,CO2の減少よりも不安な心情など精神的な側面が主ではないかと見直されるようになった。理由は,発作中のCO2が下がっていない症例が見つかっているからである。

3)過換気症候群の発作中の患者は,ペーパーバッグに向かって息を吹き込むという作業をすること自体苦しいことが多い。

4)ペーパーバッグ法を行うことによる低酸素症の発症や死亡症例が報告されている。

5)高炭酸ガス血症自体が過換気症候群の発作を引き起こす患者もいる。

Q3 ベンゾジアゼピン系薬剤を投与する際に気を付けるべきことは何か?
A 注射薬を使わないこと。依存症に陥らないようにすること。(略)

Q4 過換気症候群の有効な治療法は何か?
A 腹式呼吸など。

 腹式呼吸によって呼吸数を減じることで,患者の気をそらすことができる。発作時に,自身で対処法を知っていれば,患者に安心感を与えることにつながる。過換気症候群の患者をフォローした研究にて有効性が示されている。

Watch Out

 過換気症候群は除外診断である。救急医にとって陥りやすいわなは,診断仮説の早期閉鎖である。頻呼吸が治まらない場合,典型的な症状がそろわない場合,中年や高齢の場合など,常にアンテナを張って頻呼吸の原因検索に臨む必要がある。

 過換気症候群へのペーパーバッグ法は勧められない。また,安易なベンゾジアゼピン系薬剤の使用や外来処方は依存をもたらす可能性があり,注意が必要である。

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