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2015年5月1日

6513:眼瞼けいれん 薬剤性のものも多くボツリヌス療法が第一選択(発行待ち)

眼瞼けいれん 薬剤性のものも多くボツリヌス療法が第一選択

(これは提出原稿です。修正されて出版されました。)

清澤源弘1,2、江本博文1,2 
清澤眼科医院1、東京医科歯科大学2

眼瞼けいれんとは
眼瞼けいれんは、目のまわりの筋肉が収縮して目が開けにくくなり、まばたきがうまくできなくなる病気である。眼瞼けいれんでは細かいまぶたのピクピクした動きは無い。眼瞼けいれん患者は、まばたきが多く、いつもしょぼしょぼし、伏し目がちで、まぶたを閉じている方が楽であるという。顔を見ると、まぶたが閉じ加減で、眉間に縦皺があるのが特徴的である。片目をつぶると楽なのでそのような表情をしている場合もある。 40歳代後半以降に多く、女性に多く見られる病気だが、20歳代でも起こることがある。

クリニックでできる検査と仕分け
1、瞬きが多い、伏し目、瞼を閉じている、眉間に皺がその特徴
2、ドライアイの合併は多いが、全てをそのせいにしないで
3、薬剤性のものを考えて精神安定剤や睡眠薬の常用の有無を聞く

治療前用の眼瞼けいれん自己診断で次の10項目中で3項目以上が当てはまれば眼瞼けいれんの可能性が高い。その項目は、瞬きが多い、まぶしい、目をつぶっていたがる、目が乾く、人込みでぶつかる、電柱などにぶつかる、外出を控える、運転を断念した、手で瞼を開くことがある、片目をつむる、である。
次に、瞬きを3種の瞬目負荷テストで評価する。1)軽瞬:眉毛部分を動かさないで各位歯切れの良い瞬きができるか。2)速瞬:早くて軽い瞬きを10秒行い、30回以上できるか。3)強瞬:強く目を閉じ、素早く目を開ける動作を10回できるか。この成否で眼瞼痙攣の程度を評価する。少しでもあれば陽性と判断する。
眼瞼けいれんには瞬きの不調ばかりではなく、次の3つの症状がある。1)運動症状:瞼が開きにくくなったり、瞬きがうまくできなくなったりする。2)感覚症状:目の不快感とまぶしさ。目がしょぼしょぼして閉じている方が楽だという。風が当たると辛く、また、何とも言えず目が不快で、痛みを感ずることもある。光をまぶしく感じて、明るいところが苦手になる。3)うつ症状:気分的に落ち込みがちになる。外に出たくなくなり、ひとと会うのも嫌になる。

Ⅱ 紹介するポイント
① 眼瞼けいれんが疑われ、ボツリヌス療法を含むその的確な治療を患者が希望するなら紹介する。
② 時に患者はボツリヌス毒素という言葉におびえてボツリヌス療法が始められないときがある。そのようなケースも紹介可能。

a, 疾患所見:現在、この疾患は筋が不随意に収縮する局所性ジストニアの一部、特に頭頸部のジストニアの一つの型として分類されている。目の周りの不随意運動だけであれば眼瞼けいれん、そしてそれが口の周りまで広がればメイジュ症候群と呼ばれる。
眼瞼けいれんは原因によって3つに分けられる。
1)本態性眼瞼けいれん:原因となる病気や薬剤との関連が考えられないもの。2)症候性眼瞼けいれん:パーキンソン病、進行性核上性麻痺、脳梗塞などが原因で起こるもの。3)薬剤性眼瞼けいれん:抗うつ薬や抗不安薬などの薬剤を長い間服用することが原因で起こるもの。
 中でも最も多くみられるのが原因のわからない本態性眼瞼けいれんで、何らかの原因で瞬きをつかさどる神経の働きに異常が起こるためと考えられている。瞬きは普通、風が当たる程度の軽微な刺激に対する反射としておきる。眼瞼けいれんはGABA(ギャバ)やBebzodiazepine(ベンゾジアゼピン)などの抑制性神経伝達系の異常を巻きこみ、瞬目反射が強くなった状態と考えられている。
b、関連要因 
眼瞼けいれんのきっかけとなる誘因または悪化させる因子としてのストレスなどとの関連も指摘されている。職場や苦手な人の前で悪化することもあり、リラックスすると改善するようなことも見られます。また、薬剤性眼瞼けいれんには、シックハウス症候群の原因となるような化学物質も関係があるのではないかといわれている。

Ⅲ、紹介時の説明ポイント
1、 眼瞼けいれんはボツリヌス毒素の局所注射で治療できる疾患である。
2、 そのほかにも合わせて行うことのできる治療法がありますが、ボツリヌス療法を避けて点眼や内服などの他の治療を先行すべきではないとされている。
クリニックで説明しておいてほしい事柄としては、患者さんの中には、ボツリヌス療法を拒む方が時に見られますのでその治療が選ばれる可能性には言及しておいていただけると助かる。

 眼瞼けいれんはボツリヌス療法でコントロールできる疾患です。

Ⅳ 病院での追加検査と検査に基づく治療法
●眼瞼けいれんと紛らわしい疾患の除外が必要
●片側顔面痙攣の診断にはMRIが有効

図1:ボツリヌス療法施行時の写真
手術用処置台に患者を寝かせて手早くボツリヌス毒素を注射する。直後の丁寧な止血が血腫の発生防止には重要。

図2:A型ボツリヌス毒素製剤添付文書に示された眼瞼けいれんへのボツリヌス療法における標準的投与部位。

紹介後に病院で行う検査は、似た症状を示す他の疾患の除外をするための検査ということになる。そのような疾患には片側顔面けいれん、眼瞼ミオキミア、ドライアイ、重症筋無力症などが含まれる。
片側顔面けいれんは小脳動脈が顔面神経を刺激する脈管圧迫で片側顔面に攣縮が起きる。MRIで確定できるが、治療法の第一選択はこれでもボツリヌス毒素なので治療法は共通である。
眼瞼ミオキミアは瞼の筋肉の一部がぴくぴくと動くもので、健康な人でも過労や睡眠不足などをきっかけに生ずることがある。その多くは数か月で自然に消える。
ドライアイはまぶしい、目が乾くなどの症状が似ていることから眼瞼けいれんと紛らわしい。ドライアイを眼瞼けいれんと間違うことは少ないが、実際には眼瞼けいれんなのにドライアイとされてきた症例にはしばしば遭遇する。ドライアイがそれなりに強い場合には液体のコラーゲンプラグの注入や固体の涙点プラグの涙小点への挿入を加えることもある。
重症筋無力症は神経から筋への伝達が障害される疾患だが、上眼瞼挙筋が最初に侵されることがある。その場合には眼瞼下垂の症状が現れ、患者が最初に眼科を訪れることがある。重症筋無力症では重症になるにしたがって次第に食物を飲み込みにくい、かむことができない、会話がしにくい、歩けなくなるなどの症状が現れてくる。血液中の抗アセチルコリン受容体抗体の検査やテンシロンテスト(検査薬を注射して迅速な改善があるかどうかを調べる検査)などで診断することができるから、紹介先では必要に応じてこれを再度調べる。それらを確認してからボツリヌス療法が開始される。
ボツリヌス療法のほかに眼瞼けいれんの治療を成功させるための補助的方法が複数ある。ドライアイの強い症例にはヒアレイン点眼液、ジクアス点眼液、ムコスタ点眼液などの処方が有効。また、そのような例ではコラーゲンまたはシリコンプラグの挿入も行うことができる。内服薬も併用は可能である。クラッチ眼鏡も試してよい方法である。最終的には眼輪筋切除術を形成外科に依頼する場合もある。

Ⅴクリニックに帰ってからの対応 700字
A.注射は30ゲージ針で行うから、多くの場合には出血は少なくて別段の処置は要しない。皮下出血がある場合には、ホットタオルで5分ほど温めて、その血腫の吸収を図る手段を日に一度指示する。
B、再診の頻度は、注射後1週間では皮下出血や眼瞼下垂などの合併症のないことを評価し、一か月で再度、有効性も評価する。注射の効果が弱くても、再度の注射までには60日が経過することが必要であるから、その間患者をがっかりさせないような説明が望まれる。
C、日常生活の指導は特に必要ない。あえて指導するならば、規則正しい健康な生活を送りストレスは少なくすることを求める。292

Ⅵ、再紹介すべき所見等
●患者の感覚として再度痙攣が強まったとの訴えがあり、しかも前回投与から2か月が経過したら再紹介する。
●目立つ合併症があれば、術者に対応してもらうために再度紹介する

1、 ボツリヌス療法を受けて結果に満足ならば、次に痙攣が再発するまでの期間を点眼薬処方等で観察してよい。通常、眼瞼けいれんに対するボツリヌス療法の効果は3月、片側眼瞼けいれんでは6か月程度である。その頃になると、目の周りの緊張感が再度増し、スパスムが再発して、やがて他人が見ても眼瞼の攣縮が分るようになる。患者が初めて再発を感じてから、外見で分る様になるのには2週間くらいを要す。月に一度程度の経過観察を続ければ次の投与時期は分るから、再度紹介していただければ再注射を行う。
2、 ボツリヌス療法の施術自体はそれほど難しくは無いので、量が決まれば次回からは紹介元クリニックで同量の投与を3か月程度の間隔で施術するという対応も可能。その場合にはボツリヌス毒素販売会社のホームページに記載されている指示に従いボツリヌス療法の施術の資格を得る。
3、 ボツリヌス療法を必要とする患者さんは、精神症状として鬱状態にあることも多い。ボツリヌス療法に対して効きが弱いとか、或いは全く効かないという不満をのべることも多い。一回の初回投与で満足する比率はおよそ80%とされている。残り20%の内の半数は、それでも3月ほどすると再度の投与を求めて再度受診して来る。しかし残りの半数、つまり元の10%程度はボツリヌス毒素の再度の投与を希望しない。そのような患者に対しては、ボツリヌス療法施術機関で抑肝散加陳皮半夏などの漢方薬、アセチルコリンの阻害薬であるアーテン、そしてベンゾジアゼピンの作動薬であるリボトリールの最少量などを投与しながら、不満を聴取しつつ状況を見守るという対応を強いられる場合もある。
文献
1,清澤源弘、他:目がしょぼしょぼしたら眼瞼けいれん?片側顔面けいれん?正しい理解と最新の治療法 メディカルパブリケーションズ2009
2, 清澤源弘 眼瞼けいれん診療ガイドラインの概略 日本の眼科、2012:83:832-836
3、Suzuki Y et al. Glucose hypermetabolism in the thalamus of patients with drug-induced blepharospasm. Neuroscience 2014:263:240-9.

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