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2014年10月19日

5932 網膜のグルタミン酸代謝研究の展開(石黒誠一先生)を聞きました

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カルパインはカルシウムイオンで活性化される細胞内プロテアーゼで、種々の細胞内蛋白質、特に、細胞膜や細胞骨格に近接して存在する蛋白質、シグナル伝達に関係する蛋白質などを限定的に分解してその性質を変化させるバイオモジュレータとして働く。

――お話の概要―――
網膜のグルタミン酸代謝研究の展開 26年10月19日東北大学眼科同窓会特別公演です。
1985年に水野教授の研究室では脳回転状脈絡網膜委縮症を当時9例見つけました。
それは、オルニチンからプロリンを作る経路(Simell and Takki)に異常があるというもので、Ornithine aminotransferase (OAT)欠損でした。それで、なぜ神経細胞が死ぬのか?
という事が疑問でした。房水にはプロリンはほとんどないからです。
水野教授に言いつけられて、オートラジオグラフィーを行いました。放射性プロリンを注射した動物で、脈絡膜には多数の放射性プロリンの顆粒があるがトリチウムプロリンは網膜には入らないのです。果たして、OATは網膜のどこに存在するのか?を考えました。
OATの局在は;ミューラー細胞です。そして網膜色素上皮細胞にもあります。
組織化学を電子顕微鏡で見ると、OATはミトコンドリア内にあります。P5Cからプロリンになるのか?P5Cリダクテースとの関連は不明でした。
ヒトではどこに局在するのか?(水戸);ガングリオンセルとアマクリン細胞にありました。

プロリンだけに反応する抗体を作ることを試みるために、アミノ酸を蛋白に付けます。
ラットでもプロリンは抗体を産生させられます。その結果、水平細胞にもプロリンは存在することが分かりましたが、その働きは未解決でした。

そのつながりで出てきたのがグルタミン酸です。グルタミン酸ははどんな病気に関係があるか?と考えてゆきました。グルタミンからGABA、さらにSSAへという経路があります。このあたりに関連する酵素の活性はGDHが70、AATは830、OATは2の比活性で先のOATの活性はごく低いのです。

グルタミン酸は網膜内層の細胞を破壊することが知られていました。教室の菅野は(1991)網膜内層の細胞はグルタミン酸で死滅することを示しました。グルタミン酸脱水素酵素(GDH)欠損では脊髄小脳変性が起きますが、それには熱に弱いものHSPと強いものとがあって、そのHSPが欠損している脊髄小脳変性になる人では網膜電図のOPが消えるという事がわかりました。(この論文は阿部先生の論文ですが、清澤も神経内科つながりの症例集めで名前が入っています。)そのOP消失にはアマクリン細胞あたりの関与が疑われました。

GADはGABAを生成する酵素ですが、低酸素下では細胞内のカルシウム濃度が上昇します。その時に細胞におけるグルタミン酸の蓄積が起きる?という事が問題になりました。しかし、その場にはグルタミン酸は無くてGABAが増えていることが分かりました(小林)。GABAにより律動様小波の消失が起きています。

その関係を明らかにしようと、ストレプトゾトシンで糖尿にするモデルを作ると、網膜にやはりGABAが増えることがわかりました。そして網膜電図ではOPの消失が見られました。ベンゾジアゼピン受容体は石川が調べました。網膜虚血でグルタミンからグルタミン酸とアンモニアを作るときに、虚血ではPAGの活性は急速に減少し、カルシウムイオンの増加とカルパインの上昇へと導かれます。虚血では、ミトコンドリアのAATだけが減ってゆきます。ミトコンドリアにはカルパインが存在し、それはカルシウム依存的に基質を限定分解するとされています。

ミトコンドリアカルパインの性質はどうでしょうか?。ミトコンドリアカルパインのカゼインザイモグラフィーで見ると、サイトゾルとミトコンではその分布が違うことが分かりました。

そうこうするうちに、ERp57が検出されました。ERp57はカルパインと結合していたのです。ERp57は2つのうちの上のバンドと結合していました。(AIF:アポトーシスインデューストファクターの切断が減少と説明しておいででした。)

カルパインにはμ(ミュー)タイプとm(エム)カルパインがありますがそれらの違いは何なのでしょう?
mカルパインの濃度がミトコンドリアからのAIF分泌を制御しています。それは、カルパイン阻害ペプチドによる細胞死の抑制を起こします。RCSラットにみられる細胞死に対する抑制効果もそれで説明できます。ドメイン3が構造維持ドメインであり、カルパインの働く場所はそこにあるらしいです。その2と9が特異的に働いているのですが、その2と9の部分がカルパインの立体構造の中にあります。

虚血再灌流モデルラットでも、μ―カルパイン阻害ペプチドの効果が有効です。
実験系にmカルパインを入れると、網膜電位が消失します。それはATPが減ることに依っています。この話の図は、セルストラクチャーアンドファンクションという雑誌の表紙に最近、取り上げられました。

中沢教授のリマークス:
「理論を組み立てていって研究を進める。」という姿勢で貫かれていることがすばらしい。
東北大学ではカルパイン関連薬が、現在千寿と共同研究に進んでいて、近い将来には臨床に進むことができるだろう。

清澤のコメント:
石黒誠一先生は昭和52年に東北大学大理学部学大学院を卒業され、当時水野勝義先生が主催されていた東北大学眼科学教室に研究指導を担当するため入局されたPhD(非医師)の先生です。昭和58年には眼科講師に就任され、眼科教室が玉井信教授主催になった昭和61年以後も眼科教室での研究を13年間支え続けられたのち、弘前大学農学生命科学部門に移動され、教授としてカルパインの研究を続けられました。本日はその経緯を伺いました。
 私、清澤が医学部を卒業したのが昭和53(1978)年、初期研修を終えて大学院に進んだのが1980年から1984年でしたから、当時は随分離れた先輩と思って見上げておりました。留学から帰国して、私が医科歯科大学にうつるまでには3年ほど講師室で机を並べさせていただいていた幸せを本日は再び痛感しました。
聞き漏らしてしまって、このままでは話のつながりの悪い部分もありますが、私の聴講メモを採録させていただきます。
このお話のあとで、座長を務められた中沢徹教授が見事にこの話の概要をサマライズされ、今後東北大学から発信されるカルパイン関連の創薬に話をつないで見せておいでであったのが印象的でした。(今後、早急に石黒先生に手を入れていただき修正したいと思いますが、今日は早耳という事でとりあえずアップします。)

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