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2014年9月25日

5858:「滲出型加齢黄斑変性に対する自家iPS細胞由来網膜色素上皮細胞移植」を聴きました

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学術講演 神戸市立医療センター中央市民病院 栗本康夫先生
「滲出型加齢黄班変性に対する自家iPS細胞由来網膜色素上皮細胞移植」

1、 加齢黄斑変性と視覚の公衆衛生
世界でなら加齢黄班変性による失明は8,7%だが、西欧では失明の第一位を占めるのが加齢黄班変性である。日本では2004年で4位(視覚障害者の申請ベースで)。

 この疾患は増えていて、1997年で0,9%、2007年には1.3%である。

萎縮型には治療の手がない。一方滲出型加齢黄班変性には対症療法(抗VEGF、PDT,レーザーなど)がある。

2、 加齢黄班変性に対する網膜色素上皮移植

3、 ヒト胎児、自家RPE、コロイドグラフト(これには重篤な合併症もある):倫理的、免疫的などの問題がある。

4、 中枢神経は再生しない(カハール-1932没)とされてきた。

5、 幹細胞は多分解能を持つ、

1) 内在性幹細胞の賦活という方法
2) 幹細胞(前駆細胞の移植)という方法
3) 幹細胞由来の細胞を用いた移植という方法には 
 1、 ES細胞(拒絶と倫理性の問題あり):多能性幹細胞、分化網膜細胞、
 2、 iPS細胞がある。

網膜・視神経再生医療のターゲットとしては、神経節細胞などを目的とすればハードルは高いが、色素上皮は比較的簡単である。
色素上皮細胞を標的とすれば――対象疾患はAMD加齢黄班変性か、RP網膜色素変性という事になる。

故・笹井芳樹教授はiPS細胞を用いた:細胞由来RPEシートの開発で、この研究を完遂するために必須な基礎技術をすでに開発し、この研究にも参加されて来ていた。STAP細胞でiPSに対抗しようとしたという評価は正しくない。

◎理研のセンター、先端医療センター病院と神戸市立医療センター中央市民病院で移植を行う準備をする

ステージ1:非臨床試験
ステージ2:臨床研究(現在)
ステージ3:将来は事業化を計画する

◎では移植する網膜色素上皮RPEの性状としては
1、 細胞懸濁液
2、 細胞シート:その中でも
 1) 人工材料を使用するもの
 2) 培養32日目で得られる色素を持った細胞シート。これだと基底膜も付いている。

3、 iPS由来RPE細胞シートの評価(基底膜を有する色素上皮である)
4、 このRPEには貪食能もある。
5、 栄養因子も作る能力がある。

◎網膜下移植手技の流れを説明する
滲出型AMDを対象とし――まず直視下にサザランド鑷子で新生血管抜去を行う――そこにシートを移植するという手順。
それには移植用デバイスを用いて入れるのだが、シートは水に浮かぶちり紙様で扱いにくい、
そのための医療用デバイス開発が必要であった。

◎臨床研究体制と対象患者選択基準を示す。

○滲出型AMD,50歳以上、手動弁から0,3未満の視力、再発を繰り返すもの。悪性腫瘍の合併または5年以内の既往のある患者。目標症例は6例である。
○安全性(シートに起因する有害事象)腫瘍化や出血などを考える。
○有効性もOCT、視力そのほかのモニター項目で検討する。

○今回は安全性の確認が主目的だから、新生血管板を抜去した後に、隅に切り口を入れて裏表が分かる形に切り出した移植用シート小さいもの(1x3ミリ程度)一枚のみを今回のプロトコールでは挿入した。その際に術中OCTが有効であった。挿入後シリコンを入れて網膜面を圧迫する。

患者は術直後に明るいと答えてくれたが、これはCNV脈絡膜新生血管板を引き抜いて明るくなったという事だろう、この時期ではまだ移植した色素上皮が働いているわけではないと思われる。

まとめ。今回の移植を支えた技術、チームなどの復習。
1)-5)今回の手術の目的は安全性の確認である。 

清澤のコメント:
実際の移植にあたっては使用する器具の開発など、iPS細胞シートの基本的な作成ばかりではなく、手術器具の開発やシートの切り出しなど新しく開発された部分も多いことがよくわかりました。従来の大学主導の臨床研究では完遂しがたい部分をこの3つの組織が実行しているという構造もよくわかりました。一方、血管新生板の抜去などの部分は従来の後局部での手術と変わらない手技に支えられていたこともよくわかりました。2週間ほど前に世界で初めて行われた歴史的な手術の実際を動画で供覧していただいたことに感謝いたします。

 あいにくの雨の中でしたが多数のコメディカルも含め会場はほぼ満席でした。(突然のご指名でドギマギしてしまいましたが、)会の後の情報交換会では乾杯の音頭を取らせていただきました。
 講師の後藤先生、栗本先生、それに江東区眼科医会会長佐藤明先生、江戸川区眼科医会会長宇多重員先生とも親しくお話させていただき、有意義な会への出席となりました。城東地区眼科疾患研究会と共催いただいた参天製薬様にも感謝申し上げます。

注):現在、江東区医師会から特定疾患(保険請求上の51分類とか)認定医の申請書提出の案内が眼科医にも回っているそうです。都合3か所に書類を出す必要がありますが、忘れないようにと佐藤先生から教えていただきました。

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