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2014年9月10日

5811:原因不明の視力障害――鑑別診断は可能か?

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原因不明の視力障害――鑑別診断は可能か? ~遺伝性眼疾患診断へのフローチャート~
慈恵医科大学眼科講座 林孝彰 講師 の講演を本日新橋で行われた「第19回愛宕眼科臨床研究会」で聞いてきました。
これは、清澤の聴講メモです。

この会はいつも聞きたくなるような演題が用意されていたのですが、今回初めてバングラデッシュ人のお医者さんラーマン・カリールさんを誘って聞きに行ってきました。

では、ここからが林先生のお話。
代表的な遺伝性網膜疾患を扱った眼科専門医試験の問題があります。
例えば、この問題です。55歳ですが、右目も同様という網膜所見が家族性を想わせ、答えは定型網膜色素変性の症例です。
別の問題では37歳男性が問われています。視力低下を自覚し、眼底と黄班部に萎縮があって、結論は錐体(杆体)ジストロフィーです。

しかし実際には診断がはっきりしないこともあります。そのようなものには詐病、屈折性弱視、心因性視覚障害などがまず考えられます。このほか緑内障やレーベル遺伝性視神経症もあります。そして、常染色体優性視神経症、オカルト黄斑ジストロフィー、AZOOR(アズール)、MEWDS(ミューズ)もあります。さらにAutoimmmune retinopathy(自己免疫性網膜症)も含まれます。

検査は 問診、RAPD。視力、細隙灯などを行いますが、そのすべてをただちにすべてはできません。

症例1)診断が困難であった片眼視力低下
視力は(0,5)/(1.5).。RAPDは陰性、網膜のOCTではISOSラインが乱れているます。
AZOORでしょうか?:AZOORの治療にパルスが有効であるというエビデンスはないですがパルスを行いました。
心因性視力障害でしょうか?、よく見るとやがて左目にもISOSラインの乱れが出てきました。OCTでは網膜の菲薄化も起きています。
この症例の最終診断は:オカルト黄斑ジストロフィーでした。(⇒当ブログの関連記事にリンク

オカルト黄斑ジストロフィーは
20-40歳代に見られ、
常染色体優性の遺伝を示し、
進行性の視力障害をきたす。
そして全視野網膜電図は正常か振幅低下。
原因はRP1L1遺伝子異常です。
(発症直後の左右差にも特徴があります。)

症例2)この症例は網膜厚の進行する菲薄化を示します。
ゴールドマン視野(GP)は急激に進む輪状暗点です。
しかし、数か月という短期間で此処まで進行するのは何なのでしょうか?

鑑別診断には
1、網膜ジストロフィー
2、AZOOR
3、オートイミューンレチノパシー つまりCAR(癌関連網膜症)
を考えます。

この症例ではPETでの異常陰影で胸腺腫が見つかりました。
腫瘍摘出で視野変化の進行を抑制します。
CARの特徴は夜盲、羞明、進行性の視野障害です。
この疾患の患者血清には抗リカバリン抗体があります:
実際にこの患者さんでも自己抗体が検出されました。
しかし、このような疾患では網膜ジストロフィーとの鑑別が必要です。
実際には
1、問診 ―――家族歴、遺伝性、眼外症状――両眼性対称性を参考にします。
2、診察―RAPD、眼振、前眼部、中間透光体を見ます。
3、検査です。―視力、視野、眼底などが含まれます。
4、そしてGP、そうハンフリーではなくてGPです。
5、ERG:これにも全視野網膜電図のほか、多局所網膜電図、黄班局所網膜電図もあります
6、その他:には色覚、MRI、PET、VEP、そして目的によっての追加採血が必要です。

遺伝性網膜疾患を診断する場合、慎重に診断し、説明も慎重にしなくてはなりません。
診断した後でも、治療的研究成果の情報提供やカウンセリングの機会を与えることが重要です。

臨床視覚電気生理学会では2014年10月に特集のシンポジウムがあります。
また臨床眼科学会でもこれに関連するインストラクションコースなどもあります。

眼科医清澤の感想など追記しておきます:
 特別講演は解りやすくもちろん面白かったですが、これを主催する慈恵医科大学としては、患者さんを送ってくれる開業医からの疑問に答えて、その結末を聞いてもらうというのがこの会の主目的だという事でした。

 個別の返書もほしいですが、この会の第二部のような形で紹介元の医師に結果を還元すると、また患者さんをその大学に送りたくもなろうものだと思いつつ帰宅しました。

現在慈恵には15人の視能訓練士がいますが、さらに近隣に検査センターを作って、外来での検査や光凝固などの治療が機動的に行えるようなシステムを構築したいという話をしておいででした。第2部は別項目として、症例でなく印象に残った単語のみメモしておきます。

cancer associated retinopathy (CAR症候群)で発症した肺小細胞癌の1例(第46回肺癌学会関東支部会 関東支部 支部活動):肺癌 43(1), 81, 2003-02-20(⇒清澤の関与した症例 リンク)

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