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2014年8月13日

5713 蛍たちの航跡 帚木蓬生 を読んでいます

無題蛍の航跡、軍医たちの黙示録は、第1回日本医療小説大賞の受賞作です。インパール作戦下、抗命によって師団長職を解かれた中将の精神鑑定を行った医師を描いた抗命から始まる15編の短編集です。神経眼科の大先輩である桑島治三郎先生も従軍されたのがこのインパール作戦です。
本日この本の話を石川弘先生にしましたら、本の末尾の資料集にはこの桑島治三郎先生が日本医事新報に書かれた随筆がずいぶん引用文献として挙げられていると教えてくださいました。

ーー抗命からーー
 「第15軍司令官牟田口廉也中将の命令によって、三種の兵団が投入された。弓兵団(第33師団、柳田元三中将)、祭兵団(第15師団山内正文中将)、烈兵団(第31師団、佐藤幸徳中将)であり、弓はインパールの南から、祭はインパールの東から、それぞれビルマとインドの国境を越えた。そして烈は、インパールの北にあるコヒマを目指して国境に向かったのだ。
 この3兵団のうち、最も困難な進路を取らなければならなかったのが烈兵団である。進路には、ヒマラヤ山脈の南端パトカイ・アラカン山系が立ちはだかっている。標高は2800メートル、その両側1500メートル下には谷が横たわり、大河が流れている。ビルマ川にある川が、イラワジ河に合流してアンダマン海に注ぐチンドウィン河だ。しかもこの河は何し負う激流だった。あとで聞いた烈兵団長の副官の証言でも、牛はもちろん、米俵や20キロの軍票つづらも押し流したらしい。
 この渡河作戦が烈によるコヒマ攻略の端緒であり、昭和19年3月15日に実施された。」ーー

 当初から無理の多いこの作戦は成果を上げられず、従事した3兵団の兵団長のいずれもが更迭されるという前例のない事態に陥ります。この主人公の軍医は烈兵団(第31師団)長を更迭された佐藤幸徳中将に対する「正常」との診断書を提出したのですが、これは陸軍の面子を守るために黙殺されて、佐藤中将に対する軍法会議は開かれませんでした。その結果、牟田口廉也第15軍司令官の責任も問われなかったのです。

この著者の作品で私がすでに読んだものには次のものがあります。ことに最近は蠅の帝国も同シリーズの文庫本で読みました。○ 蠅の帝国(ー軍医たちの黙示録ー日本軍医小説大賞受賞):東京。広島、満州。国家により総動員され、過酷な状況下で活動した医師たち。彼らの慟哭が聞こえる。帚木蓬生のライフ・ワーク

○ ヒトラーの防具:日本からナチスドイツへ贈られていた剣道の防具。この意外な贈り物の陰には、戦争に運命を持て遊ばれた男の驚くべき人生があった。

○ 逃亡(上下):柴田錬三郎賞受賞。戦争中は憲兵として国に尽くし、敗戦後は戦犯として国に追われる。彼の戦争は終わっていなかった。「国家と個人」を問う意欲作。

○ 国銅(上下):(大仏の造営のために命を懸けた男たち。歴史に名は残さず、しかし懸命に生きた人々を、熱き思いで刻み付けた、天平ロマン。

終戦記念日を控えた今、いずれもわたくしのお勧め度は高いです。

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