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2014年7月21日

5645 視力は簡単なエクササイズで改善可能だろうか?

5645 視力は簡単なエクササイズで改善可能だろうか?

某雑誌出版社の方に「中医学をもとに西洋医学のエッセンスも加えた、誰でも自然に行える視力を良くするエクササイズ」について記載されたベストセラー本というものを見せられコメントを求められました。

眼科医としてこの本を拝読すると、残念ながら科学的ないし医学的な根拠が欠如していると感じ、そこで述べられているマッサージを推奨することはできませんというのがわたくしの結論でした。

このコメントを含む記事は今週木曜出版の号に掲載していただけるそうなのですけれど、掲載される短いコメントだけでは言い尽くせない部分がありましたので、このインタビューの時に用意した文に手を加えてここに記載いたします。賛否の感想がおありでしょうが、ご参考に願えればと思います。

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視力は、網膜に出血などの病変がない場合には網膜に鮮明な画像が結像できるかどうかによって決定されます。少し詳しく述べると、眼鏡を必要とする屈折異常には近視、乱視および遠視があります。しかし、成人の裸眼視力が悪いという場合、その多くは近視ないし近視性乱視です。

その近視の程度を決める種々の要素というものがあって、それには角膜と眼内の水晶体の屈折度と眼球の軸の長さが主に関連しています。今まで行われている近視への対策は、そのいずれをどう変えるかということが明確に説明されておりましたが、この本の述べるところではそのような近視の基礎に対する説明が全くありませんでした。

近視では眼鏡をかけないと像が網膜の眼に結像するために像は鮮明ではなくなり裸眼視力が下がります。そのような近視に対する対応として凹面鏡である眼鏡またはコンタクトレンズが通常は利用されてきました。

近視の初期においては、点眼治療も加えられます。また夜間ハードコンタクトレンズを装用して角膜上皮の厚さを調整して近視を低減するというオルソケラトロジーという方法もその利用が始まっています。さらに最近では近視の進行が停止した成人の眼球そのものに手を加えて近視を補正する方法として、レーシックが現れ、多くの人々がその手術を受けるに至りました。

レーシックは近視を減らす優れた方法でしたが、術後の遠視化に伴う著しい眼精疲労、早期に見られる老視の発生、知覚神経の損耗による術後ドライアイの発生などが一定数存在し、術後の不調子を訴える患者さんもおります。また術後不適応症候群といって、急激な近視の消滅に適応できずうつ病などを発症する患者さんもおいでになりますので、わたくしたち神経眼科医はその実施にあったっては慎重な適応の決定を患者さんにも医療業界にもおすすめしています。

オルソケラトロジーは、夜間にハードコンタクトレンズを装用し、昼にはそれを外して好適な裸眼視力を得るというものですが、その効果は数日しか続きません。しかし、これを用いると近視の進行が抑制できるという説明がなされています。厚生労働省の認可を受けた数種のレンズが国内で市販されていますが、国民健康保険の収載が得られていないので実際に行う場合には私費診療となります。10歳前後の近視が進行する時期がその適用であるという学会発表があり中国、韓国、台湾など東アジア諸国では小児に対して多く使用されています。しかし、日本国内では成人に対する利用というコンタクトレンズ学会のガイドラインなので、小児に行う場合には医師の裁量に基づく使用ということになります。

このほか、従来かから行われてきた点眼療法として、近視が目の一時的な過緊張による調節緊張の要素を残していれば、ミドリンMという調節麻痺剤も使われます。また最近ではより強力な低濃度のアトロピン点眼が近視の進行抑制に有効であるということを発言している研究者もいて、その研究も盛んに進められています。

MCレンズという、遠近両用眼鏡も市販されています。初めて近視用の眼鏡が処方される小中学生程度の患者さんが適応で、このレンズで眼鏡を作ると近視の進行を遅らせることができるとも言われていますので最近はその処方が増えていると聞いています。

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