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2014年5月13日

5442 眼の動きで生じるブレを補正する脳内の仕組みは「MST野」にあり

001「動き」を処理する脳部位とそこに至る視覚情報の流れ(サルの場合)

清澤のコメント:
古典的に「なぜ目を動かしても視覚イメージはぶれないのか?」と言う質問は眼球運動と視覚野関連を論ずる場合には良く問われる問題でした。(英語のwikioedia Saccadic masking – Wikipedia, the free encyclopediaにも妥当な解説があります。大細胞系の関与も論じられています。)

サッカード抑制は「~急速眼球運動時の後頭葉視覚中枢の抑制メカニズム~」とも言いかえることが出来ます。東北大学の植松貢講師と米国の研究者のグループもこの問題に取り組み、急速眼球運動時の後頭葉視覚中枢において、神経細胞活動の抑制と興奮が短時間に目まぐるしく起きて視覚を安定化させていることを、ヒトの頭蓋内脳波を用いた解析で明らかにしたと昨年報じていました。

この現象は“サッカード抑制“と呼ばれるますが、その詳しいメカニズムはまだ十分に分かっていません。この研究では小児の頭蓋内脳波を用いて約50-200ミリ秒の急速眼球運動時における高周波数脳波の変化について解析を行い、①眼球運動中に後頭葉視覚中枢の神経活動が抑制され、その程度は中心視野を認識する部位(後頭極)において最も強く、長い眼球運動ほど長く抑制される。②抑制直後に視覚中枢は急速に興奮し、その程度は内側面において最も大きい。③眼前の視覚情報の変化というよりも、眼球運動自体が同時に後頭葉抑制を引き起こしていること、をなど明らかにしていました。

これに対して、今回の報告は対象がサルで、電極で細胞医活動を調べた結果、この機能を担うのがMST野であるという事を明らかにできたとしています。著者らも述べている通りこの成果はまだ“サッカード抑制“の機序解明の一段階と考えられます。今後の研究の発展に期待したいところです。

この様な短い時間で起きる生理現象の解明にはファンクショナルMRIが有利と思われますが、調べてみるとそれにも2004年ころの報告がいくつかあります。

ーーー今日の目の記事ですーーー
眼の動きで生じるブレを補正する脳内の仕組みは「MST野」にあり – 京大 [2014/05/13]

京都大学は、眼の動きによって生じるブレを補正して、安定していてなおかつ連続した視覚認知を得るのに、大脳皮質の「後頭・頭頂連合野」の一部である「MST野(Medial Superior Temporal Area)」の働きが関与していることを明らかにしたと発表した。

成果は、京大 学際融合教育研究推進センター 健康長寿社会の総合医療開発ユニット(LIMS)の稲場直子特定助教、同・医学研究科の河野憲二教授らの研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、米国東部時間5月12日付けで米科学雑誌「米科学アカデミー紀要(PNAS)」オンライン版に掲載された。

ヒトは、絶えず非常に速い速度で眼を動かしているが、それにも関わらず周囲の景色を安定して見ることが可能だ。もしビデオカメラを眼と同じように素速く動かしながら撮影したとすれば、撮影された映像はひどくブレてしまう。この現象は17世紀から研究されており、19世紀になってヘルムホルツにより、自分の意志で眼を動かした時には、眼の動きによって生じたブレを補正して精確で安定した視覚情報を得る仕組みがヒトの脳にはそなわっているに違いないという説が出された。しかしそれ以降、現代までさまざまな検証が活発に行われてきたが、その実体を捉えることはできていなかったのである。

そこで研究チームは今回、この眼の動きによるブレを補正して安定した視覚を作りだす脳内メカニズムを解明するため、サルの大脳の「高次視覚野」から神経活動の記録・解析を実施した。

高次視覚野の神経細胞には「受容野」があり、それぞれの神経細胞が異なる網膜部位に映る視覚像に反応することが知られている。そこで、眼の動きによって網膜に映った視覚像の位置が移動する時、神経細胞の受容野の位置にどのような変化が生じるのかが調べられた。

その結果、大脳皮質の後頭・頭頂連合野の一部であるMST野の神経細胞は、眼の動きが終わった時点で、眼が動き出す前に受容野の中にあった視覚情報を呼び起こし、その瞬間に見えている情報と統合して処理していることが判明したのである。この実験から、MST野の神経細胞が眼の動きにおける前後の情報を統合することで、眼が動くことによって生じる視覚像のブレを補正し、安定した、かつ、連続した視覚認知を維持する神経メカニズムに関与している可能性が示唆されたという。

今回の成果は、ヒトが絶えず行っているさまざまな視覚情報処理の脳内メカニズムの解明に不可欠であると同時に、脳機能障害の診断および機能改善などに役立つことが期待されているとした。また研究チームはこれからも、引き続きこの仕組みの解明を目指すとしている。
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