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2014年4月26日

5391 眼部帯状疱疹の眼症状は?

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このところ眼の周りに出た帯状疱疹の患者さんを見ることが多いです。今年は4月中だけで3例を診断しました。
そこで帯状疱疹の眼症状を復習しておこうと、その記載を探しましたら、日本眼科学会誌のPDF(日眼会誌117巻6 号p490)がありました。

この記載を見ますと、結膜が充血している様な急性期ばかりでなく、もう少し長いタイムスパンで免疫反応まで慎重に見ていくことが必要なようです。私は、皮膚の症状が明らかなケースは発見し次第皮膚科に回してバルトレックスの内服の処方をお願いしています。感染に伴う眼の炎症があればゾビラクス軟膏を使いますが、ブドウ膜炎を起こしている場合には、局所点眼でのアトロピンやステロイドの使用も積極的に加えて、後遺症を最小にしたいものです。それにはまず、何が起き得るのかを的確に予想しておいて対応することが必要でしょう。
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また、眼部帯状疱疹(herpes zoster ophthalmics)は通常、三叉神経第1枝(眼窩神経ophthalmic nerve)の帯状疱疹で起きますが、その頻度は不明ですが、隣接する三叉神経第2枝(上顎神経maxillary nerve)の帯状疱疹で眼の周りの症状が起きることがあるそうです。それは上顎神経が下及び上まぶたにも分布しているからだという説明をした別の論文がありました。いずれにしろ上顎神経の帯状疱疹で角膜が侵されるのはまれなようです。さらに、ハッチンソンサインと言う鼻に水泡が出来るという兆候があります。末尾の脚注に記載しましたが、この場合には角膜や眼球にも影響が出易く、その原因は再活性化されたウイルスが鼻毛様体神経を介して入っているからだと言うのがその説明であり、この話題のキーワードのようでした。

ーーー日本眼科学会誌記事からーーー
日本眼感染症学会感染性角膜炎診療ガイドライン第2 版

Ⅴ 眼部帯状疱疹:眼合併症

1、病態
帯状疱疹はVZVによる感染症である.VZVの初感染は水痘であり,水痘罹患後にウイルスは三叉神経節,脊髄後根神経節に潜伏する.宿主の免疫能がウイルスの封じ込めに関与しており,免疫能が低下するなどなんらかの要因でウイルスが再活性化した場合,支配領域の皮膚節に有痛性の水疱を発症する.眼部帯状疱疹は三叉神経第一枝領域,時に第二枝領域に発症する帯状疱疹であり,角膜炎をはじめさまざまな眼合併症を生じる.若年者でも発症することがあるが,加齢とともにその発症頻度は高くなり重症化する傾向がみられている12)

・眼球組織には鼻毛様体神経を介して炎症が波及するとされており,本神経の支配領域である鼻背,鼻尖に皮疹がみられる場合には眼合併症は有意に高率となる(Hutchinson 徴候).

急性期は神経節から軸索を下ってきたウイルスによる感染症が主体であるが,皮疹の鎮静化以降にウイルスに対する免疫反応が関与する角膜実質の炎症がみられる場合があり,皮疹消退後の観察も必要である.

皮膚症状を欠くが,角膜炎,虹彩炎など眼部帯状疱疹に特徴的な眼合併症を有し,後記(診断)の基準に従ってVZV 感染が証明されるものをzoster sine herpete と呼ぶ.

2、眼所見
眼部帯状疱疹はHSV 感染症と異なり,多彩な眼合併症を生じるのが特徴である(表5).ここでは角膜炎を主体に解説する.


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表5  眼部帯状疱疹の眼合併症

眼合併症:解説

○三叉神経痛:前駆症状として三叉神経支配領域の皮膚の疼痛,知覚過敏が出現する.
3 か月を経過しても神経痛が残存した場合には,疱疹後神経痛と呼ぶ
○皮疹:三叉神経第一枝,第二枝領域の発赤,水疱疹,膿疱疹,痂皮を認める
○結膜炎:充血,出血,乳頭,濾胞,偽膜などを生じる
○上強膜炎:強膜の充血(全周,扇状),時に結節性隆起を生じる
○角膜炎:偽樹枝状角膜炎,びまん性角膜浮腫・内皮炎,多発性角膜上皮下浸潤,
円板状角膜炎などがみられる
○虹彩炎;角膜後面沈着物(微細なもの,豚脂様),前房中の細胞・フレア,瞳孔縁
の結節,虹彩萎縮斑がみられる
○緑内障:虹彩炎,線維柱帯炎に伴い眼圧が上昇する
○その他(まれな病変):動眼神経麻痺,全眼筋麻痺,網膜血管炎,視神経炎など
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1) 偽樹枝状角膜炎
急性期に結膜炎とともに発症する.上皮表層の隆起した病巣であり,中央の溝状陥凹がないこと,フルオレセインに対する染色性が弱く,terminal bulbが認められないことより,HSVによる樹枝状角膜炎とは区別される13).4〜6 日で消退するが,実質炎へと進行することがある.

2) びまん性角膜浮腫・内皮炎
角膜内皮細胞障害によるびまん性の角膜浮腫であり,比較的早期に発症し一過性であることが多い.

3) 多発性角膜上皮下浸潤
アデノウイルス結膜炎における多発性角膜上皮下浸潤に類似した病変であり,周辺角膜にみられることが多い.発症時期は1 か月以内のこともあるが,それ以降の場合もある.

4) 円板状角膜炎
1〜3 か月後にHSV によるものと同様の円板状角膜炎がみられることがある.慢性進行性の場合,角膜混濁,脂肪沈着,血管新生,免疫輪などが出現し,視力回復に角膜移植が必要となる例もある.

5) 強角膜炎
まれに,強膜炎に伴い,強膜病変部と接する輪部角膜に炎症が波及することがある.角膜には浮腫,浸潤,血管新生がみられ,瞳孔領まで病変が達すると視力は低下する.

3、診断
三叉神経支配領域の皮疹と神経痛,血清抗体価(補体結合反応)の4 倍以上の上昇,皮疹からの多核巨細胞やウイルス抗原の検出,房水や角膜病変からのPCR 法によるウイルスDNAの証明14)などにより行う.

(注:Ⅵ サイトメガロウイルス角膜内皮炎も似た症状がみられるようなので鑑別には注意が必要な模様です。)

文献12)-14)
12) 山秋久, 柊木雅晴, 北川和子:金沢医大眼科における眼部帯状ヘルペス症例の検討. 臨眼38:170-171, 1984.
13) Uchida Y, Kaneko M, Hayashi K:Varicella dendritic keratitis. Am J Ophthalmol 89:259-262, 1980.
14) Yamamoto S, Pavan-Langston D, Kinoshita S,Nishida K, Shimomura Y, Tano Y:Detecting herpesvirus DNA in uveitis using the polymerase chain reaction. Br J Ophthalmol 80:465-468, 1996.

次にⅤ 眼部帯状疱疹の治療です。

1、治療方針
発症早期からの抗ウイルス薬の全身投与と,眼合併症の種類と重症度に応じた適切なステロイド点眼が有用である.また,前房炎症の強い症例では,瞳孔管理として散瞳薬を用いる.現在,本邦で水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)に対して処方可能な抗ウイルス作用を有する薬剤はアシクロビルとペンシクロビルであるが,単純ヘルペスウイルス(HSV)に比べVZV に対する抗ウイルス効果は低い.アシクロビルは眼軟膏で投与した場合,角膜から前房内への移行は速やかであるが,角膜炎のみならず眼局所に多彩な病変を呈する眼部帯状疱疹は全身投与の方が十分な薬剤の移行が期待できる.またVZV に対する抗ウイルス効果を期待した場合,高い血中濃度を得るためには,点滴静注による全身投与が最も確実である.経口投与としては,消化管からの吸収率が改善されたアシクロビルやペンシクロビルのプロドラッグであるバラシクロビル塩酸塩やファムシクロビルが用いられている.

2、抗ウイルス薬の全身投与
発症早期から重症度に応じた点滴,内服による全身投与を行う.投与法は,皮疹の範囲や部位(鼻尖を含むか否か)などの重症度,宿主の免疫抑制状態(高齢者,基礎疾患)に応じて選択する.重症例ではアシクロビルの点滴静注を行い,中等症にはバラシクロビル塩酸塩の内服21),またはファムシクロビルの内服22)を選択する(表10).十分に抗ウイルス作用を発揮させるためには,用法・用量を確実に守る.三叉神経第1 枝領域のVZV は,全身の神経支配領域に比べ範囲は狭いが,眼合併症を伴う危険があることから,重症例に準じた治療を選択することが望ましい23)

3、抗ウイルス薬全身投与の注意点
アシクロビルやペンシクロビルは,ウイルス由来のthymidine kinase(TK)によりリン酸化されて抗ウイルス効果を発揮するため,正常細胞に対する毒性が低く,全身に対する安全性は高い.しかし,いずれの薬剤も腎排泄型の薬剤であるため,腎機能低下症例(腎不全患者,高齢者など)では血清クレアチニン値をもとに腎機能を評価し,クレアチニン・クリアランスやeGFR(推算腎糸球体濾過値)などに基づいて適切に減量投与することが,精神神経症状や急性腎不全などの副作用を回避するために必要である.

4、眼局所の治療
眼周囲の皮疹以外に眼所見を認めない場合で,既にアシクロビルの全身投与が行われていれば,抗ウイルス薬による積極的な眼科的治療は必ずしも必要ではない.鼻尖,鼻背に皮疹を伴っている場合,皮疹が睫毛の内側および角膜上皮に接する場合には,アシクロビル眼軟膏を併用する.

偽樹枝状角膜炎にはアシクロビル眼軟膏を用い,上皮性病変が消失すれば投与を中止する.角膜実質炎には,重症度に応じたステロイド点眼を用いる.HSV による角膜実質炎に比べ,高濃度のステロイド点眼が必要になる場合が多い.偽樹枝状角膜炎の病巣部の上皮細胞にはウイルス抗原が発現しているが,角膜実質炎や併発している虹彩炎,強膜炎の治療のためにステロイド点眼を用いても,上皮性病変が増悪することはない.また,ステロイド点眼による治療を十分に行わなければ,角膜瘢痕,虹彩後癒着,続発緑内障といった重篤な後遺症を残す場合もある.したがって,眼部帯状疱疹の角膜合併症には,上皮性病変を伴っていてもステロイド点眼を適切に用いて速やかな消炎を図ることが重要である.まれに皮疹が消失後,時間を経てから角膜炎の再燃がみられる場合があるが,短期間のステロイド点眼による治療で症状は軽快する.

文献21)-23)
21) 新村眞人, 西川武二, 川島眞, 本田まりこ, 漆畑修, 島田眞路, 他:塩酸バラシクロビル錠の帯状疱疹に対する第Ⅲ相臨床試験―アシクロビル錠を対照とした二重盲検比較試験―. 臨床医薬14:2867-2902, 1998.
22) 川島眞, 新村眞人, 大河原章, 吉川邦彦, 堀嘉昭, 山西弘一, 他:ファムシクロビルの帯状疱疹に対する臨床効果アシクロビルを対照薬とした第Ⅲ相二重盲検比較試験. 臨床医薬12:4015-4045,1996.
23) 渡辺大輔, 浅野喜造, 伊東秀記, 川井康つぐ, 川島眞, 下村嘉一, 他:ヘルペス感染症研究会(JHIF)帯状疱疹ワークショップ帯状疱疹の診断・治療・予防のコンセンサス. 臨床医薬28:161-173, 2012.
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清澤の追加する脚注

1)鼻毛様体神経:(ビモウヨウタイシンケイ) 【概要】三叉神経の第1枝である眼神経の枝 【詳細】視神経と上直筋の間を前内側に進みつつ、毛様体神経節との交通枝(毛様体神経節の知覚根)、長毛様体神経(網様体と虹彩の知覚を支配)、後篩骨神経(後篩骨孔を通って後篩骨洞と蝶形骨洞に分布)を出した後、前篩骨神経(鼻粘膜前上部と鼻背皮膚の知覚を支配)と滑車下神経(滑車上神経と交通し、上下眼瞼と内眼角の皮膚や淚嚢に分布)とに分かれる。

2)Hutchinson 徴候:本文に書かれている通り鼻背、鼻梁に水泡が出る帯状疱疹の分布の事です。この場合には眼内への影響も出易いので、特に慎重な経過観察が必要とされています。

3)ゾビラクス眼軟膏 (アシクロビル眼軟膏)
【組成・性状】1.組成;本剤は、1g中にアシクロビル30mgを含有する。添加物として白色ワセリンを含有する。性状 白色の軟膏剤で、においはない。
【効能・効果】 単純ヘルペスウイルスに起因する角膜炎
【用法・用量】 通常、適量を1日5回塗布する。なお、症状により適

4)経口バルトレックス®:(バラシクロビル)
投与方法 経口
排泄 腎臓 40–50%(アシクロビル) 糞便 47%(アシクロビル)
バラシクロビル (Valaciclovir) は、ヘルペスウイルス感染症治療薬のひとつ。塩酸塩の塩酸バラシクロビルがグラクソ・スミスクライン社から商品名バルトレックスRとして販売されている。

薬理:バラシクロビルはアシクロビル(商品名ゾビラックス等)のプロドラッグである。

バラシクロビルはバリンとアシクロビルがエステル結合されておりエステラーゼによって抗ウイルス作用を持つアシクロビルに変換される。バリンとの結合によって体内への吸収率が高まることにより、経口アシクロビルより生体利用率が高くなっている。

効能;1型および2型単純ヘルペスおよび水痘・帯状疱疹ウイルスに対して活性を有する。 口唇ヘルペスや性器ヘルペスに代表される単純疱疹、あるいは帯状疱疹の発症時症状の再発をあらかじめ抑制するための投与法の他、水痘に対しても承認されている。(私はバルトレックス処方は皮膚科に任せていますからその量については自分では感知しません。処方の際には再度ご調査なさってください。)

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