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2014年3月16日

5261 「視神経炎の疾患感受性遺伝子の検索」の研究とは

5261 「視神経炎の疾患感受性遺伝子の検索」の研究とは

清澤眼科医院では東京大学眼科で進められている「視神経炎の疾患感受性遺伝子の検索」の研究に協力して、同意の頂ける患者さんの採血を行っています。この研究を行うに当たって、医院の職員に対してこの論証研究の目的と実際を蕪城俊克先生にご説明戴きました。患者さん方にも有用な情報を多く含むものですから、ここにその聞き書きを収録させて頂きましょう。
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「視神経炎の疾患感受性遺伝子の検索」研究
東京大学医学部附属病院眼科 蕪城 俊克

1、様々な病気と遺伝
 多くの病気は、環境要因(後天的因子)と遺伝的要因 (先天的因子)が組み合わさって起こります。様々な病気の遺伝の関与が知られていますが、遺伝的要因 (先天的因子は外傷<感染症<生活習慣病<遺伝病、の順に強くなっていると考えられます。これは病気へのかかりやすさの違いとも言えます。

2、様々な疾患には感受性遺伝子というものがあり、「疾患感受性遺伝子」=その病気になりやすい「体質」を決めている遺伝子という事が出来ます。その例としては
高血圧:アンギテンシノーゲン、脂質代謝(MSR1)など
1型糖尿病:インスリン遺伝子,CTLA4遺伝子,PTPN22遺伝子,IL2RA遺伝子など
脳動脈瘤:SOX17、CDKN2A遺伝子など
心筋梗塞:BRCA1、LTA、ガレクチン-2など
が、すでに医学の世界ではわかっています。

3、遺伝子
遺伝子と言うのは遺伝情報をコードする塩基配列で、細胞内にあるものです。
この遺伝子からタンパク質がつくられます。
言うなれば、「生命の設計図」です。
人間には30億の塩基対があり、これは百科事典700冊分の情報量です。

4、一遺伝子多型: SNP(スニップ)とは
Single nucleotide polymorphism(一遺伝子多型)の略ですが、
遺伝子のバリエーションの1つで、一塩基が置き換わったものです。
SNPは、1000塩基に1つ程度あるとされています。

5、SNPの生体への影響は、
例として、アルコール・デヒドロゲナーゼ(ALDH2)遺伝子のSNP多型がアルコール不耐症の発現に関連しています。

6、疾患の感受性遺伝子同定の戦略には2つの道があります。
①は候補遺伝子アプローチです。
これは、既存の知識・論理に基づく戦略です。
患者内での病態や動物モデルでの病態を参考にします。例えば糖尿病患者の血液中ではインスリンが下がっているという事に注目して、調査する候補遺伝子を決めてから調査を開始します。これが従来の方法です。
②は(ゲノムワイド)関連解析と呼ばれる新しい方法です。
この場合には、病気の人と病気でない人からなるべく多くの遺伝子サンプルを頂き、どこが違うかを調べる方法という事ができます。
正常人と疾患を持つ人の各群を数百人から数千人集めて、その傾向の違いを探してゆきます。

7、SNPによるゲノムワイド(全ゲノム)遺伝子解析を説明してみましょう
SNPはゲノム上に多数、密に存在し、その総数は300~1000万個とされています。
SNP情報は1塩基の変化なので、その有無の判定が容易です。その結果を信号化(0,1)し易く、 DNAマイクロアレイを用いた検査のオートメーション化が可能です。
患者に多く、健常人には少ないSNP変異を探すことで、疾患感受性領域をかなり狭い範囲まで絞り込めるわけです。

8、実績として正常眼圧緑内障の疾患感受性遺伝子の同定を示します
専門的になってしまいますが、、CDKN2B(cyclin-dependent kinase inhibitor 2B)と言う遺伝子があって、これは細胞増殖の周期を制御する遺伝子の1つです。TGF-βを強く誘導する遺伝子として知られています。
緑内障の他、子宮内膜症、虚血性心疾患、子宮がん、食道がんなどにも関連しています。
この遺伝子が緑内障の発生に関連があるという事が蕪城先生らのグループの研究でわかりました。(Takamoto M, Kaburaki T, et al. PLoS One. 2012;7(7):e40107)

8、東大医学部人類遺伝学教室で同定された疾患感受性遺伝子を見てみましょう
ナルコレプシー、統合失調症、2型糖尿病、若年1型糖尿病、Stevens Johnson症候群、若年者の結核感染、B型肝炎による肝がん、その他多数がわかってきています。
その詳細はhttp://www.humgenet.m.u-tokyo.ac.jp/publication.html で見ることが出来ます。

9、さて、肝心の視神経炎ですが、
視神経炎は、視神経に炎症を起こし、視力が低下する疾患です。
原因で分ければ、: 
特発性(多い)
感染性(ウイルス、細菌など)
多発性硬化症(multiple sclerosis: MS)
視神経脊髄炎(Neuromyelitis Optica: NMO)
自己免疫性(抗SS-A抗体・抗SS-B抗体・抗甲状腺抗体など自己抗体陽性例)、全身疾患(サルコイド、SLE、シェーグレン、潰瘍性大腸炎など)
が含まれています。

鑑別すべき疾患としては
虚血性視神経症(ION)、圧迫性(腫瘍、副鼻腔炎)、外傷性、甲状腺眼症、中毒性(シンナー、有機リン、メチルアルコールなど)、栄養失調性(ビタミンB1,B12欠乏)、遺伝性(Leber遺伝性視神経症)、腫瘍関連(Paraneoplastic optic neuropathy )など
を挙げることが出来るでしょう。

10、視神経炎の特徴は、
20~40歳に多く、女性が70%。10万人に1例/年。通常は片眼性(70%)です。
急激な視力低下を示し、60%は1~2週間で0.1未満になります。
眼球運動痛も多く、1~2ヵ月で視力回復(70%)がみられます。
中心暗点、様々な視野欠損パターンを取り得る。などを上げることが出来るでしょう。

11、視神経炎の疾患感受性遺伝子研究を説明しましょう

残念ながら、この研究は今までにほとんど行われていません。
特殊型(多発性硬化症、視神経髄膜炎、Leber病)については報告が幾つかあります。その結果は、
多発性硬化症: HLA-DRB1*15, TNFRSF1A, IL2RA, IL7RA, STAT3
視神経髄膜炎: CYP7A1 promotor (Kim HJ, Neurobiol Dis 2010)
Leber病:ミトコンドリアDNA 11778番点変異などの報告があります。

12、今回の研究の目的は、
視神経炎になりやすい遺伝子的背景(疾患感受性遺伝子)を明らかにすることで、視神経炎の診断や治療に役立てることを目標としています。

対象・協力施設は、
視神経炎患者:200例 (目標人数です)
健常人:1300例 (これは東大医学部人類遺伝学教室のデーターを使うことが出来ます)
従来の参加施設は、東京大学医学部附属病院眼科、井上眼科病院であり、今回東京大学倫理委員会の審査を経て、清澤眼科医院もその施行施設に加えていただくことが出来ました。

13、方法・手順
これは清澤眼科医院の職員に周知するための部分なので簡単に記載します。

①患者情報からその疾患である可能性のある患者さんを清澤が選び、さらに蕪城医師が予めその候補者を抽出します。そのうえで医院から視神経炎の患者さんに研究への協力を依頼し、次回の来院日を蕪城医師の来院日に合わせて予約します。来院時には清澤が通常の診察をしたのちに、研究説明書で説明し、同意書で同意を得ます。

②患者に施設ごとに通し番号をつける(清澤眼科の視神経炎患者なので、KGS-1、KGS-2,KGS-3,・・・・・)。記録用ノートに患者名、通し番号、清澤眼科でのカルテ番号、採血日を記録に残す。

③患者データーシートに、患者様のこれまでの病歴、検査結果(頭部MRIなど)、治療内容とその効果について蕪木医師が問診します。
④専用の採血管に10ml採血し、検査会社に血液を渡します。

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清澤のコメント;
対象とする疾患群がなるべく純粋な方がその疾患の特徴はクリアーに分かれ、境界線の対象者が増えると感度が悪くなるからでしょうが、清澤がお手伝いしている印象としては、この疾患に相当するという事に関するという蕪城先生の判断は相当厳密に粉われている印象です。

当医院の関与は全体の10%以下ですが、視神経炎の原因究明に多少なりと手を貸すことが出来る事を願っています。

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