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2014年3月2日

5213 眼瞼痙攣・海外診療事情 講演スライド2014.3.1清澤源弘

1,眼瞼痙攣・海外診療事情 眼瞼・片側顔面けいれん友の会 2014.3.1 清澤眼科医院 清澤源弘

今回は友の会からの依頼を受け、末尾に掲げる諸文献を参考に最近の米国における眼瞼痙攣治療の趨勢をまとめてみました。スライドのテキストを収載しておきます。
やや専門的な内容を含みますが、友の会の会員諸氏におかれましてはこの疾患に対する知識を吸収しておいででしょうから、理解していただける部分が多いかと思います。今後の治療を受ける参考になさってください。
殊にギャバ・ベンゾジアゼピン系薬剤によって誘発される薬剤性眼瞼痙攣の重要性への認識は高まってきたとはいえ、まだまだ医師の間でも不十分です。鈴木幸久を主著者とし、清澤と若倉も共著者である、それに対する警告としての論文が有力な医学雑誌に掲載できましたので、後半部分ではそれをご紹介いたします。

2,眼瞼痙攣治療の現状
現在も眼瞼痙攣に対する完全な治療法はない。
ボツリヌス神経毒素注入が症状の減弱に利用可能で最も有効な治療法。しかし、患者によっては症状軽減は不十分。
それらの患者にとって、経口薬と手術は取りうる選択肢である。

3,背景
眼瞼痙攣および顔面下部痙攣の最初の記載は16世紀の絵に始まる。
その後の数世紀、痙攣患者は精神病と見なされ、精神病院に収容された。
フランスの神経学者Meigeが瞼と顔中央の痙攣患者をメイジュ症候群と記述した20世紀前半まで眼瞼痙攣の診断や治療には進歩がなかった。

4,歴史上最初の治療
最初の治療が始まり、顔面神経へのアルコール注入、顔面神経抜去、神経切断が可能になった。
しかし、顔の表情および動作の損傷、眼瞼の機能的・美容的な変形が起き、治療の悪影響は元の病気と同等であった。

5、眼瞼痙攣の原因
現代の医師は眼瞼痙攣を精神病では無く、神経病と理解する。
眼瞼痙攣の原因は多元的。
基底核、中脳および脳幹に瞬目の中枢があるが、その故障がこの疾病の根本原因であるわけではない。(後で述べます。)

6、瞬目調節回路の成分
知覚枝は、角膜や瞼への光を含む刺激、痛み、感情、ストレスなど様々で多元的刺激に応答。
刺激は中枢に伝達される。中枢は外傷、年齢、遺伝学的に弱いかもしれない。異常な中枢はフィードバック回路を調節できない。
運動神経枝には顔面神経核、顔面神経および眼輪筋、皺眉筋、鼻根筋がある。

7、眼瞼痙攣の臨床的スペクトル
臨床的スペクトルは間欠的な瞬目を訴える眼瞼痙攣患者から、眼痛で日常生活が不能な者までに亘る。
患者は、テレビ鑑賞、読書、運転、歩行を断念。
さらに不安を増し、社会的接触を回避し、元気喪失、失職、さらには自殺願望にまで至る。
気分抑鬱の検出にはCES-Dが有効

8、疫学 :米国における頻度
米国で眼瞼痙攣は少なくとも50,000例。毎年2000例の新しい症例が発生。
一般人口中の眼瞼痙攣の頻度は10万人に5人。
女:男は1.8:1で、発症の平均年齢は56歳、患者の3分の2は60歳以上 。

9、病歴
眼瞼痙攣の最初の症状は、風、大気汚染、日光、雑音、頭部の動きなどの刺激に対する瞬目の増加。ストレスや環境に対する反応も原因となる。
羞明および眼表面の不快、ドライアイ症状を訴える。片眼の攣縮から両眼開瞼不能まで様々に進行。
やがてテレビ鑑賞、読書、運転、歩行を断念。
失調症または眼瞼痙攣の家族歴は診断の助け。

10、眼瞼痙攣の顔面における随伴変化
眼瞼痙攣は、一般に他の顔面筋ジストニー運動に随伴
長年の眼瞼痙攣に関連する変化は、額と眼瞼の下垂、皮膚弛緩、眼瞼内反を含む。

11、眼瞼痙攣の初期症状
初期症状は、瞬目頻度増加(77%)、眼瞼攣縮(66%)、眼刺激感(55%)、顔面下部痙攣(59%)、額の痙攣(24%)、および瞼のチック(22%)を含む。
診断に先行する徴候には流涙、眼刺激感、羞明および弱い視覚的苦痛を含む。
これらの苦情は通常の眼科診療においても一般的なので、適切な疑いを持つことは早期発見に有用。

12、2筋群の交代性 (レシプロシティー)
正常な瞬目において、閉眼は2筋群の活動および抑制の結果遂行される。
2筋群とは閉眼筋(眼輪筋、皺眉筋、鼻根筋)と、開眼筋(上眼瞼挙筋および前頭筋肉)。
正常な瞬目時にはこの2筋群はお互いに抑制し、開瞼筋群と閉瞼筋群は個別に作用する。
眼瞼痙攣患者では、閉瞼筋群と開瞼筋群間のこの抑制は失われる。

13、眼瞼痙攣の治療
慢性疾患で、しばしば次第に悪化する。
現在完全な治療法は存在しないが、患者は優れた治療選択肢を持っている。
その病気は治療にもかかわらずしばしば進行するので、患者は挫折し、時には偏った治療に走る。慣例に従わない治療法には信仰療法、ハーブ療法、催眠療法およびはり治療を含む

14、治療選択
良性原発性眼瞼けいれんに対する今日の治療の中で最も有効なものは眼瞼痙攣研究財団(BEBRF)による教育と助言で示される。
治療には薬物療法、ボツリヌス毒素注射および外科的介入が含まれる。
慣例に従わない治療法には信仰療法、ハーブ療法、催眠療法およびはり治療を含む。

15、知覚枝への介入
最初の治療は、眼瞼痙攣悪循環回路の知覚枝を対象にする。
疼痛を伴う光感受性を減弱させるための紫外線阻止サングラスの利用を含む。
FL-41サングラスでは羞明改善を示し、瞬目頻度、コントラスト感度、機能的制限の改善を示す。

16、瞼の衛生処置と涙小点閉塞措置
焦燥感と眼瞼炎を改善させる瞼の衛生処置が奨励される。
ドライアイを緩和する人工涙液および涙小点閉塞処置はしばしば症状を改善する。

17、眼瞼痙攣の薬剤治療
眼瞼痙攣の中枢は未知であるから、未確認の中枢に対する薬物治療は「試し撃ち」になる。
歴史上、眼瞼けいれんは精神疾患であると考えられたが、どの薬も他より有効ではなかった。
最近、これらの精神状態を変える薬はそれらの向精神的作用ではなく、運動枝への作用のために使用される。

18、眼瞼痙攣治療に用いられる経口薬剤 Ruth大学 Cynthia Comella
現在の選択肢は;経口剤、ボツリヌス毒素、神経遮断薬、手術、深部刺激
経口剤でFDAをと通ったものなし
経口剤の臨床トライアルもない
経口剤は臨床経験に基づいて使われているだけ

19、ジストニアへの経口薬の概要
レボドーパ:副作用は吐き気、作用は限定的
抗コリン剤(アーテン):副作用はドライマウス、健忘
バクロフェン:吐き気、鎮静
クロナゼパム(リボトリール):抑鬱、依存性、鎮静作用
レボドーパ(10%に有効)→抗コリン剤アーテン(30-40%に有効)→バクロフェン(20%に有効)→クロナゼパム(15-20%に有効)

20、ボトックスの作用機序
コリン作動性神経末端上の受容体部位に結合する。
毒素はシナプスのリサイクリング過程によって細胞内に取り込まれる。
神経末端の小胞からのアセチルコリン放出抑制の結果で、筋麻痺が起きる。

21、ボトックスの麻痺効果
麻痺効果は投薬量に依存。注射5-7日後に効力のピークを持つ。
注入2.5日後に症状の軽減、持続期間は平均3か月。
患者により毎月注入を要すが、患者の5%以上は6か月間以上有効。
注入前の筋力に戻るには6-9か月かかる。
抗毒素抗体の発生や、筋の進行性萎縮が用量作用曲線に変化を起こすという者がいるが、それを支持する研究はない。

22、ボトックス注射の合併症
眼瞼下垂(7-11%)、角膜露出(5-12%)、ドライアイ(7.5%)、眼瞼内反、流涙、羞明(2.5%)、複視(<1%)、皮下出血。 眼瞼下垂は、挙筋への毒素拡散による。 4回以上の治療患者では眼瞼下垂の発生率は、患者の50%に及ぶが、慣れた術者では少ない。 内側・外側の瞼板前部へのボトックス注入が有効。 上瞼中央の回避は、眼瞼下垂の危険を減らす。 23、BOTOXの投与での注意点 綿密な計画はBOTOXの投与での信頼できる結果を保証する。 ボトックスは生食で溶解。泡立を防ぐためガラス瓶へゆっくり導入。 溶解した液は数時間内に使用するか、あるいは冷所保存。 24、ボトックス注射の実際 初回:4-6か所に分割、 1眼あたり25単位以下が推奨される。 以後:初回量に対する反応により調節。各部位に2.5-10単位。 小体積での使用が拡散を防ぐ。 眼輪筋、皺眉筋、鼻根筋に皮下注射。 1-5か月(平均3か月)毎に繰返しを要す。 25、外科的治療 BOTOXで十分な効果が得られぬ時。 外科治療の主要なものは、眼輪筋切除。 顔面神経切断は、現在ほとんど行われない。 ボトックス無効例の50%は、開瞼失行症を合併した眼瞼痙攣。 瞼板前部眼輪筋完全除去を加えた前頭筋の釣り上げ術が視覚障害を持った開瞼失行には考慮される。 26、眼輪筋切除 Myectomy 筋切除は、隔壁前部および瞼板前部を含む上か下の眼輪筋の外科的な切除を含む。 拡大筋切除は、鼻根筋と皺眉筋の除去を含む。 リンパ浮腫を嫌い、上下の眼輪筋切除は避ける。 27、米国で市販の各種のボツリヌス毒素 OnabotulinumtoxinA(ボトックス):頸部ジストニア、斜視、眼瞼痙攣 AbobotulinumtoxinA(Dysport):頸部ジストニア、中から重度の眉間皺 IncobotulinumtoxinA(Xeomin):頸部ジストニア、眼瞼痙攣 Rimabotulinummtoxin B(Myobloc):頸部ジストニア 28、最後に2014年1月24日の最新情報です 薬剤性眼瞼痙攣患者の脳糖代謝 掲載論文 Suzuki Y, Kiyosawa M, Wakakura M, Mochizuki M, Ishiwata K, Oda K, Ishii K. Glucose hypermetabolism in the thalamus of patients with drug-induced blepharospasm. Neuroscience. 2014; 263: 240-249. 29、薬剤性眼瞼痙攣 ベンゾジアゼピン系(リボトリール等)やチエノジアゼピン系(エチゾラム等)薬の長期投与中に眼瞼痙攣を発症することがある。 臨床症状は、原発性眼瞼痙攣に類似している。 原因薬の中止により、眼瞼痙攣の症状が改善することがある。 30、ベンゾジアゼピン系薬とチエノジアゼピン系薬 ベンゾジアゼピン系薬(リボトリール など)は、抗不安薬、睡眠導入剤、抗てんかん薬などとして使用されている。 脳内の中枢性ベンゾジアゼピン受容体に結合し、神経細胞の興奮を抑制する。 チエノジアゼピン系薬(デパス など)は、ベンゾジアゼピン系薬の類似薬である。 31、対象 薬剤性眼瞼痙攣群 21例  (男性5例、女性16例、平均年齢53.1歳) 原発性眼瞼痙攣群 21例  (男性5例、女性16例、平均年齢53.0歳) 健常群 63例  (男性15例、女性48例、平均年齢53.6歳) 32、方法 FDG-PETを用いて脳の安静時糖代謝を測定し、患者群の糖代謝を健常群と比較した。 薬剤性眼瞼痙攣患者においては、ベンゾジアゼピン系薬を2週間以上中止し、 薬の影響がない状態でPETを撮影した。 ベンゾジアゼピン系薬を中止可能な症例については、休薬を継続し、経過を観察した。 33、薬剤性眼瞼痙攣群と正常群との比較、原発性眼瞼痙攣群と正常群との比較 34、ベンゾジアゼピン系薬中止と 眼瞼痙攣の症状改善 ベンゾジアゼピン系薬の中止継続または減量成功   11例/21例   10例は、不眠症などのため中止継続できず 休薬(減量)による眼瞼痙攣改善例:6例   平均強度スコア:2.83から1.67へ改善   平均頻度スコア:2.83から1.83へ改善 35、大脳皮質-基底核-視床ループ スクリーンショット 36、この論文のまとめ 長期間にわたるベンゾジアゼピン系薬やチエノジアゼピン系薬の使用により、薬剤性眼瞼痙攣を発症することがある。 薬剤性眼瞼痙攣患者では、原発性眼瞼痙攣患者と同様に、視床の糖代謝の亢進がみられた。 薬剤性眼瞼痙攣患者においては、原因薬の中止または減量により、眼瞼痙攣の症状改善が得られる可能性がある。 参考資料 1)Medscape:Benign Essential Blepharospasm Treatment & Management  http://emedicine.medscape.com/article/1212176-overview 2)Update on blepharospasm Report from the BEBRF International Workshop Mark Hallett, MD他 Neurology. 2008 October 14; 71(16): 1275–1282. 3)Benign Essential Blepharospasm Research Foundation (BEBRF) http://www.blepharospasm.org/blepharospasm.html 4)眼瞼痙攣治療に用いられる経口薬剤 Ruth大学、Cynthia Comella 5)Dystonia Medical research foundation http://www.dystonia-foundation.org/pages/blepharospasm/43.phpGlucose hypermetabolism in the thalamus of patients with drug-induced blepharospasm. Neuroscience. 2014; 263: 240-249. 6)掲載論文Suzuki Y, Kiyosawa M, Wakakura M, Mochizuki M, Ishiwata K, Oda K, Ishii K. Glucose hypermetabolism in the thalamus of patients with drug-induced blepharospasm. Neuroscience. 2014; 263: 240-249.

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