最近いただいた患者の気持ちの質問箱への質問と答えに手を加えてまとめなおしてみました。私は現在、某市の医師会で「眼振の講義」をすることを依頼されており、来週の本番に向けて当院の70人ほどの先天眼振の患者さんのカルテを調べています。
Q:息子 (質問者:匿名さん)
中学二年生の息子が生後3ヶ月頃に先天性眼振と診断されこども病院へ通ってましたが小学六年生の時に、裸眼での視力が両方で0.6程あるから何処かかかりつけの病院へ通ってもらって大丈夫、と言われました。
その後メガネを作りましたが眼鏡をかけても裸眼でもさほど視力は変わらず…日常生活には支障がないと思っていました。 先日、親子面談で比例グラフを書く時にゼロの所へ点が打てないのと、バスケ部に所属してますが焦点が合わずボールが上手く取れていない、と言われました。
すぐに市立病院へ行き、先天性眼振と斜視が両方あると診断されました。こども病院では言われませんでしたが治療方法が特殊だそうで…またこども病院へ行っても同じ対応だったらと不安でご相談しました。
両目でメガネかけて0.7以上ないと免許が取れないそうなのでそれも心配です。
清澤のお答え:
ダロフ博士が記載した先天眼振の特徴は11項目ありますが、電気眼振図の分析が必要な3項目を外して、その最初の8項目について先天眼振の各特徴を示す患者さんお割合を数えてみました。その各項目の比率は
1.両眼性で共同性 75.36%
2.両眼とも同じ振幅 72.46%
3.振動視はない 62.32%
4.睡眠中は消失 24.64%
5.頭の振動を伴う 34.78%
6.軸輳により減弱 55.07%
7.固視努力により増強 55.2%
8.潜伏眼振に重畳 43.48%
でした。
確かに運転免許は両眼で見て0,7以上が必要ですから、眼鏡その他の条件を十分に整えて視力を測定してもらってください。先天眼振では必ずしも視力が1,0は出せません。当医院の患者さんで視力がはかれた患者さんの左右の矯正視力の平均は1.0以上22%、0.7-1.0未満36%、0.5-0.7未満23%、0.3-0.5未満が12%、0.1-1.3未満5%、それ以下は2%でした。
この結果を見ると、約6割の患者さんだけが免許を取れることになります。というわけで、視力により患者さんの求めるものが患者ごとに違う点は重要です。ですから、医師は視力、両眼視、整容などまで考えつつ対応する必要があります。
視力不良については、個別の理由があるはずですので、子供病院など先天眼振を多く見ている医師にご相談下さい。
また、免許更新の際には片方の目を隠すと眼振が出て視力が下がる(潜伏眼振と呼ぶ)患者さんもいますので、両眼解放での視力を重視してもらってください。
斜視が明らかならば治す場合もあるでしょう。視力向上を目指して外眼筋移動(斜視)手術をする場合もあります。斜視が残っていても手術の対象にならない場合もあるでしょう。私の医院では斜視手術までは行っていませんので、これを考える場合には紹介を出すことになります。これも患者さんの主治医の先生にお聴きください。
私が先天眼振か?と思うとき併せて行っておくべきと考えている検査には、視力、視野、眼底などの眼科独自の検査のほかに
1、耳鼻科検査とENG(電気眼振図検査)—詳細な記録と分析;依頼
2、MRI(依頼)
3、院内での神経内科的評価(脳の病変を除外)
4、場合によって球面、乱視、プリズムの眼鏡処方
5、症例によってはガバペン処方
6、症例によっては手術目的での他院の紹介
などがあります。
くれぐれもお大事に。
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