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2013年11月26日

4938■医療方法の特許性について

医療に関する方法には日本では通常は特許が成立しません。ただし新しい方法で水晶体を破砕する装置やレーシックのレーザー光線発生装置などの機械等についてはその限りではありません。そのどこまでに特許権を認めるのか?ということも現在進行中のTPP交渉の争点になっているのだそうです。

無題(東京医科歯科大学研究棟の壁面に彫られたヒポクラテスの誓い、東京医科歯科病院のロビーにも掲示されています。)
そういえば我々医師が大事に考えている「ヒポクラテスの誓い」にもそれに関係しそうな一節があります。

いわく:
医の神アポロン、アスクレーピオス、ヒギエイア、パナケイア、及び全ての神々よ。私自身の能力と判断に従って、この誓約を守ることを誓う。

この医術を教えてくれた師を実の親のように敬い、自らの財産を分け与えて、必要ある時には助ける。
師の子孫を自身の兄弟のように見て、彼らが学ばんとすれば報酬なしにこの術を教える。(これは、医学部の学費を無料にするという意味ではありません)
著作や講義その他あらゆる方法で、医術の知識を師や自らの息子、また、医の規則に則って誓約で結ばれている弟子達に分かち与え、それ以外の誰にも与えない。(お金儲けの手段と考える輩にくみしないということ。)
自身の能力と判断に従って、患者に利すると思う治療法を選択し、害と知る治療法を決して選択しない。(以下省略:つまり医療に関するノーハウは医師の間で共有しましょうねという暗黙の了解があるのだと思われます。私もそのようにありたいと思っています。)

さて、今日は医療方法の特許性についてという項目の記事を引用してみましょう。
「TPPが特許に与える影響~特に医療・医薬品を中心に」という弁護士 諏訪公一さん(骨董通り法律事務所 for the Arts)のコラムの一部を引用してみます。
ーーー引用開始ーーーーー
■医療方法の特許性について

知財要求項目では、人間または動物の手術方法、治療方法、診断方法に関する発明に、特許性を認めなければならないとしております(知財要求項目8. 2条(b))。

現在、日本の特許法の審査基準においては、人間が対象に含まれないことが明らかであれば、動物の手術方法・治療方法・診断方法については、特許の対象となるとされております。しかしながら、人体の存在を必須の要件とするもの、具体的には、人間を手術する方法、人間を治療する方法、人間を診断する方法に関する発明は、「産業上の利用可能性」(特許法29条1項柱書)がないとして、特許を受けることができません(特許庁審査基準第Ⅱ部1. 2. 1)。ただし、医療機器、医薬それ自体、医療材料の製造・処理方法(細胞の調製、加工による製品・製剤化)、医療機器の作動方法は、特許の対象になります。

なお、諸外国においては、アメリカは手術方法、治療方法、診断方法ともに特許の対象となるとし、欧州においては、手術方法、治療方法、診断方法の一部は特許の対象になりません(諸外国の法制については、平成20年11月25日付け特許庁「我が国と各国の特許制度比較~医療分野~」(PDFはこちら)(知的財産戦略本部 先端医療特許検討委員会資料))。

日本で医療方法の特許性が認められていなかったのは、従来、医学研究を営利目的の開発競争に巻き込ませるべきではないという政策的理由、人の生存や尊厳にかかわる人道上の理由などにより、特許による独占を認めるべきではないと考えられているためです。特に、医療方法に特許を認めると、緊急の患者が病院に運び込まれてきたときに、治療を行う医師が特許権者に許諾を得なければ命が助からないという状況が発生しうるのではないかと言われています。

この懸念への対処としては、医療方法に特許を認めた上で、医師の行為について例外を設けるという方法もあります。たとえば、医療方法に特許が認められているアメリカにおいても、医師が侵害に該当する医療行為を行った場合には、その医師や医療行為に関与する関連医療機関には差止請求や損害賠償請求ができないと規定されております(米国特許法287条c )。

なお、ここでいう「医療行為」には、装置、製造物または組成物に関する特許の使用、組成物の使用に関する特許の実施、バイオテクノロジー特許の実施が含まれませんので、全ての医師等による医療行為が除外されるわけではなく、また、医師等が行う医療行為でない場合には特許権者の許諾が必要となります。

医療方法に関する特許を認めるかどうかにつき、特許を認めることによるインセンティブによる開発の促進、大学の医療技術に対する投資回収、重複研究の回避などを考えると、医療方法に特許を与えることにも一理あるように思います。また、現状の文言上は、「産業上利用することができる」とのみ規定されており、人体を必須の構成要素としない発明、たとえばiPS細胞などの研究に関する発明は特許となりうるにもかかわらず、人体に関する部分だけを殊更「産業上の利用可能性がない」として、特許として認めないことは一貫していないと考えられます。一方で、医療行為に対する萎縮効果の他、欧州は医療方法特許がないにもかかわらず国際競争力があること、医師や研究者のインセンティブは特許制度を使わずとも守れるものではないか、医療費の高騰の可能性などの懸念の声があるのも確かです。なお、2009年5月29日付け知的財産戦略本部 知的財産による競争力強化専門調査会 先端医療特許検討委員会報告書「先端医療分野における特許保護の在り方について」においても、医療方法に特許性がないという基本方針は維持されています。

いずれにせよ、仮に、知財要求項目のとおり医療方法に特許を認める方向となった場合においても、医療現場に混乱を与えるようなものではあってはなりません。医療方法に特許性を認めるとしても、権利制限規定を設けると共に、現場にいる医療関係者の実態を把握し、その権利制限規定が実際の医療にあたって問題が発生しないよう適切な内容となっているかを検討することが必要です。
ーーー引用中止ーーーー
清澤の追加コメント:先進国(米国)には新薬が多く、開発途上国にはそのようなものはほとんどありません。米国の新薬特許は8年、開発途上国の新薬特許は5年。これが長くなれば、米国の利益は増すので、新薬の保護期間を10年にしたいというのが米国の主張であるようです。自分が考え出した新しい治療法を後輩に教えるかどうか?などというレベルの話ではない様です。

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