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2013年8月13日

4644 HHhHプラハ、1942年、(Himmlers Hirn heiszt Heydrichヒムラーの頭脳はハイドリッヒと呼ばれる)ローラン・ビネ著

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4620 HHhHプラハ、1942年、(Himmlers Hirn heiszt Heydrichヒムラーの頭脳はハイドリッヒと呼ばれる)ローラン・ビネ著

この休みを2日使って読み終えました。今日の記事は私の読後感です。
ズデーデン地方、チェコ、スロバキア、はドイツ人、チェコ人、スロバキア人が混住しそれぞれが主導権を主張していたところにナチスドイツが強く介入し、また第二次大戦後にはソ連の働きで、その地域に住んでいたドイツ人250万人をドイツ領に向けて追放したという経緯もあって、今でも多くの国際問題を持っているようです。下の図がそのきっかけとなったズデーデン地方、チェコの西側でドイツ国境に接する地域であり、1938年ころにはドイツ系住民が多かったそうです。

ズデーデン地方(⇒前の記事はこちら

252章:この本の中で暗殺されたのはナチスで計画的にユダヤ人を抹殺するという計画を着実に推進したラインハルト・ハイドリッヒです。チェコにおける彼の死後、ベラジェツ、ツボビル、トレブリンカの各収容所の開設とともに彼の暗殺後1942年7月から始まったポーランドの全ユダヤ人絶滅作戦で、200万人以上のユダヤ人と5万人近くのロマが命を落としました。この作戦の暗号名はナチスの彼に対する高い評価を裏付けるように「ラインハルト作戦」という、ということでした。

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160章:映画conspiracyになったヴァンゼー会議(1942年1月20日)では、ドイツが支配した地域で当時各国の国籍を持っていたユダヤ人は1100万人であり、ラインハルト・ハイドリッヒを中心にその処分の方針が確認されたのだそうです。

26章:ハイドリッヒが結婚詐欺のようなことでドイツ海軍を不名誉除隊(1931年)になった過去をもっていたとか、それをばねにしてナチスの突撃隊に入ってからは自分の気に入らぬ人々を罠にかけ次々に蹴落としていったなどという話も出てきます。ナチスと突撃隊というところは、手を汚せば、理性よりも蛮勇で生きてゆけるところだったようです。しかし彼は本当にユダヤ人を憎んでいたのか?それとも自分と同じ人間とは思わなかったとしても、嫌ってはおらずむしろ自分の出世の材料としてだけ冷たくみていたのか?はよく分かりません。

チェコスロバキアに関する歴史では、最初にナチスがオーストリアを無理やり併合(1939年)して次にチェコスロバキアに恫喝をかけたときに、イギリス、フランス両国は、自らの利益を考えてズデーデン地方のドイツへの割譲をチェコスロバキアに迫ります(ミュンヘン会談)。チャーチルは当時のチェンバレン政府を批判して、「戦争か不名誉か、そのどちらかを選ばなければならない羽目になって、諸君は不名誉を選んだ。そして得るものは戦争なのだ。」と国会で述べたそうです。

「鐘が鳴る、鐘が鳴る、裏切りの鐘が鳴る
その鐘を鳴らしたのは誰の手か?
美し国フランスよ、気高き白亜のブリテンよ、
どちらも我々の愛した国なのに」
(フランチシェク・ハラス)(1901-49チェコの詩人)
それをチェコスロバキアの人々は、こう歌いました。

この本はフランス語で書かれているが、訳者のあとがきによれば、その翻訳書は皆「HHhH」という原題をそのまま使っているとのことです。初めは何の事かと思う暗号のような題ですが、少し納得しました。

このノンフィクションの主役はヨゼフ・ガブチーク(スロバキア出身)とヤン・クビシュ(チェコ出身)という二人の兵士であり、最後には隠れ家としていた教会を襲撃され、そこで彼らは命を落とすのですけれど、私には密告者となった兵士な話が耳に残りました。彼らを匿って命を落とした多くの人々への追悼としてこの作品をこの著者が書いているのもよく感じられました。

ーーー前回の記事ですーー
imagesCA5X7HOPHHhHプラハ、1942年、(Himmlers Hirn heiszt Heydrichヒムラーの頭脳はハイドリッヒと呼ばれる)ローラン・ビネ著:ナチによるユダヤ人大虐殺の首謀者であったラインハルト・ハイドリッヒ。ヒムラーの右腕だった彼は金髪の野獣と恐れられた。その暗殺計画はロンドンに亡命したチェコ政府が送り込んだ2人の青年パラシュート部隊員によって決行された。ナチとはいったい何だったのか?::終戦記念日に向けて、この本を読むことで勉強を始めました。

ーーー本の紹介の引用ですーーー
ローラン・ビネ『HHhH ――プラハ、1942年』高橋啓 訳[2013年6月]

ゴンクール賞・最優秀新人賞受賞
リーヴル・ド・ポッシュ読者大賞受賞

HHhH ――プラハ、1942年

書籍の詳細を見る
 昨年から、二度にわたって、お知らせしてきたローラン・ビネの『HHhH ――プラハ、1942年』が、今月発売となりました。
 HHhH は「エイチ・エイチ・エイチ・エイチ」とお読みください。フランスの作品ですから、本来は「アッシュ・アッシュ・アッシュ・アッシュ」なのでしょうけれど、そもそも、このHHhH はドイツ語の Himmlers Hirn heißt Heydrich の略なので、別にフランス語読みにこだわる必要はないのです。というわけで、読みやすいように英語読みとしました。
 ちなみに、本書の英訳版は、昨年英米で大評判となり、「ニューヨーカー」「ガーディアン」「タイムズ」等々で絶賛され、英米で紹介された現代フランス文学としては破格の評価を受けました。

 1942年にプラハで何が起きたのか? ラインハルト・ハイドリヒ、金髪の野獣、プラハの虐殺者、第三帝国で最も危険な男……。
『謀議』という映画(2001年、フランク・ピアソン監督)で、ユダヤ人問題の「最終解決」をヴァンゼー会議でたんたんと決めていくハイドリヒ(ケネス・ブラナー)とナチの重鎮たち。実に恐るべき映画だったことを思い出します。
 このハイドリヒ暗殺の命を帯びてプラハに送り込まれた青年ふたりの名は、ヨゼフ・ガブチークとヤン・クビシュ。ふたりは、プラハの協力者たちの家にひそみ、暗殺の機会を狙う。
 ローラン・ビネは、この史実を小説に、文学に昇華させることに夢中になります。登場人物はすべて実在の人々。出来事は歴史的事実。しかし、人々は、どのように生き、どのように語り合い、どのように愛し合い、どのように憎み合い、どのように死んでいったのか? 
 見てきたように書いていいのか? 自分の耳で聞いたかのように語らせていいのか? ビネは、小説を書くとはどういうことなのか悩みつつ書き続けました。
 時空の壁は溶け去り、著者はふたりの青年と同じ時を生き始めます。 
 彼らとともに日々を過ごし、息をひそめ、街角でハイドリヒの乗った車を待つビネ。
 待ち伏せ、銃撃の実行、思いもよらぬ展開、ハイドリヒの死、ナチの信じがたい報復、そして恐るべきクライマックス……。
 マリオ・バルガス・リョサはゴンクール賞について語り、ゴンクール賞受賞作など、どれもみなすぐに忘れてしまうようなものばかりだが、このビネの作品(ゴンクール賞・最優秀新人賞受賞作)は違う、「私は生涯この作品を忘れることはないだろう」と述べています。
 ナチとはいかなるものだったのか? ハイドリヒとは何者だったのか? そして小説とは何なのか? と問いかける見事な作品です。印象的な装丁は Reindeer Design が手掛けて下さいました。

 この暗殺計画の実行について描いた映画が『暁の七人』(1975年、ルイス・ギルバート監督)ですが、DVDの国内版は現在、手に入りません。残念です。苦しくつらい作品ではあるのですが……。

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