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2013年8月10日

4635 今回始まる「視神経炎の疾患感受性遺伝子検索」の研究を紹介いたします。

 多くの病気は、環境要因(後天的因子)と遺伝的要因 (先天的因子)が組み合わさって起こります。そこに「疾患感受性遺伝子」と言う言葉があって、その意味はその病気になりやすい「体質」を決めている遺伝子と言うことです。

次に、一遺伝子多型(SNP、スニップ)と言うものもあります。このSNP(スニップ)とはSingle nucleotide polymorphism(一遺伝子多型)の略です。遺伝子のバリエーションの1つで、一塩基が普通とは違うように置き換わったものです。このSNPは、1000塩基に1つ程度程もあるそうです。

疾患の感受性遺伝子同定の戦略には次の2つがあります。

①その第一番目は、従来行われてきた方法で、候補遺伝子アプローチと言います。既存の知識・論理に基づき、怪しい遺伝子を狙って患者群と健常人群で比較する方法です。

②2番目の新しい方法は(ゲノムワイド)関連解析と言うものです。これは病気の人と病気でない人からなるべく多くの遺伝子サンプルを頂き、どこが違うかを調べる方法です。

そこに、SNPによるゲノムワイド(全ゲノム)遺伝子解析と言う方法が登場します。さきに説明した様に、SNPはゲノム上に多数、密に存在(300~1000万個)しています。SNP情報は1塩基の変化なので、その判定が容易で、結果を信号化(0,1)し易く、 DNAマイクロアレイを用いた検査のオートメーション化が可能です。この様に、患者に多く、健常人には少ないSNP変異を探すことで、疾患感受性領域をかなり狭い範囲まで絞り込めます。
(清澤注:しかし、研究は大規模になり、各ステップにも大きな研究費が必要ですからおいそれとはその様な研究は開始出来ません。)

たとえば、「正常眼圧緑内障の疾患感受性遺伝子の同定」と言うことに、この研究を主導している蕪城先生はすでに成功しています。その遺伝子はCDKN2B(cyclin-dependent kinase inhibitor 2B)で、細胞増殖の周期を制御する遺伝子の1つでした。これはTGF-βを強く誘導する遺伝子として知られていました。緑内障の他、子宮内膜症、虚血性心疾患、子宮がん、食道がんなどに関連していたそうです。その文献はTakamoto M, Kaburaki T, et al. PLoS One. 2012;7(7):e40107です。

さて、視神経炎は視神経に炎症を起こし、視力が低下する疾患です。
その原因には: 特発性(多い)、感染性(ウイルス、細菌など)、多発性硬化症(multiple sclerosis: MS)、視神経脊髄炎(Neuromyelitis Optica: NMO)、自己免疫性(抗SS-A抗体・抗SS-B抗体・抗甲状腺抗体など自己抗体陽性例)、そして全身疾患(サルコイド、SLE、シェーグレン、潰瘍性大腸炎など)なども含まれています。

鑑別すべき疾患には虚血性視神経症(ION)、圧迫性視神経症(腫瘍、副鼻腔炎)、外傷性視神経症、甲状腺眼症、中毒性視神経症(シンナー、有機リン、メチルアルコールなど)、栄養失調性視神経症(ビタミンB1,B12欠乏)、遺伝性視神経症(Leber遺伝性視神経症)、そして腫瘍関連視神経症(Paraneoplastic optic neuropathy )などが含まれています。

この視神経炎の特徴は、1)20~40歳に多く、患者の女性が70%です。10万人に1例/年。2)通常は片眼性(70%)です。3)急激な視力低下(60%は1~2週間で0.1未満になります。)、4)眼球運動痛を示し。1~2ヵ月で視力回復(70%)します。中心暗点が多く、様々な視野欠損パターンを取り得ます。

ここからが、今回始めようという「視神経炎の疾患感受性遺伝子研究」の概要です。
 この様なアプローチでの視神経炎の研究は従来はほとんど行われていませんが、特殊型(多発性硬化症、視神経髄膜炎、Leber病)については報告が幾つかあります。
 その結果で、多発性硬化症は: HLA-DRB1*15, TNFRSF1A, IL2RA, IL7RA, STAT3
視神経髄膜炎は: CYP7A1 promotor (Kim HJ, Neurobiol Dis 2010)
Leber病では:ミトコンドリアDNA 11778番点変異などがわかっています。

今回の研究の目的は、視神経炎になりやすい遺伝子的背景(疾患感受性遺伝子)を明らかにすることで、視神経炎の診断や治療に役立てることを目標としています。
そして対象は視神経炎患者:200例 (目標です)。健常人:1300例には(東大医学部人類遺伝学教室のデータ)を用います。
研究協力期間は東京大学医学部附属病院眼科と井上眼科病院であり、そして今回清澤眼科もそれに加えていただきます。

具体的な手順としましては①視神経炎の患者さんに研究への協力を依頼し、研究説明書で説明し、同意書で同意を得ます。②省略、③患者さんのデーターシートに、患者様のこれまでの病歴、検査結果(頭部MRIなど)を治療内容とその効果について問診して記入します。そして、④専用の採血管に10ml採血し、これを次のステップにつかえるように当医院で適切に処理します。
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清澤のコメント:
なお、この研究は東京大学のヒトゲノム・遺伝子解析倫理委員会(平成25年6月1日付け)の許可を得て行うものです。

と言う訳で、この採血検査は視神経炎の患者さん本人に、その視神経疾患の正しい診断を教えるという従来の採血検査やMRI画像診断とは全く別の研究目的の採血と言うことになります。

当医院では、視神経炎に対して一刻も早く正しい診断をつけて、正しい治療を開始するという従来の診療はもちろん従来と同様に全力で行います。

 実際には、この研究では患者さんの選択基準が相当に厳しくなっており、お申し出いただいても視神経萎縮がすでに進行している場合などではせっかくお申し出いただいても、ご参加いただけない場合もあると思われます。

私たちが、このプロトコール(研究計画)に基づく採血と問診を視神経炎の患者様にお願いする際には、ご協力をいただけましたら有り難く存じます。

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