お問い合わせ

03-5677-3930初診受付

ブログ

2013年8月1日

4609 角膜反射・毛様体脊髄反射 (clinical neuroscienceの記事です)

4609 角膜反射・毛様体脊髄反射 (clinical neuroscienceの記事です)
1281683673_p(図は6号、掲載誌は8号です)
11、角膜反射・毛様体脊髄反射
鈴木幸久(三島社会保険病院眼科)、清澤源弘(清澤眼科医院)

(ユーチューブの角膜反射:本文とは別です)

角膜反射(corneal reflex)
角膜表面を刺激することにより瞬目を誘発する反射である。検者は、指標を示すなどして被検者の視線をそらし、なるべく被検者の視界に入らないようにして、綿棒や脱脂綿などの先で片眼の角膜表面をこする。正常では、両眼が迅速に閉じる。刺激を加えてから瞬目するまでの時間は、刺激側で平均52 msec、反対側で平均57 msecと報告されている1)。角膜反射の求心路は三叉神経、遠心路は顔面神経であり、本反射の中枢は橋に存在する。角膜表面の知覚は三叉神経第1枝(眼神経)が担っており、眼神経は三叉神経節で第2枝(上顎神経)、第3枝(上顎神経)と合流する。その後、角膜知覚などの痛覚を伝達する神経は三叉神経脊髄路核へ入る。三叉神経脊髄路核は橋から上部頸髄に及ぶ縦に長い核である2)。橋に存在する顔面神経核は三叉神経脊髄路核から求心性線維を受けており、顔面神経支配である眼輪筋が収縮し閉瞼が起こる。この反射経路を簡略化すると、角膜刺激→三叉神経第1枝→三叉神経脊髄路核→顔面神経核→顔面神経→眼輪筋収縮となる。
この経路のいずれかの部位に原因があれば角膜反射は減弱ないし消失する。角膜反射減弱・消失をきたす疾患または状態を表1に示す。求心路障害の原因として考えられるものは三叉神経麻痺である。三叉神経麻痺では、麻痺側の角膜を刺激した場合、両側性に閉瞼が消失するが、健常側の角膜を刺激した場合には正常と同様の反応がみられる。糖尿病では角膜知覚が両側性に低下するため、左右どちらの角膜を刺激しても反応の減弱がみられる。三叉神経節で3枝が合流したあと、三叉神経は脊髄を下降し三叉神経脊髄路核へ入るが、小脳橋角部腫瘍では腫瘍が三叉神経を圧迫することがあるため、本反射が減弱することがある。角膜反射は、三叉神経脊髄路核と橋に存在する顔面神経核が反射の中枢であるため、脳幹の障害を調べる場合に有用である。無意識下でも角膜反射が検出されれば脳死状態は否定でき、本反射が消失していることが脳死判定基準のひとつである。遠心路障害の原因となるものは、顔面神経麻痺である。本態性顔面神経麻痺では、顔面神経麻痺による閉瞼障害が起こるため、左右どちらの角膜を刺激しても麻痺側の反応のみ消失する。顔面神経は頭蓋内において内耳道を走行しているため、聴神経腫瘍では顔面神経圧迫により顔面神経麻痺が起こり、患側の角膜反射が抑制されることがある。Guillan-Barreギラン・バレー症候群では、両側性に顔面神経麻痺が起こることがあり、角膜反射は両側性に抑制される。また、大脳半球の新鮮な障害においても反対側の角膜反射が低下ないし消失することがある。

毛様体脊髄反射(ciliospinal reflex)
痛覚刺激に対して瞳孔が散大する反射である。正常例では、顔面や頸部付近をつねったり針で疼痛刺激を加えたりすると、両側の瞳孔散大が起こる。正常の瞳孔は左右同大で、通常明所での直径は3‐4 mmである3)。この反射による散瞳は1-2mm程度であり、明所では反射が出にくいが、多少遮光すると観察しやすい。毛様体脊髄反射の求心路は顔面を刺激した場合は三叉神経、頸部を刺激した場合は脊髄感覚神経、遠心路は交感神経であり、反射の中枢は脊髄に存在する。皮膚で受容した痛覚刺激は、三叉神経により三叉神経脊髄路核、または脊髄感覚神経により脊髄神経節へ伝えられ、続いて、第8頸髄から第2胸髄の側角に局在する交感神経ニューロン(毛様体脊髄中枢)へ入る。虹彩は、一般的に明所では縮瞳し、暗所では散大する。また、虹彩は瞳孔散大筋を支配する交感神経と瞳孔括約筋を支配する副交感神経との2つの神経に拮抗的に支配されており、痛み刺激や精神的興奮などによっても瞳孔の散大が起こる。毛様体脊髄反射においても、毛様体脊髄中枢から交感神経を介して瞳孔散大が起こる。この反射経路を簡略化すると、皮膚痛覚刺激→脊髄感覚神経(または、三叉神経→三叉神経脊髄路核)→毛様体脊髄中枢→交感神経→瞳孔散大筋収縮となる。
毛様体脊髄反射減弱・消失をきたす疾患または状態を表2に示す。求心路障害の原因となりうるものとして、糖尿病性神経症やヘルペス感染症などにより皮膚の痛覚受容器または脊髄感覚神経が障害された場合があげられる。この場合、痛覚が鈍麻した皮膚を刺激しても、両眼とも散瞳は起こらないが、健常皮膚を刺激した場合には両眼とも散瞳がみられる。脊髄に存在する毛様体脊髄中枢が本反射の中枢であるため、角膜反射と同様に、脊髄損傷、昏睡、脳幹障害、脳死状態では、反射は消失するとされる。また、虹彩の動きが障害された状態では、本反射は判定できない。虹彩炎により水晶体と虹彩とが癒着を起こしている場合やピロカルピン点眼による縮瞳状態、アトロピン点眼による散瞳状態などがこれに該当する。
毛様体脊髄反射も角膜反射と同様に脳死判定基準のひとつとして採用されているが、脳死状態であると推測される症例においても本反射が認められたとする報告が存在する。池田らは、右被殼出血による脳ヘルニアの症例、および転落により頸髄損傷、蘇生後脳症を伴う重症頭部外傷の症例について報告している4)。2症例とも臨床経過、頭部CT所見により脳死状態と推測されたが、毛様体脊髄反射は陽性であった。毛様体脊髄反射において顔面を刺激した場合には、三叉神経を介して三叉神経脊髄路核へ刺激が伝達されるため、途中脳幹を経由することになり、脳死状態では反応は陰性になる。しかし、頸部を刺激した場合には、脊髄感覚神経を介して脳幹を経由せずに上部胸髄に存在する毛様体脊髄中枢へ伝達されるため、脳死状態であっても脊髄が生存していれば反応は陽性となる。このように、顔面への刺激とそれ以下の部位に対する刺激とでは本反射の経路が異なることが考えられるため、検査方法によっては脳幹機能の評価に適切でない可能性がある。

文献
1) Magladery JW, Teasdall RD. Corneal reflexes. An electromyographic study in man. Arch Neurol. 1961;5:269-74.
2) 中野 隆. マスターの要点 機能解剖学 知覚伝導路の機能解剖. 理学療法 2004;21:760-766.
3) 堀内正浩, 高橋 洋一. 反射と臨床. 主な反射の検査法とその解釈. 角膜反射,毛様体脊髄反射. Clin Neurosci 2004;22巻:931-932.
4) 池田尚人, 田中幸太郎, 安部博昭. 脳死判定におけるciliospinal reflexの意味についての一考察. 脳死・脳蘇生研究会誌 1999;11巻:48-50.

(以下の表部分は工事中)
表1.角膜反射減弱・消失をきたす疾患または状態
障害部位

両側性の反射減弱・消失

   求心路:三叉神経麻痺、糖尿病性神経症、小脳橋角部腫瘍、ギラン・バレー症候群
   中枢: 昏睡、脳幹障害、脳死状態
   遠心路:ギラン・バレー症候群
片側性の反射減弱・消失
   求心路:
   中枢:
   遠心路:本態性顔面神経麻痺、聴神経腫瘍、顔面外傷

表2.毛様体脊髄反射減弱・消失をきたす疾患または状態

障害部位
両側性の反射減弱・消失
   求心路:糖尿病性神経症、ヘルペス感染症、ギラン・バレー症候群
   中枢:脊髄損傷、(昏睡、脳幹障害、脳死状態)
   遠心路:ギラン・バレー症候群、薬物中毒
片側性の反射減弱・消失
   遠心路:虹彩炎、ピロカルピン点眼、アトロピン点眼

Categorised in: 未分類