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2013年6月21日

4489 山本覚馬とポンぺの話がなぜか「iPS細胞で医療の国際貢献を」に化けています

新聞記事では山本覚馬とポンぺの話がなぜか「iPS細胞で医療の国際貢献を」に化けています
Kakuma_Yamamoto_(1828-1892)
1)山本覚馬
江戸時代末期の会津藩士、砲術家。明治維新後は地方官・政治家として初期の京都府政を指導した。砲兵隊を率いて参戦した禁門の変において勲功を挙げ、公用人に任ぜられる。不幸にも眼病を患い、ほとんど失明同然の状態になる。失明については、禁門の変での破片による損傷、また持病の白内障の悪化等が原因とされている。

Pompe_students
2)ヨハネス・ポンペ・ファン・メーデルフォールト(Johannes Lijdius Catharinus Pompe van Meerdervoort, (1829年 – 1908年)は、オランダ海軍の軍医。幕末に来日し、オランダ医学を伝えた。彼の長崎時代に残した言葉が、長崎大学医学部に銘板として残されているという。

医師は自らの天職をよく承知していなければならぬ。ひとたびこの職務を選んだ以上、もはや医師は自分自身のものではなく、病める人のものである。もしそれを好まぬなら、他の職業を選ぶがよい。

3)日本眼科国際医療協力会議(JICO):世界の貧困や医療システムの不備により眼科医療や診察を十分に受けられない国での眼科治療、手術を提供。⇒リンク(下の記事では「眼科」を「眼病」と誤っています。)

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iPS細胞で医療の国際貢献を
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科学部次長・佐藤良明

iPS細胞の最初の医療応用へ、網膜疾患の治療研究を進める理化学研究所などのチーム

 NHK大河ドラマ「八重の桜」は現在、会津戦争という重大な局面を迎えている。気になるのは、主人公・八重の兄、山本覚馬だ。

白内障で失明した山本覚馬

 覚馬は白そこひ(白内障)に苦しみ続けていた。カメラのレンズにあたる、目の水晶体が濁って、ものが見えにくくなる病気だ。

 覚馬は、会津藩から「長崎で診てもらえ」と指示を受ける。当時、最先端の近代西洋医学に触れることのできる唯一の土地だった。一縷いちるの望みを託してはるばる長崎を訪ねるが、蘭方医からは手遅れだと宣告される。

 病状は悪化の一途。官軍にとらえられ牢ろうにつながれているうちに、失明してしまう。

日本の医療レベルを上げたポンペ

 この時代、覚馬のように目の病気を患う日本人は多かった。

 幕末の長崎で、医学伝習所教授として近代西洋医学を伝えた、オランダ人のポンペは、1857年から5年間の滞日経験を「日本滞在見聞記」にまとめた。

 その中で、「世界のどこの国をとっても、日本ほど盲目の人の多いところはない」と書いている。「眼病の治療法をまったく知らないことにその大半の原因がある」からだ。長崎の住民の8%ほどが目の病気にかかっている、という記載もある。医療の後れは深刻だった。

 「見聞記」には、眼病が市民の平穏な生活を壊す、こんなエピソードも記されている。父親が病気で盲目になり、生活に困った娘が身売りをする。ポンペが金を肩代わりしてその娘を遊郭から救い出したという。

 日本における「近代西洋医学教育の父」だったポンペは、日本の医療レベルの底上げへ、目の治療も含め最新の医学知識・技術を門人に授けた。多くの日本人患者が「最先端医療」の恩恵を感じたことだろう。

途上国では白内障は今も深刻

 それから約150年。日本は医療水準を世界のトップレベルに引き上げた。約96万人いる白内障患者は、適切な治療を受ければ悪化を防ぐことができる。日本人の失明原因の上位には白内障は入っていない。

 ただし、十分な診療体制が整わない途上国の人たちには、白内障は今も深刻な病気だ。世界保健機関の2010年の統計では、世界の失明原因の半数は白内障が占めている。

 途上国の現状を少しでも改善するため、日本も貢献している。眼科医らで作る「日本眼病国際医療協力会議」などが、目の治療で支援を地道に続ける。こうしたグループの存在は心強い。

夢を打ち砕かれる人をひとりでも減らすために

 そしていつの日か、日本発の最先端技術「iPS細胞(人工多能性幹細胞)」が、医療の国際貢献に使われてほしいと願う。

 iPS細胞を使い、国内で最初に臨床応用をめざすのは、加齢黄斑変性という網膜の病気だ。先進国ではこの病気が失明原因の上位になっている。ほかに、網膜色素変性症や角膜の損傷など、目の病気やけがの治療でiPS研究は先行し、活発化している。

 砲術師範として新しい軍事技術を普及させたいという覚馬の願いは、眼病で打ち砕かれた。眼を患い、夢をあきらめざるえない覚馬のような人たちを一人でも多く救えないだろうか。かつて、外国の最先端技術を吸収し、医療先進国への足がかりを築いた日本が、21世紀の今、自前の最先端技術で国際貢献する。誰に頼まれるでもなく、取り組むべきことだろう。

(2013年6月21日 読売新聞)

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