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2013年5月1日

4339 眼窩静脈瘤とは:

眼窩静脈瘤について解説を加えてみましょう。
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眼窩内の(静脈性の)静脈瘤は英語ではOrbital venous varixとなります。(図はバルサルバ法で拡張させてあり、左が通常の、右は造影剤で増強された静脈瘤のCT写真です。)
眼窩静脈瘤は(OVV) 稀な血管性の奇形であって、単一または複数の静脈性の血管の塊によって形成されています。そしてそれは全身の静脈系に直接繋がっています。その患者には間歇性の複視や、息をつめた時ないしうつむいた時にみられる眼球の突出が見られます。眼窩圧が下がったときには逆説的に眼球は陥凹して、休憩時にはむしろ眼球は後方に引っ込んでみえます。
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以下の文はDr Yuranga WeerakkodyとDr Frank Gaillard et al.が書きつないだものを意訳しています。)

眼窩静脈瘤は原発性のものと2次性の物に分けられます。原発性のものにはそれが出来た原因がなくて、そのほとんどが先天性です。そしてそれは眼窩内に限局しています。一方、二次性のものでは頭蓋内の動静脈奇形や動静脈ろう、脳硬膜動静脈シャントによって増加した血流量によって二次的に形成されたもので、その血流が眼窩を経て頭蓋の外に流出することによって作られています。以後、この説明は原発性のものに関して説明します。

疫学
眼窩静脈瘤はまれな疾患です。眼窩内腫瘤の中でも1,3%以下しかありません。先天性のものだと信じられていて、出生時にはすでに存在するのですが、少年期末期や青年期の初期 (10 – 30歳)まで症状を示しません。しかし、症例はあらゆる年代において報告されています。

臨床像
患者には間歇性の複視や、息をつめた時ないしうつむいた時にみられる眼球の突出が見られます。眼窩圧が下がったときには逆説的に眼球は陥凹して、休憩時にはむしろ眼球は後方に引っ込んでみられます。

症状は合併症によって明らかになります。眼窩の静脈性静脈瘤はしばしば眼窩内に出血を起こします。あるいは、静脈瘤が急激な血栓を生じた場合には症状をきたします。そのような場合に患者は急激な球後痛を訴え、眼球突出と視力低下を訴えます。まれですが、上眼窩静脈を含む病変の場合には涙腺部分に塊状病変を示します。

合併する事柄
頭蓋内に直接に静脈瘤に連結したりしなかったりする動静脈奇形が合併することがあります。

放射線的な特徴
バルサルバ法で持って力みを加えて大きくしなくては、その診断をつけることは難しいか、ほとんど無理です。それは静脈瘤が普段は虚脱しているからです。コントラストによる増強では息んでいる時ならば静脈相で眼球突出を伴う静脈瘤の拡大が見えるかもしれません。

通常のレントゲン写真

現代の放射線医学では通常のレントゲンフィルムによる頭部や頸部の撮影にはほとんど意味がありません。しかしもし行えば静脈結石が写るかもしれません。

超音波画像
超音波画像は多くの動的な画像が得られる非侵襲的な方法なので有用です。それにはバルサルバ法や、座位とうつ伏せなど体位の変換の手法も使えます。直立していたり、休んでいるときには変化がなくて、息んでいる時には静脈流路が増加した血流で拡張して見えるかもしれません。

CT
もしその疑いがあるならば、共に、バルサルバ法を行った時と力を抜いた時とで造影剤によるコントラストCTを取るべきでしょう。通常の撮影では異常がなく、そのような負荷で大きさが変わるならば眼窩の血管性病変の中でもこの眼窩静脈瘤の診断が特に疑われます。
06a8778f88e0853748cf8dea6bb3a4_thumb(血栓症のある症例)
造影剤を使用しないで行う眼窩のスキャンでは静脈結石が写るかもしれません。造影剤はバルサルバ負荷をかけたときにこそ行われるべきです。静脈瘤は力んだ時に不整形であったり丸い形として眼窩先端部に写るでしょう。増強効果は海綿静脈洞などと同様に造影増強効果が見えるでしょう。血栓症が起きていれば、増強効果は表れないかもしれず、バルサルバ法による拡大も現れないかもしれません。

MRI

MRIもバルサルバ法の下で行われるべきでしょう、しかし画像を取るのにかかる時間はCTよりも長いかもしれません。であれば、患者さんの観ずる苦痛は多いかもしれません。

静脈血栓がないならば、T1は外眼筋に比べて低信号。 T2も外眼筋に比べて低信号。
もし静脈血栓が生じていれば、画像はもっとバラエティーの強いものとなり、T1は 高い信号の部分(MRIでの血液部分なみ)、 T2も高い信号域を含むまだら模様となるでしょう。

治療と予後
これらの症例には腫瘤効果、血栓症、出血など其々の症状に対する対症療法的な治療が行われるのみです。

もし血栓が生じていれば前方部分の静脈流は苦労なく切除することが出来ます。
しかし静脈瘤内に血栓形成のない患者であれば仰向け姿勢で静脈瘤を同定することは難しいでしょう。静脈瘤の亜全摘は再発を起こすでしょう。そして、反復する手術を繰り返す事は患者の状態ををより複雑にするでしょう。理想的には、静脈は眼窩深部に至るまで可能な限り取り除くかあるいはクリップを掛けて止血するべきです。

頸静脈から海綿静脈洞経由で静脈瘤に達する血管内からのルート、または手術で静脈瘤に直接取り掛かるいずれかのルートで、カテーテルを用いた血管内手術をすることも行えるかもしれない。ある種の糊などを注入したり、金属の微小なコイルを入れて静脈瘤を固めることが出来れば、静脈瘤の同定を容易にして、手術中の出血を減らすことにも役立つだろう。

鑑別診断(此処では省略、清澤注:このページは患者家族向けの解説のつもりで翻訳中ですから、話を広げてややこしくするこの部分はカットしました。自分の担当する症例の診断が問題である場合には原文に戻って鑑別診断もよくごらんください)

眼窩内の静脈性の成分を含む奇形を論ずる場合に、現在はそれなりの混同が見られますのでご注意ください(つまり、静脈瘤varix、リンパ管腫lymphangioma(以前に別ページで解説済みです)、静脈奇形venous malformation )。
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ーー以下は清澤の自験例の翻訳です(オフサルモロジカ誌1992年)ーーー
眼窩における自然出血3例の報告
Spontaneous Orbital Hemorrhage in Adult Females
Ophthalmologica
1992;205:149–157 Shimura M.a· Kiyosawa M.a· Aikawa H.a· Tominaga T.b· Matsumoto W.c· Tamai M.a

東北大学眼科、脳外科、放射線科
Ophthalmologica 1992;205:149–157 (DOI:10.1159/000310332)

抄録
3人の成人女性の自発的な眼窩出血の3例を報告する。患者はすべて、急激な眼窩の放散痛、嘔吐、眼球運動の制限と結膜浮腫を示した。そのうちの一人は大きな眼窩静脈瘤であって、前駆症状として間歇性の眼球突出を示していた。他の2例ではその眼窩内出血の原因は明らかには出来なかった。数週間のうちに眼窩血腫の吸収を見て、手術をしなくても回復した。40mm Hgの血圧がかかる筋紡錘内での静脈出血では、4直筋に出血時にはそれぞれ疼痛を起こすのに十分な500gを超える圧力が掛ると考えられる。この臨床的な緊急事態に対しては、初期には圧迫を加える止血法、およびその後には自発的な吸収を待つことが推奨されます。

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