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2013年2月17日

4073 「よりよき人生」:またまたパリの調理師映画です。

よりよき人生 a better life, Une vie meilleure

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レストランを開くことを夢見る孤児育ちの料理人と、9歳半になる息子を持つレバノン難民シングルマザーの物語。パリで恋に落ちたふたりは3人で出かけた湖畔で、つぶれたレストランの廃墟を見つけました。頭金もないのに繁盛する自分のレストランを夢見て、銀行をだましてまで借入金を立てこの建物を購入します。

 しかし工事費が足りないので手を抜いた防火施設の不備などを指摘され、肝心の開店が出来ません。そこで闇金融に手を出して、そこからも一挙に転落。底の浅い計画、すぐにばれる嘘、身勝手な理屈、安易に他人に借金を頼る癖。聞いていて不愉快この上なき展開です。この状況に、少しはまともな彼女は、息子を彼に託してカナダへ出稼ぎに行くのですが、間もなく音信不通になってしまいます。一方、行政は他人である男と子供を引き離そうとし、貧困に子供は万引きまで初めてしまいます。事態はますます困窮して、疑似親子での日常的な窃盗へまで突っ込んで進んでゆきます。
 主人公らのこの生き方は、「屈することなく、夢を信じ、ひたすら前向きに堂々と生きる。“運命を受け入れるな、闘え!”頼りになるのは「愛」だけ。」などと褒められる様なものだろうか?と思います。
 やがて、彼からレストランをだまし取ったチンピラマフィアを襲って旅費を作り、2人でカナダに降り立って見たら、なんと彼女は(故意ではなかったかもしれないのだが)「麻薬運びの罪」で収監されていたという展開。幸い刑務所のある町の食堂に調理師の職はえられたようでしたが、その後は氷原をスノーモビルで走る2人の姿だけを見せて、そのあとの経済状況の説明もありません。この後、労働ビザもない彼ら3人はカナダで幸せになど暮らせるのだろうか?と思わざるを得ない思いが残りました。

先の独りよがりな若いシェフの話(リンク)もそうだったですけれど、こちらのほうが状況はもっともっと厳しいです。フランスの大問題は貧困問題であると同時に、外国人移民問題。フランスで生れればフランス人として認められるのかとは思いますが、社会の中でのもともとのフランス人の子孫はどんどん減っています。

 貧しい人々のその日暮らしを「(live from hand to mouth)手から口に運ぶ」といいますが、この主人公には実にそれ以上の余裕は与えられてはいまません。日本でもワーキングプアー「働く貧民」の存在は突き詰めてゆけば同様なのかもしれませんけれど、フランスのそしてヨーロッパの比較的固定した社会制度には考えさせられてしまいます。今の日本でも、ふつうに回っている間はともかく、家族や本人が病気になったり、何かの出費があったりすると、生活費が回らなくなってしまう事は、少なくはないのでしょう。

 今より少し幸せになることを求めて…ベターライフ。さぁ、未来へのパスポートを手に入れよう!と、映画評論が言うほどのハピーエンドとは、清澤には思えませんでした。その意味でも、「リストラを進めて企業が生き残りを図る」のは当然とはいえ、「健全な雇用を一駒でも社会に提供する」のが我々経営者の大事な機能だと思います。

[2011・フランス×カナダ/パンドラ]<1時間51分>

朝日新聞の公表はこれよりはずっと好意的です。⇒リンク

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