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2013年1月13日

3969 TPP反対派“5つの誤解”とは何か:の記事です

TPP反対派“5つの誤解”とは何か――国際基督教大学客員教授 八代尚宏:という記事が出ていました。面白い視点と思いますので要点を拾ってみます。

ーー要旨ーー
TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)。安倍自民党政権は、「聖域なき関税撤廃が条件である限り反対」の旨を表明しているものの、交渉参加は進むとの見方が広がっている。

TPP参加は「農業等の産業を壊滅させる」「米国の日本の国内市場参入を狙う政治的圧力」というような否定的な声が未だに少なくないのも事実。

八代尚宏客員教授は「TPPが日本経済活性化の契機になる」と説き、TPP参加によって生まれる日本経済の新たな形を指し示している。

1.なぜ戦後日本は豊かな国になれたか
自由貿易は経済発展の基本戦略

戦後の世界的な自由貿易体制の成立でもっとも大きな利益を得た国が日本。自由貿易のおかげで、国内資源が乏しいというデメリットは、世界中から安価な資源を輸入できるメリットに変った。先進国の豊かな市場に製品を売り込むことで、多くの日本企業が世界的な企業へと成長し、豊かな国を作り上げた。このため、日本政府は、世界貿易機構(WTO)での一括関税率引き下げや、貿易自由化と国内制度改革を合わせた二国間の経済連携協定(EPA)の締結を積極的に進めてきた。

 TPPは農業等を犠牲にし、大企業の輸出を増やすためのものという見方は、「輸出は善、輸入は悪」という国内生産者の立場に偏った見方。今日の日本経済にとって、自由貿易の利点は、むしろ市場競争が妨げられている非製造業分野の改革にある。

価格や生産面の規制に縛られた農業等の分野で一挙に自由化が進めば、悪影響が生じる可能性はあるが、それは低生産性の事業者を競争相手から保護し、消費者に大きな犠牲を強いてきた保護政策の弊害。こうした過去の政策の誤りを正す絶好の機会がTPPであり、それは日本自身にとっての必要な改革。

 1964年の日本のOECD加盟は日本経済の発展のためには乗り越えなければならない壁であるという官民の共通認識から、米国に負けない競争力を実現し、その後の製造業の躍進に結びついた。

 アジアの経済大国の日本がTPPへの参加を表明すれば、東アジアの他の国の参加も促進され、アジアの自由貿易圏がいっそう拡大する。開かれた東アジアの経済発展のカギである自由な貿易や投資の拡大をさらに進めることは、日本の利益だけでなく、他のアジア諸国への大きな責務と言える。

2.TPPは米国の政治的圧力?
偏狭なナショナリズムの愚かしさ

 TPPへの参加は、「米国の日本の国内市場参入を狙う政治的圧力によるもの」というような反米ナショナリズムを煽る論法が見られる。しかし、貿易や投資の自由化は双務的なもので、日本企業が米国市場で自由に競争できる一方で、国内市場から米国企業を締め出すという不公平は許されない。

 米国政府の圧力で国益が損なわれるという論者は、暗黙のうちに、日本の既存生産者利益が国益と同じものと見なしている。しかし、米国政府は、日本を米国企業の独占市場にせよというのではなく、単に参入自由の競争市場にすることを求めているだけ。これは日本の新規参入企業と消費者にとっても、自由貿易と同じ利益を受けることを意味する。

競争力がないから保護が必要というのではなく、保護をするから競争力がつかない。本来は、国内市場での既得権を排除し、参入自由の市場を作ることが日本全体の利益。しかし、自由貿易の利益は多数の消費者に薄く広く及ぶことに対し、産業保護の利益は少数者に集中するため、政治献金や選挙の票集めの威力から、それが実現できない。

3.コメに778%の関税は本当に必要か
TPPは国内農業改革の突破口

 聖域なき関税撤廃で、日本の農業は壊滅すると言われている。しかし、日本のような温暖な気候、豊かな水資源、十分な広さの耕地、勤勉な農民という好条件が揃っていながら、なぜ主食のコメが778%という高関税に守られなければならないほど競争力が弱いのか。

 米国の農家は平均200ヘクタールの農地を有すが、日本ではわずか1.9ヘクタールに過ぎず、これを増やせと言っても無理という説がある。しかし、日本のコメ農家でも10ヘクタール以上の専業農家では、十分に生産規模の利益は得られている。生産性が極端に低いのは1ヘクタール以下の零細農家。これら農業所得なき「農家」でも、農外所得と年金で年平均400万円程度の所得は確保されている。高い生産性の専業農家を苦しめているのはコメの4割減反という悪法。コメの減反で価格を吊り上げる行為は、実はカルテル行為そのもの。日本のような生産性の高い専業農家を虐げる、矛盾した農政を行う国はない

TPPはいずれにしても必要な農業の構造改革を促進するためのひとつの契機となり、その利益を受けるのは真の耕作者である専業農家と消費者

4.投資家対国家の紛争処理手続き(ISDS条項)は
なぜ問題か

 TPPに含まれているISDS条項で、米国企業に日本政府が訴えられるという懸念からの反対論があるが、これは自由な直接投資を促進するための法的な仕組み。世界的に活動する日本企業にとっても必要な仕組みによって、日本が一方的な不利益を受けると考えるのはなぜか。

 それはこの条項が、外国企業に対して、自国企業と比べて不利な条件を押し付けないという、自由な貿易・投資活動に不可欠な「内外無差別原則」に基づいているから。日本のような先進国では、本来、そうした内外差別はないが、問題は特定の強い政治力を持つ「企業」が、国内市場で特権的な地位を得ていること。日本の一般企業もこの「被害者」ですが、外国企業にとっては「差別」として訴える立派な根拠になる。

 長年の課題となっている制度改革を、TPPというグローバルな基準に照らしてあぶり出すことは、日本経済にとっての大きな利益となる。

5.「構造改革は必要だがその体力がない」
引き伸ばし論法の是非を問う

 現在の日本の長期経済停滞背景には、生産性の高い製造業と低い農業やサービス業の二重構造がある。これは国際競争にさらされる製造業と、政府に保護された非製造業という違いによるもの。90年代以降の世界経済のグローバル化で、生産性の高い製造業が国外に生産拠点を移す一方で、その後を埋める高付加価値のサービス業が、政府の規制に縛られて十分に育っていない。ジリ貧状態の日本経済の活性化の鍵は、農業やサービス業を、製造業と同様な競争市場に晒すと同時に、十分なセーフティーネットを整備する他はない。

 過去の旧い規制を、新しい時代に相応しい規制に転換することは、財政に依存しないデフレの克服策。今後、高齢化で需要が増える分野である医療・介護サービスや、女性が働くのが当たり前の社会での保育所等は、いずれも厚労省の厳格な価格統制や参入規制に縛られている。国民皆保険制度を維持しつつ、公的・民間企業が対等な条件の下に競争できるように改革することは、TPPへの参加の有無にかかわらず必要。自由貿易の視点で国内の諸規制を見直すことが、その大きな契機となることは疑えない。

 TPPを単に米国からの要求を突きつけられる場といった被害者意識ではなく、むしろ、アジア諸国の利益を代表して、要求をする場とすることも、日本の大きな使命と言える。
ーー要旨の採録終了ーー
清澤のコメント:
TPPが米国の大企業の求めるものであったとしても、それは既存の利権が侵されるという日本国内の一部大企業やこれまた日本の弱小な農業およびサービス業からのTPP反対の声が、日本世論の趨勢であるかのように勘違いしていた面は確かにありそうです。

国内企業と外国企業を含めて、自由で公正な競争が行われる中で真に消費者に有益な商品やサービスだけが生き残れるという昔からの自由主義的な仕組みを模索することは望ましいものであろうと思いました。

翻って医療の環境を考えてみます。国内の医療機関でも、公的医療機関などが追い求めがちな「上っ面での患者間の平等や、怠惰な者も含めた職員の安寧」などではなくて、「個別の患者さんの利益」の究極的な重要性に気づいた運営がなされる一部の私的な組織だけが繁栄拡大しているのが目立ちます。これは別に驚くべき結果ではなくて、消費者ニーズが奈辺にあるかという問題であって、当然の帰結であると感ずるこの頃です。

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