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2012年12月1日

3848 近視の成因に迫る、ひよこを用いた実験近視のお話。

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学校医を務める小学校で教師と親達を聴衆として「小学生の近視の話」をする機会があって、その中で少々近視の成因に触れた話をしなくてはならなくなりました。

人の近視を論じようとすると、必ず前提条件にされるのが動物実験で作ることができ、再現性がある近視を持つ動物でのモデルです。その研究は現在も進められているのでしょうが、私の知る中では東京医科歯科大学の眼科学の教授を務められた所敬(ところ たかし)先生の率いたグループの成果が大きいと思っています。

その内容を復習してみようと「実験近視」をキーワードに探したところ、その成果を記録した文部省科学研究費の公式ページ(⇒出典にリンク)がありました。まず自分なりに咀嚼してその要点をまとめ、間違いの無いようにその抄録の全文を引用しておきます。

「生まれたばかりの鶏のひよこに半透明または黒色の目隠しをして育てると、目隠しした側の目が近視になる。しかし、全くの暗闇に中で育てるとその近視化は起きないというのが要点であるともいます。また、実験近視眼では後極部強膜軟骨層で細胞増殖能が亢進し、細胞外マトリックス合成能が亢進していたとしています。さらに彼らはTGF-β,IGF-IIなどの成長因子の関与を考えており、アポモルフィンが網膜色素上皮細胞を介して軟骨細胞の増殖を抑制することがを推測したとしています。より人に近いサルでも片側の瞼を縫合する実験を行い、近視化させることが出来た。」としています。

ーーー公式の要旨の引用ーーー

強膜の発育制御に関する研究-実験近視モデルを用いて-

Study about Regulation of Scleral Growth-using Experimental Myopia-

Principal Investigator (1992年~1994年)

所 敬
TOKORO, Takashi
Researcher Number:20013865
東京医科歯科大学・医学部・教授

共同研究者:吉野 幸夫、川崎 勉、赤澤 嘉彦、船田 みどり
文部省科学研究費一般研究(B) 最終報告の抄録

(1)視性刺激遮断の条件と近視化:孵化後2日の白色レグホン雄の片眼あるいは両眼にプラスチックゴ-グルを装着し12時間明所12時間暗所の条件で飼育し2週間目に諸検査を行った。片眼に半透明あるいは黒色のプラスチックゴ-グルを装着した眼は20D以上の強度近視となり著明に眼軸が延長していた。両眼にプラスチックゴ-グルを装着した場合にも半透明あるいは黒色の差はなく両眼とも20D以上の強度近視となり著明に眼軸が延長していた。24時間暗所の飼育環境下ではゴ-グル装着眼で眼軸延長はみられなかった。

(2)組織学的検討:、ゴ-グル装着眼(実験近視眼)の後極部強膜軟骨層においてPDNA,decorin,TGF-β,IGF-II,phosphotyrosineの発現が増加していることが免疫組織化学によって明らかになった。このことから、実験近視眼の後極部強膜軟骨層における細胞増殖能の亢進と細胞外マトリックス合成能の亢進が形態学的に確認され、さらにTGF-β,IGF-IIなどの成長因子の関与が示唆された。電顕観察から実験近視眼の後極部強膜軟骨層において盛んなremodelingが行われていることが示唆され、後極部強膜線維層においてはコラーゲン細線維の狭細化、各細線維間隙の拡大が観察された。

(3)生化学的検討:上記の実験近視眼から後極部組織を採取し、bFGFおよびTGF-β2を抽出しELISAによって定量した。bFGFは近視眼で有意に低下し、逆にTFG-β2は実験近視眼で有意に増加していた。

(4)培養系での検討:
 1、ニワトリ胚強膜軟骨細胞にb-FGF,TGF-β,TGF-α、IGF-I,IGF-II,PDGF-AB,PDGF-BB,PDGF-AAを添加した結果、PDGF-AAで反応が無かった以外、全ての成長因子が軟骨細胞の増殖能を亢進させ、特にb-FGFの効果が顕著たった。
 2、ニワトリ胚網膜色素上皮細胞とニワトリ胚強膜軟骨細胞とをco-cultureした結果、co-cultureした群では軟骨細胞の増殖能が亢進した。
 3、ニワトリ胚網膜色素上皮細胞の培養上清中に、b-FGFが検出された。
 4、培養網膜色素上皮細胞とのco-cultureのシステムを用いて、従来から眼軸長延長を抑制するとされているアポモルフィンの作用機序を検討した結果、アポモルフィンは網膜色素上皮細胞を介して軟骨細胞の増殖を抑制することが示唆された。

(5)脈絡膜の伸展性:ウシの眼球各部位の脈絡膜の張力検査を行った。脈絡膜の前後方向の伸展度は輪状方向より伸びやすかった。このことは眼球が後極方向に延長することのひとつの説明になると考えられた。

(6)実験近視猿眼での検討:生後12か月のカニクイ猿の右眼に瞼々縫合をし、約4年後に開瞼し、以後9年間飼育した。これらについて諸検査を実施後、眼摘し組織学的検討を行い、最も近視度の強い一匹(-19D)に網膜脈絡膜病変をみた。この組織学的所見は短後毛様動脈穿通部で脈絡膜がヘルニア様に後方に隆起していた。電顕所見では、Bruch膜に強い加齢変化がみられた。そこで、実験近視の網膜脈絡膜萎縮の発生には加齢が関係していると思われた。
ーーー引用終了ーーー
(上の図は実験近視を作るためゴーグルを付けたひよこの図で、チュービンゲン大学Schaeffel教授の写真です。)

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