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2012年10月26日

3750 目がぴくぴくしたら:10年続けた臨床眼科学会のインストラクションコースの講演が完全に終わりました。

3750 さて、本日をもって10年続けた「打倒・解決!不定愁訴・不明愁訴」のインストラクションコースも「第10話グランドフィナーレ」で終了となりました。

今回は、「眼がぴくぴくしたら??」を私、清澤源弘、清澤眼科医院(東京医科歯科大学眼科)の話題に選びました。なお、若倉先生と山田先生の話題の聴講記も間もなく採録する予定です。スライドの文章の部分を採録しておきます。

講演ののち、ロビーで同級生の岡部仁先生と一期先輩の矢端和行先生がコーヒーを飲みながらねぎらってくださいました。東京への帰りの新幹線の中で転載の作業をしています。
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抄録 は以下の通り
解決!眼と視覚の不定愁訴・不明愁訴
その10グランドフィナーレ
2012.10.26 9:00-10:30 第2会場(国立京都国際会館1F アネックスホール1)
○若倉雅登1、清澤源弘2、山田昌和3、 1井上眼科病院、2清澤眼科医院、3東京医療センター

 不定愁訴とは、何となく体調が悪いという自覚症状を訴えるが、検査をしても原因となる病気が見つからない状態を指す。それに対して、明らかで明確な訴えは有るがそれを医学的に説明しにくいといった愁訴を我々3名は不定愁訴と名付けて、本学会で表題のインストラクションコースを行って10回目を迎える。患者の愁訴、実感を大事に扱う診療を改めて提唱するという所期の目的を達成してきたと信ずる。そこで今回は「グランドフィナーレ」として、各人の最も得意とする領域の中で「日常診療で困った症例をいかに解決したか、解決できなかったか」の実例や過去に紹介した重要例を含めて提示する総集編を行う。実際に診療のプロセスを示しながら、会場の参加者とともに各例について討議して見たい。眼科領域のすべてを対象とするが、山田は外眼、前眼部を、清澤は神経眼科を、若倉は心療眼科のテーマを中心に症例提示を行う。「利益相反公表基準:該当」無
「倫理審査:承認」有、「IC:取得」有
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スライド1:
打倒・解決!不定愁訴・不明愁訴  第10話グランドフィナーレ 眼がぴくぴくしたら??
清澤源弘 清澤眼科医院 (東京医科歯科大学眼科)

スライド2:眼がぴくぴくしたら?
「眼瞼けいれん」というのが初版の書名だったのですが。改訂版印刷開始直前に若倉先生の発案で「ぴくぴくしたら」ではなく、「しょぼしょぼしたら」が付きました。
「打倒・解決!不明愁訴・不定愁訴」も第10回グランドフィナーレを迎えました。
原初に戻って「眼がぴくぴくした」様々な症例の話をしてみましょう。
(公開すべき利益相反なし)

スライド3:瞼がぴくぴくする (1)眼瞼ミオキミア?
症例1:眼瞼ミオキミアだと思ったが念のためにMRIをとったら、小脳橋角部腫瘍だった:
(図はIntraoperative Facial Nerve Monitoring at Michigan Ear Instituteより借用)

スライド4:(1-2)眼瞼ミオキミア(眼輪筋波動症)とは
片方の眼の下側がピクピクと動く不随意運動
下位運動ニューロンの異常な電気活動~筋線維束興奮
精神的なストレスやコーヒー摂取で出ることがある
健康人でもパソコン作業や、寝不足時に出る
両目を10秒強く瞑り、開くと患眼下で誘発される
脳幹腫瘍、脳炎、脱髄、外傷後遺症も原因になる
次の片側顔面痙攣をこれと間違わないことが肝要

スライド5:瞼がぴくぴくする (2)片側眼面痙攣
症例2、片側の眼瞼がぴくぴくする。若倉質問表は2点、眼瞼ミオキミアを考えたが、抑肝散加陳皮半夏を投与し経過観察とした
翌月に、口元にも痙攣が表れた。 → 片側顔面痙攣の初期症状だった → MRIで血管性神経圧迫確認
ボトックス投与で痙攣は停止
(自験類似症例、4例)

スライド6:瞼がぴくぴくする (2-2)片側眼瞼痙攣の治療
まず画像診断(MRI,MRA)で診断を確定
基本はボトックス注射、眼瞼痙攣よりは少なめに眼周囲6か所(2単位)、口角周囲4か所(1単位)、眉間4か所(1単位):計20単位程度で、6か月ほどは有効なはず
特に希望があれば通暁した脳外科で血管に因る顔面神経圧迫の除去(ジャネッタ手術)を検討する

スライド7:(2-3)片側眼瞼痙攣の糖代謝
片側顔面痙攣群は、痙攣出現時(8%程度)で、痙攣抑制時(5%程度)でも共に正常コントロール群に比べて、両側視床で糖代謝亢進
原因血管は 前下小脳動脈が19 例、後下小脳動脈が4 例、後下小脳動脈+椎骨動脈が2 例と様々
痙攣強度と、顔面神経圧迫強度の間には正の相関
視床の糖代謝亢進は、病気の原因ではなくて疾患による二次的な変化であると推測した
(Glucose hypermetabolism in the thalamus of patients with hemifacial spasm. Mov Disord. Shimizu M, Suzuki Y, Kiyosawa M, Wakakura M et al. 27:519-25. 2012)
現在、手術症例は術前後にPETを施行

スライド8:片側顔面痙攣群は、痙攣出現時(8%程度)で、痙攣抑制時(5%程度)でも共に正常コントロール群に比べて、両側視床で糖代謝亢進
原因血管は 前下小脳動脈が19 例、後下小脳動脈が4 例、後下小脳動脈+椎骨動脈が2 例と様々
痙攣強度と、顔面神経圧迫強度の間には正の相関
視床の糖代謝亢進は、病気の原因ではなくて疾患による二次的な変化であると推測した
(Glucose hypermetabolism in the thalamus of patients with hemifacial spasm. Mov Disord. Shimizu M, Suzuki Y, Kiyosawa M, Wakakura M et al. 27:519-25. 2012)
現在、手術症例は術前後にPETを施行

スライド9:片側顔面痙攣のPET(SPM解析)
痙攣出現時と、Botox注射後の痙攣抑制時ともに、正常コントロール群に比し両側の視床に糖代謝亢進が見られた。

スライド10:瞼がぴくぴくする (3) 気づくと、口も同時に動いていた Marcus Gunn現象
片方の目が閉じるという訴えの小学生。気づくと、口と同時に開いていた (約一年で3症例を経験)
→ Marcus Gunn現象
 同義語に: jaw-winking ptosisなど
( 図はhttp://reference.medscape.com/ より借用)

スライド11:(3-2)マーカスガン現象とは?
1883年に、Marcus Gunnは顎の動きの影響を受けた瞼の動きを示す独特な先天性眼瞼下垂を持つ15歳の女性を報告
“顎まばたき反射”が、同側の外翼突筋(=顎を引き下げて口をあける筋肉)の緊張で刺激され、瞬時に眼瞼下垂のある側の瞼が正常側と同じかそれ以上に上に引き上げられる この異常に関連した動きが“マーカスガン現象(the jaw-winking syndrome)。

スライド12:(3-3)マーカスガン現象の特徴
母親は授乳時に、この現象に早期に気付く
遺伝的にはほとんどが孤発例
外翼突筋を動かす三叉神経の運動枝成分と、上眼瞼挙筋を動かす動眼神経の運動枝の間の異常連結
特定の患者に新しく出来た異常というよりも、生物としての古い時代からの進化の名残と考える人も居る
先天性眼瞼下垂のおよそ5%がマーカス ガン現象を伴う
上下の斜視が大きければ手術の適応もある
不同視が5-26%、弱視も30%に見られる、人種による頻度差なく、男女比もほぼ同等

スライド13:瞼がぴくぴくする (4) 原発性眼瞼痙攣 乾き眼、眼の違和感の訴えの事もある 片側顔面痙攣(赤)と眼瞼痙攣(青)患者の訴え
図 未記載

スライド14:(4-1)眼瞼痙攣を増悪させるドライアイ
○ドライアイを示す諸所見  瀰漫性表層角膜炎  浅い涙液メニスカス  涙液分泌の減少(シルマーテスト)  涙液層破壊時間短縮
○涙液貯留を増やす対策:
  点眼  コラーゲンプラグ(初回、3-6週有効)  シリコンプラグ(イーグルプラグ)

スライド15:(4-2)眼瞼痙攣は眩しさを訴えることも、 そもそも眩しさとは何なのか?
“眩しさ ”や“痛み”も眼瞼痙攣の主要な愁訴
薄い点眼麻酔薬が時に有効 ボトックスでも痛みも除くことができる
中枢性鎮痛効果を持つ抗鬱薬SSRIも使える
羞明 photophobiaは、光が強くて不快に感じたり、見えにくい状態になるのを表現する用語

スライド16:(4-3) グレア は過剰な輝度または過剰な輝度対比 のために不快感または視機能低下を生じる現象
「不快グレア」と「障害グレア」に分類する(堀口浩史、羞明のメカニズム:神眼2009;26:382-95)
「不快グレア」は、視野内で隣接する部分の輝度差が著しい場合や、眼に入射する光量が急激に増した時に不快を感じる状態
「障害グレア」は、眼組織において生じる散乱光により網膜像のコントラストが低下し視力低下を来す状態
グレアに視覚入力系と、疼痛関連の三叉神経系が関与
羞明を生じうる疾患を、眼疾患、神経疾患、精神疾患に大別
眼疾患では光が眼内で散乱し、コントラストが悪化して視力低下、この他、網脈絡膜疾患、散瞳によるものもある
「視路病変を伴わない羞明」として、片頭痛や髄膜刺激症状を呈する疾患など、神経疾患に伴うもの。精神疾患患者も羞明を訴えることがあるーー眼瞼痙攣はこの部分

スライド17:(4-3) 眩しさに対応する 脳の部位は?
FDG-PETを用いて眼瞼痙攣で羞明のある群と、コントロール群の脳局所糖代謝を比較した
眩しさを訴える群では、視床、特に視床枕を含む領域で、有意に糖代謝の異常亢進を認めた
視床は、視覚入力系と三叉神経系が交差する部位、中脳背側には視覚入出力に関連する上丘等がある

Emoto H, Suzuki Y et al. Photophobia in Essential Blepharospasm -A Positron Emission Tomography Study. Mov Disord 2010;25:433-9.

スライド18:瞼がぴくぴくする (5) 薬剤性眼瞼痙攣
(症例) 20歳女性、眼瞼痙攣を示す患者で普通に見える人だったが、良く聞いてみるとアルコール依存症だった。
 ベンゾジアゼピン系薬剤の常用までは考えたが、アルコールが眼瞼痙攣の原因になるとは?

スライド19:(5-1)薬剤性眼瞼痙攣
神経精神科系薬の長期投与中に眼瞼痙攣を発症したという報告があり、それらは、薬剤性眼瞼痙攣であると推測される(遅発性ジストニア) 238例の眼瞼痙攣患者のうち14例は眼瞼痙攣発症前から、抗うつ薬、抗精神病薬、抗ヒスタミン薬、抗パーキンソン病薬、または、これらを組み合せて服用していた(Mauriello JA Jr et al: Br J Ophthalmol. 1996))

スライド20:若倉のエチゾラムとベンゾジアゼピンによる眼瞼痙攣の報告
254例の眼瞼痙攣患者の長期投与薬を調べ、35例でエチゾラム、53例で他の抗精神病薬が眼瞼痙攣発症前から長期投与されていたと報告

エチゾラム単独投与患者13例のうち9例を内服中止にしたところ、7例で眼瞼痙攣の改善傾向がみられたとしている ( Wakakura M, et al: Etizolam and benzodiazepine induced blepharospasm. J Neurol Neurosurg Psychiatry 75:506-507, 2004)

スライド21:薬剤性眼瞼痙攣患者79例において投与されていた神経精神科系薬
ベンゾジアゼピン系抗不安薬 58例
ベンゾジアゼピン系睡眠薬  44例
ほか

スライド22:薬剤性眼瞼痙攣における 中枢性ベンゾジアゼピン受容体のdown-regulation説
長期間投与で、基底核‐視床‐大脳皮質ループの活性化を招き、眼瞼痙攣が発症する
ベンゾジアゼピン系薬の中止により薬剤性眼瞼痙攣の軽快が期待できる

スライド23:結語
このように「瞼がぴくぴくする」という疾患にもいろいろあります。
このインストラクションコース打倒・解決!不定愁訴・不明愁訴に10年間お付き合いいただきありがとうございました。
「科学を重視すると、現実から離れる。実地本位に流れると、科学を失う。いずれを採るか個々の患者のニーズも違う。“いま目の前にいる患者さん”のために良きように。」藤野貞(神経眼科臨床のために、初版の序)

スライド24:謝辞
江本博文、大野直則、清水恵、鈴木幸久、村井秀樹(東京医科歯科大学)、神谷めぐみ、山口幸子、坪川香(清澤眼科医院)
            各氏のご協力に感謝します
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以上で私担当の「打倒・解決!眼の不定愁訴・不明愁訴」はおしまいです。長い間、お付き合いいただきありがとうございました。

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