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2012年10月20日

3735 超早期乳児内斜視手術という矢ヶ崎悌司先生の講演を伺ってきました

3735 超早期乳児内斜視手術という矢ヶ崎悌司先生の講演を伺ってきました
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私の聴講メモです。
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弱視の発生を避けるには6歳までに眼鏡矯正をし、遠視や乱視の矯正、斜視の矯正をしなくてはいけないという話はよく知られているところです。今日のお話は乳児内斜視で立体視を獲得させるためにはさらに早く生後6か月までに斜視手術を終わらせなくてはならないというご講演でした。

 イルカの視力は0,1から0,12.距離を測るのにはその発生する超音波を使う。馬の視力は0,1から0,12。距離は耳で聞くそうです。犬の視力は0,2から0,3で、その距離感は嗅覚に頼るそうです。これに比べて人の視力は高く、両眼視のできる範囲も120から130度と広くて、立体視という機能が使われています。

 健常人でも両眼視と片眼視ではリーチング(指でさす)、グラスピング(つかむ)、ドライビング(S字の道での運転)などの能力に差が出ます。ボールに慣れていない人で立体視の良い人と悪い人を対象にキャッチボールを教えると、そのパフォーマンスには明らかな差が出ます。

 大まかな立体視は生後2-4か月で発生し、視角60分程度の細かな立体視は少し遅れて生後6か月までに成長します。M細胞系(大細胞系、外側膝状体の大きな細胞層を経由する)が前者を、P細胞系(小細胞系:同様に小さな細胞層を経由する)は後者を担っています。ヒューベルとウィーゼルは犬で実験をし、フォンノルデンとクロフォードは視覚領の細胞が左右どちらの目に反応するかというヒストグラムを書く実験を組み立てました。通常は両眼に反応する細胞が多いのですが、内斜視では右か左かの一方にだけ反応する細胞ばかりになります。

クロフォードの弟子で日系のChino Yuzoは、抑制の回路が生後6か月までに完成してしまうことを示しました。1990年のジャクソンメモリアルレクチャーでは2歳までに乳児内斜視の手術を終わろうという話がなされ、それが現在の日本にも流布しています。
 
しかしライトWrightは1994年に生後13-19週の超早期に内斜視の手術をして立体視角70秒のP細胞系に依存した微小な立体視の獲得をさせることに成功しました。超早期というのは生後6か月までの手術です。立体視を得るには正常網膜対応が望ましく、眼位は10度以内に持ってこなくてはなりません。その眼位測定にはクリムスキー法やヒルシュベルク法での評価では不十分でプリズムカバーテストが必要です。遠視を補正するにはスキアの技術も必要です。超早期に手術してもDVD(注)が出てしまいますが、超早期に手術すれば顕性のDVDは出ないそうです。 

インディアナのヘルベストンらのグループでは内斜視を修正するのに、筋の付着部からではなくて、リンブスから何ミリという言い方をします。それは乳児内斜視ではしばしば筋の付着部が前によっているからです。
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追記:
「乳児内斜視には自然治癒がありますが、それでも超早期手術が必要なのですか?」という質問をされた先生がいました。「斜視が自然に治ることはありますが、その子供の立体視の能力は損なわれてしまっていたはずです」、というのがお答えでした。質問も答えも的を得たものだったと思いました。
乳児内斜視後に起きやすいDVD: Dissociated Verteical Deviationとは、「交代性上斜位」のことです。
「乳児内斜位の原因は」という質問に対するお答えはまだ不明ですとのことでした。

私は、このような難しい斜視を自分で手術しているわけではありません。患者さんからご相談を受けて、見ていれば済むというものでない場合には的確な病院などに紹介いたします。

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