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2012年8月11日

3353 鼻内内視鏡手術(endoscopic sinus surgery:ESS )における内直筋損傷に付いて

耳鼻科での鼻内手術後に片眼が外を向いてしまって回復していないが?と言うネットでの質問を受けました。これは、内視鏡による眼窩内側壁を貫いての内直筋損傷かと考えられます。その際の検査と考えられる治療を述べました。
参考になる文献も紹介します。念のために追加すれば、この著者の属する病院で特に合併症が多いということではありません。私も東京医科歯科大学にいたころ様々な病院で引き起こされたこの様な症例に4件も遭遇しています。

ーーーQ and Aーーー
質問:6月末に耳鼻科で副鼻腔炎の手術を左側だけしました。
麻酔から覚めると左目の黒目が外側に向きっぱなしで内側に全く動きませんでした。白目の部分は血で真っ赤でしたが、腫れはありませんでした。
一週間しても動かないのでCTを撮りましたが、耳鼻科では初めてのことだそうで原因がわからず、眼科を紹介されましたが、はっきりしたことはわかりませんでした。
メチコバールを飲み続けましたが一ヶ月経った今も動きません。
視力はあるので物がダブって見えます。
日常生活に不便なので眼帯をしています。
炎症が癒着したのが原因かもとのことですが、こういった場合眼科的に手術可能でしょうか?

お答え:副鼻腔の手術の際に眼科内側壁の骨が既に融けていて、鼻腔からその壁を越えた実感が無いままに眼窩内に侵入してしまい、内直筋(か或いは内直筋に行くべき動眼神経の枝)を損傷したのだと思います。実はこのような耳鼻科手術(殊に内視鏡によるもの)での事故は多く、私も既に4例を実際に見たことが有ります。

もし、この症例がそれならば、時間を待っても自然回復は望みがたく、また如何にしても動く様にすることは困難です。(私の医院では行えませんけれど)場合によっては斜視の手術で外を向いてしまった眼を取敢えず正面を向く様に手術する術はなくはないかもしれません。ご興味がおありならば拝見いたします。

ーーー参考文献記事の抄録ーーー
内視鏡下鼻内手術における術中副損傷および術後合併症の検討

重田 泰史ほか( 東京慈恵会医科大学附属第三病院耳鼻咽喉科) 公開日 2012/02/14
(内視鏡下鼻内手術, 術中副損傷, 術後合併症)

抄録:
副鼻腔は頭蓋や眼窩などと隣接していること, また解剖学的に複雑でバリエーションも多いことなどより, 視器損傷や髄液鼻漏など, 重篤な術中副損傷の発生が少なからず存在する.

今回われわれは鼻副鼻腔炎症性疾患および嚢胞性疾患に対する内視鏡下鼻内手術において, 多施設における術中副損傷および術後合併症の発生頻度とそれらに関わる因子について検討したので報告する.

対象は2007年4月1日から2008年3月31日までの1年間に東京慈恵会医科大学附属病院および教室関連病院 (計16施設) において内視鏡下鼻内手術を施行した1,382例である. 術中副損傷あるいは術後合併症を起こした症例が80症例 (5.8%) あり, 過去の報告と同様に眼窩内側壁損傷の頻度が一番高かった.

副損傷/合併症群と非副損傷/合併症群とを比較すると性別, 麻酔方法, 糖尿病の既往の有無で有意差を認めた.

また, 多重ロジスティック回帰分析では, 患者が男性であること (p=0.003, オッズ比 2.50, 95%信頼区間 1.35-4.55), 全身麻酔下での手術 (p=0.014, オッズ比 3.21, 95%信頼区間 1.27-8.12) が副損傷/合併症に関わる因子であった.
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清澤のコメント;

この報告は、かなり多くの内視鏡下鼻内手術の症例を纏めて居り、内視鏡手術の視器に対する障害が少なくないとしています。合併症が内視鏡に付けられる吸引装置の破砕力が強くなっていることも関連するようですが、既に骨が融解していたのか或いは処置時に眼窩内側の骨を破壊して眼窩に既に入っていることに術者が気がつかないことが多かったようです。

眼科医が患者さんや担当した耳鼻科医の依頼を受けて述語斜視の原因を調べるとすれば、MRIなどで画像を撮り直して、内直筋の全長が追えるかどうかを見ることが先ず必要です。ピンセットで内外の直筋の付着部を引っ張って見て、挟まったり癒着したりすることに因る抵抗が有るのか、筋の断裂や神経損傷で伸展への抵抗さえも無いのか?を考えましょう。

外斜視を示す眼を正面に向ける為の斜視の手術をするとなれば、報告が無いわけではありませんけれども切れた内直筋を繋ぎ直すのは、実際には困難でしょう。簡単には対立する外直筋を緩めるか、或いはこれは難しいですが、上および下の直筋をそれぞれ2分し、それぞれを内直筋の強膜上への付着部付近に縫着するという様な高度の技術を要する手術が考えられるかもしれません。(これは私もやった経験はありませんので、専門医に紹介です。)

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確かに、思い出す限りでは私が見た3人はすべて中高年の男性で、鼻茸除去の手術で発生していて、上記の纏めの通りでした。

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