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2012年3月11日

3134:妊娠中に発生したぶどう膜炎(または虹彩炎)とは

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結膜が赤く充血した患者さんが来院し、視力や眼圧は悪くないのですが、丁寧に細隙灯顕微鏡で見ますと前房にも炎症細胞が出ていて、角膜後面にも細かい細胞沈着が少し見えました。話をよく聞いてみますと妊娠4カ月だそうです。眼底には明らかな変化はなさそうでした。
(図はRootAtlas.comから、そのビデオはこちら

「妊婦に発症した虹彩炎」の診断で良さそうですが、どのようなことに注意してどう治療すればよいのでしょうか?ネットを開いてみますと、[uveitis in pregnancy]で92万ものページが出ていました。その中で、AJO(アメリカン・ジャーナル・オブ・オプサルモロジー)の記事を参考に読んでみましょう。
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AJO136巻、第1号、ページ91から98まで、(2003年7月)
非感染性ぶどう膜炎と妊娠 Peter K Rabiah、MD(サウジアラビア)他

抄録
目的:非感染性ぶどう膜炎患者の、妊娠中と産後でのぶどう膜炎の疾患活動性を報告する。

デザイン:症例シリーズの観察。

方法:
大きな眼科病院で経過観察中に非感染性ぶどう膜炎を示した妊娠した女性の医療記録を検討した。経過観察中の妊娠、そして/または、産後期間中にぶどう膜炎の活動の再燃の有無を述べるのに十分な資料がある場合の妊娠患者を研究に含めた。

結果:
50人の女性で76回の妊娠を研究に含めた。33回の妊娠はベーチェット病の女性であった、24回はフォークト – 小柳 – 原田病を持つ女性、19回は特発性ブドウ膜炎を持つ女性であった。

前房にフレアを示すぶどう膜炎の活動が妊娠4カ月までには76人中49人(64%)でみられ、娠後期には17例(22%)で発生した。炎症が起きなかったのは21人(28%)だった。

妊娠初期の前房のフレアは、フォークト – 小柳 – 原田病と特発性ブドウ膜炎に典型的だった。分娩後6ヶ月以内におけるフレアの増加は産後の期間に十分に調査可能なカルテデータを持っていた59人中の38人(64%)で発生していた。産後のフレア増加はベーチェット病で特に典型的だった。

結論:非感染性ぶどう膜炎では、多くのぶどう膜炎を持つ女性は妊娠の最初の4ヶ月以内に活発なぶどう膜炎活動を経験するでしょう。しかし、妊娠後期では、相対的にぶどう膜炎は不活発になります。多くは分娩後、6ヶ月以内にそのぶどう膜炎は活動を再開します。
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清澤のコメント:
この論文は最初の質問に的確に答えられたものとはいえませんが、妊娠は体内のステロイドを増加させるので、妊娠中にはぶどう膜炎は治まる傾向があるという事のようです。私が見た症例程度の軽い炎症なら、軽いステロイド点眼だけで抑えられそうですが、経口ステロイド投与や抗生剤の併用となりますと胎児への影響を考えてそれなりの慎重さが要求されそうです。

話が戻りますが、妊娠中の女性におけるぶどう膜炎(この場合は虹彩炎とほぼ同義)を考えるにも、先ず感染性か非感染性かを見分けなくてはなりません。

感染性のものには、細菌、スピロヘータ(梅毒やワイル病)、ウイルス(ヘルペスなど)が有りますので、そのリストに合わせた検索が出来るでしょう。真菌(アスペルギルスやカンジダ)や寄生虫(トキソカラやトキソプラズマ)のケースも有ります。

非感染性のものなら上記の特発性、小柳病(VKH)、ベーチェット病などが有ります。このほかのものとしては強直性脊椎炎(これはHLA-B27関連で知られる)やAAU(急性前部ぶどう膜炎)なども含まれます。とくに、なぜか妊娠と強直性脊椎炎について調べることを推奨したページが有りました。通常のぶどう膜炎の診断と同様にぶどう膜炎のチェックシートを埋めてその原因を考えてみる必要があるでしょう。

しかし、慣れた施設でしっかり調べてもぶどう膜炎の原因が決まるのは50%程度しかないという点はご了解ください。

今回は「妊婦の虹彩炎」として急いで大学に精査と治療をお願いしましたが、軽い虹彩炎としてステロイド点眼だけをここで初めて、ぶどう膜炎の採血一式もこちらで並行してまず行ッて見るという対応も出来たかもしれません。

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