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2012年1月28日

3018 『琥珀の眼の兎』エドマンド・ドゥ・ヴァール(早川書房)

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『琥珀の眼の兎』エドマンド・ドゥ・ヴァール(早川書房)

私にとっては「眼」と言う文字が表題に入った本と言うことで購入してみました。

日本で陶芸を学ぶエドマンドは、晩年を東京で暮らしていた大叔父のイニャスから多数の根付のコレクションを遺贈されます。そして264個の美しい根付に魅了され、何年もかけてその来歴を調べる事になる。

明治維新の頃のフランスでは、ジャポニズムが芸術の世界でもてはやされていた。ロシアのオデッサに起源を持つユダヤ人の大穀物商家の一員であり、ガゼットに芸術に関する評論を書く曽祖叔父シャルル・エフルッシは愛人との逢瀬を楽しみながら、日本から輸入された根付のコレクションを入手した。

大富豪エフルッシ家の一員であったシャルルは、華やかな19世紀のフランス・パリで、印象派など多くの芸術家らのパトロンとなり、ルノワールの絵画にもそっと表れている。しかし、新興のユダヤ財閥に対する国民の反感は強まってゆき、芸術家にも反ユダヤ的な人々は増えていった。その時代を代表する事件がドレフィウス事件だったのだが、フランスにおける反ユダヤの動きは第一次大戦よりも遥か前にすでに芽生えていた。

その様な世の動きとは関係なく、隆盛を誇るエフルッシ家にはウイーンにも一族が居た。根付のコレクションは結婚祝いとしてウィーンに暮らす従兄弟へと贈られた。それらは、その後のユダヤ人迫害と、一族の没落の歴史を共にすることになると言うのだが、……

人名、地名、事件、年号などが交錯し、訳文の為もあってか最初はとりつきにくかったですが、半分辺りからずっと読み進めやすくなってきました。

反ユダヤ人的な思考は決してナチスドイツに始まったわけではなく、第二次大戦の終戦で終わったわけでもなかった様です。根付と言う日本の文化よりもパリ、ウイーンにおけるユダヤ人の歴史と言う感じの本でした。

一族の没落と言う重い話題ではありますが、パリ印象派の画家など数年来興味の対象としてきた人々の歴史の裏面にも入るないようです。舞台裏が見える様な良い本です。さすがにその年のイギリスでのベストセラーです。

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