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2011年11月10日

2793 軸索障害による視神経細胞死におけるカルパイン阻害剤の神経保護効果

本日のプレスリリースを見ますと、東北大学眼科の新しい教授に選ばれたばかりの中澤徹教授らのグループは、緑内障の病態モデル動物に対して、千寿制約から供給されるカルパイン阻害薬を投与して、その神経保護効果を確認したという論文を発表したということです。

 先週の日曜日にはこの中澤徹教授の新任披露パーティーが眼科同窓会の主催で行われ、私も中澤教授の広範な興味の対象と斬新なアイデアに富む今までの研究成果と、今後の諸プロジェクトを伺ってきたました。

 さすがに基礎の研究室で時間をかけて育てられたことを窺わせる緻密な計画に感服してきました。これも、その成果の一環であり、今後の東北大学眼科での研究の一層の発展が期待されます。

中澤先生のご講演内容を記事にまとめようとしておりましたが、この記事が出ましたので、この話題はこの記事の引用で代えさせて頂きます。

ーープレスリリース引用ーーーー
東北大学、軸索障害による視神経細胞死におけるカルパイン阻害剤の神経保護効果を確認
発表日:2011年11月8日

軸索障害による視神経細胞死におけるカルパイン阻害剤の神経保護効果

* 緑内障動物モデルに、カルパイン阻害薬が治療効果を *

 東北大学大学院医学系研究科眼科学分野 中澤 徹 教授らのグループは、緑内障の病態モデル動物(*1)に対して、カルパイン阻害薬(*2)を投与してその神経保護効果を確認しました。

 緑内障は40歳以上の約5%が罹患し、現在失明原因第一位の疾患です。働き盛りの成人が失明することによる社会的損失は大きく、失明予防の観点から緑内障治療の研究・開発は大変重要です。70歳以上では約10人に一人が緑内障を持つため、少子高齢化に伴い失明患者は更に増加することが予想されます。現在の緑内障治療はすべて眼圧下降に着目しており、それ以外の作用機序による治療法は存在しておりません。日本人は諸外国の緑内障患者と病型が異なり、全緑内障患者の約7割は眼圧が正常範囲である正常眼圧緑内障(*3)であるため、日本人の緑内障治療において眼圧降下と異なる新しい治療法の開発がとりわけ重要です。

 本グループは、緑内障の基本病態は「視神経乳頭陥凹拡大(*4)に伴う網膜神経節細胞(*5)死」であることから、その細胞死を抑制する神経保護治療の開発に着手しており、本研究において、カルパイン阻害薬 SNJ-1945を用い、緑内障病態モデル動物に投与することで、治療効果を明らかにしました。

 本研究成果は、理化学研究所脳科学総合研究センター神経蛋白制御研究チーム 西道隆臣シニアチームリーダー、高野二郎研究員の協力と、千寿製薬よりカルパイン阻害薬SNJ-1945の提供を受け、東北大学大学院医学系研究科眼科学分野 中澤 徹教授と、同助教 劉 孟林らが文部科学省科学研究費“若手研究A”の支援のもと、共同研究で行われました。

 研究論文は科学誌Journal of Neuroscience Research 電子版に2011年11月8日付で掲載されます。

【研究内容】

<目的>

 正常眼圧緑内障の病態モデル動物における、カルパイン阻害薬の治療効果の解析。

<方法>

 動物実験では、野生型のC57BL6マウスと、内在性カルパイン阻害タンパク質・カルパスタチン遺伝子欠損(Cast-KO )マウス(*6)を使う。片眼の視神経の機械的な挫滅および、ビンブラスチン(*7)の微小管の障害作用を利用し、視神経の軸索流を障害するモデルを作成。この軸索流の障害によって網膜神経節細胞の細胞死が起こり、障害後七日目に生存細胞数を数えて定量する。細胞培養実験では、上記同様野生型とCast-KOマウスから網膜を採取し、網膜神経節細胞培養を行う。SNJ-1945をそれぞれ動物あるいは培養細胞に投与して網膜神経節細胞に対する保護効果を評価する。

<結果>

 神経挫滅と同様に、ビンブラスチン投与でも軸索流障害を起こし、網膜神経節細胞死が観察された。Cast-KOマウスや、その培養細胞では、より多くの網膜神経節細胞死が認められた。それに対し、SNJ-1945の投与によって、病態モデル動物の網膜神経節細胞の生存率が有意に上昇し、培養した網膜神経節細胞にも保護効果を認めた。

<考察>

 カルパイン阻害薬SNJ-1945は、この緑内障病態モデル動物に神経保護効果があり、緑内障の新しい治療薬となる可能性を示した。さらに、霊長類における投与試験で治療効果が確認されれば、臨床応用につながって新規緑内障治療薬となることが期待できる。

<論文タイトル>

 The critical role of calpain in axonal damage-induced retinal ganglion cell death.

 (邦訳:軸索障害による網膜神経節細胞死においてカルパインが重要な役割を果たす)

【参考】

 ※図1,2は添付の関連資料を参照

【用語説明】

*1 病態モデル動物:高血圧ラット、糖尿病マウスのように、医学研究で人の病気の特徴を示す動物で、病因解明のために使われる。

*2 カルパイン阻害薬:“カルパイン”は様々な生物種・組織で機能する、細胞内タンパク分解酵素である。カルパインが活性化されると、特定なタンパク質が分解され、細胞死が引き起こされる。阻害薬は、その活性を抑制するものである。

*3 正常眼圧緑内障:古典的な緑内障は眼圧が正常値(10~21mmHg)を超えて視神経を圧迫し視野が狭くなる疾患ですが、正常眼圧緑内障は眼圧が正常範囲であるにも関わらず視神経の萎縮が進行し、緑内障と同様の視野欠損が出現する疾患である。

*4 視神経乳頭陥凹拡大:図1で示されたように、なんらかの原因で視神経乳頭部の結合組織が減少し、くぼみが拡大すること。結果として視神経線維がだんだん萎縮し、視野欠損となる。

*5 網膜神経節細胞:目の中にある網膜が、光を感じ取って、その情報を視神経で脳へ転送する。図2のように、網膜神経節細胞の長い軸索が束(視神経)になって、視神経を構成している。

*6 カルパスタチン遺伝子欠損(Cast-KO )マウス:細胞内由来で、カルパインの活性を抑えるたんぱく質がカルパスタチンです。そのカルパスタチンの遺伝子が働かないマウスであり、カルパインの活性が活発になりやすく、障害を受けて細胞死を起こしやすい。

*7 ビンブラスチン:細胞分裂の際に働く微小管の形成を阻害して、がん細胞の分裂を妨げる抗がん剤の一種。神経細胞の軸索流に関わる微小管を破壊したら軸索流が止まり、軸索障害が起きる。

リリース本文中の「関連資料」は、こちらのURLからご覧ください。

図1,2

http://release.nikkei.co.jp/attach_file/0296120_02.pdf
ーーー引用終了ーーーーーー

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