お問い合わせ

03-5677-3930WEB

ブログ

2011年8月15日

2524 黄斑円孔を伴う網膜震盪から黄斑萎縮へ:

眼球に強い打撃を受けて網膜震盪を起こし、最終的に強い視力障害を残してしまう症例が有ります。
「網膜震盪x網脈絡膜萎縮」(comotio retunae x chorioretinal atriohy)をグーグルで調べてみますと、2002年の英国眼科雑誌に黄斑円孔を伴う網膜震盪の症例報告がありました。
2004年の症例は黄斑円孔はなくて、網膜中心動脈閉塞の合併であったと言っていました。いずれの症例も発症数ヵ月後には網脈絡膜の委縮した眼底写真を見せています。

このブログの以前の記事 網膜震盪とは(⇒リンク)も御覧ください。

ーー論文の概要ーーーーー
Br J Ophthalmol. 2002 April; 86(4): 473–474. PMCID: PMC1771101

眼球への鈍的外傷に続いて起きる網膜振盪症は網膜の混濁をもたらします。 軽度の網膜振盪症は通常ほとんど痕跡を残さずに自然に消失しますが、より重症の症例では視力障害を残します。 全層性黄斑円孔(FTMH)を伴う重症の網膜振盪症のOCT画像についての報告は従来なく、この症例が初めてです。

患者は右眼にフットボールによる鈍的外傷を受け24時間後に紹介された15歳の少年です。初診時、矯正視力は右眼が指数弁、左眼は1.0でした。眼底には後極で、後部硝子体剥離(PVD)はなく、全層黄斑円孔(FTMH)を伴う広範な網膜振盪症が見えました。カラー眼底写真とOCT画像(ツァイス-ハンフリー社)が撮られました)(図1)。 OCTは全層黄斑円孔を示していて、視細胞外節と網膜色素上皮(RPE)の大規模な断裂を示します。

01725_f1

図1(A) 鈍的外傷の1日後の後極の黄斑円孔の上には広範囲の網膜振盪症がある15歳の少年の黄斑。 (B) 黄斑の中央を通るOCTの水平断面は、全層に及ぶ黄斑円孔を示し、視細胞外節と網膜色素上皮層の断裂を示す。視神経は図の右端に写っています。

患者は局所ステロイドの短期投与で保存的に治療されました。 1カ月後、眼底のカラー写真とOCT画像を図2に示します。 黄斑円孔の自然閉鎖にもかかわらず、視力は1年間後で指数弁に留まりました。

01725_f2

図2
(A) 右眼、受傷1カ月後の黄斑には、広範な網膜色素上皮の断裂、著しい網膜上膜の形成があり、黄斑円孔は自然閉鎖しています。 (B) 右の黄斑の中央を通る水平なOCT画像は、網膜振盪症の解消、黄斑円孔の自然閉鎖、そして視細胞と網膜色素上皮の反射の乱れを示しています。

コメント

網膜外傷の主要な部位は視細胞と色素上皮細胞が接するあたりであることがOCTに現れていました。Sipperleyらの霊長類を用いた組織学的変化の研究によって示されたように、 OCT画像は視細胞外節の細分化と傷害された細胞体を示しています。

黄斑円孔の発生における網膜振盪症の正確な意味付けは不明です。ホーらは、et alらは成因に関する3つの基本的な理論を唱えています。

それは外傷性の網膜障害理論、嚢胞性に網膜の変性が起きるという節、そして硝子体が原因であるという理論です。

 これらの中では、後者の硝子体原因説が、原発性黄斑変性形成の文脈ではもっとも多くの支持を集めるでしょう。

私たちの症例におけるOCT画像は、黄斑円孔の縁が不規則で楕円形であり、しかも硝子体剥離を伴ってはいません。硝子体皮質の凝縮も、また黄斑上の硝子体混濁も有りませんでした。

この特性は、特発の老人性黄斑円孔で黄斑円孔が形成される時に提案された原因とは異なった機序を示しています。

私たちは、硝子体や強膜に対する網膜の機械的変形が、強い網膜の視細胞外節に変形を作り、それがこの症例で網膜の黄斑に全層性の円孔を形成する原因になっていたのだと考えています。

網膜は、中心小窩と視細胞外節レベルでは、ミューラー細胞の支持が最も弱くなっています。したがって、この部分での変形が最も強いことでしょう。

網膜震盪を伴う外傷性黄斑円孔のOCT画像を報じた唯一の報告では、大規模な網膜外層の断裂は観測されなかったとされていました。

 硝子体切除手術が首尾よく外傷性の黄斑円孔を閉じさせて、多くの症例で視覚機能を改良できたという、期待を持たせるデータがあります。

しかし私たちの示した様な症例では、重症の網膜振盪症で視細胞と色素上皮の障害損害が強いので、外傷性黄斑円孔の自然閉鎖に手術が何らかの利益を与えるだろうとは思われません。

最終的な視力の予後は初期の段階での視細胞傷害の程度、色素上皮の委縮や色素の沈着などによって制限されます。

私たちは、OCT画像が、網膜震盪症の原因を考える場面においてもまた、眼外傷に伴う網膜外層の破壊の評価の場面においても有効な情報を与えてくれるものと考えます。

この情報は硝子体手術を行った場合の利益がありそうな患者の判別に役立つかもしれません。
ーーーーーーーーーー
清澤のコメント;
この症例に似た症例を拝見することがありましたので、患者さんへの説明に間違いはなかったであろうかと考えて、改めて最適なコンセンサスを求めるために、英文の論文をざっと訳してみました。

この論文は、何しろ2002年の論文で、画像の鮮明度は最近の絵には負けますが、この間で論理はほとんど進歩してはいないと思います。
nihms304232f2(IS-OSラインの乱れを持つ網膜震盪症のOCT、最新の機械で撮った絵です。)

新しい論文のOCTの絵と見比べて下さい。網膜の中の視細胞内節ISと視細胞外節OSがはっきり見分けられるようになっています。その間がIS-OSラインで、最近のOCT読影では、網膜外層の障害ではここが乱れるとされているようです。

カラーの写真では、網膜色素上皮の委縮が強く見えるので、網膜色素上皮への酸素や栄養の補給を裏で支える脈絡膜の循環がおちてはいないのか?と考えましたが、その記載は見られませんでした。

Categorised in: 未分類