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2011年8月11日

2511 マルカの長い旅。 を読みました。

マルカの長い旅
子供の夏休みの感想文のための課題図書です。

第二次世界大戦下のドイツ軍に占領されたポーランドに住んでいたユダヤ人一家の物語。夫と離れて暮らす女医の母親は、自分がドイツに有用な人材なので一般のユダヤ人が収容されても自分らは許されると信じていた。

しかし、実際にユダヤ人狩りが始まると、顔見知りの患者でもあったドイツ軍将校がしてくれたのは、目下の急患処置を続けよと言いながら、彼女らが徒歩での逃避行に出るのを見逃してくれただけであった。

ユダヤ人狩りを逃れ、国境の山々を越えて、ハンガリーに逃れようとするのだが、母親(ハンナ)と二人の子供(ミンナ・16歳、マルカ・7歳)にとって逃避行は決してなま易しいものではなかった。まして子供には何故苦しみながら逃げねばならないのかを理解することもできない。

足の傷から敗血症を起こし、マルカは途中で人に預けられるのだが、預かった家がユダヤ人を匿っている事を疑われるに及び、子供のマルカは置き去りにされる。町を彷徨い、やがて子供は一人警察の手でポーランドに送り返されてしまう。

医師であった母親の知り合いが、あちこちで助けてはくれるのだけれど、結局はワルシャワのユダヤ人の隔離地区・ゲットーの一家に預けられる。ユダヤ人達は皆このゲットーにが集められ、また次々に殺戮工場である強制収容所へと送りだされてゆく。それが、ホロコースト(ユダヤ人の皆殺し)を意味することを、家の子は読み取れなかったようだ。

マルカは、ユダヤ人の移送を様々な手段でやり過ごす。食事は、移送されたユダヤ人たちが置いていったものを盗んだり、物乞いで得た。やがてチフスに罹り医者だったマルカの母を知っている医師の配慮で、しばらくは病院で過ごす。チフスの原因となる虱を避けるためなのだが、マルカは長く美しいブロンドの髪を坊主にされる。その散髪をした老人も、孫娘を失った過去があるらしく、切断したマルカの髪を大切そうに自分のトランクに仕舞い、マルカには非常時のゲットーからの逃げ道を教える。

悲しいことに、マルカは最初に親から人に預けられて悲惨な経験を重ねるうちに、母をお母さんとしてではなく、自分はハンナ・マイ先生の子供のマルカ・マイであると親を突き放した認識しかできなくなっていってしまう。自分の年齢もあの時は7歳というばかりである。だから、母が迎えを送っても逃げてしまうし、物語の終わりで母とマルカとは再会出来るのだけれど、実は、決してハッピーエンドな訳ではない。

作者は、戦後にイスラエルでこの少女が成長したマルカと出会って彼女の経験を聞くのだけれど、マルカは精神的にも傷付き過ぎていてひどいPTSDだったらしく、体系的に自分の経験を話すこともできなかった。だから著者は、本人から聞いた話と、歴史とを重ね合わせながら、この物語に肉付けをしたとあとがきで説明している。

ユダヤ人であったが故に迫害を受けたというだけでなく、逃避行の内にシングルマザーであった母親とはぐれ、余りに悲しい経験をするうちに、人間性にもトラウマを残してしまったという悲惨な経験をした女性の物語であった。

一緒にこの作品を読んだ家の小学生の子供には、そこのところは理解できなかったようで、”人種差別は良くないが、主人公の少女は母に再会できてよかった”に終わったようだ。

マルカの長い旅 [ハードカバー]
ミリヤム・プレスラー (著), 松永 美穂 (翻訳)
価格: ¥ 1,680

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