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2011年3月3日

2082 再生医療学会が幹細胞治療に関する勧告文を出しました

再生医療学会は幹細胞治療に関する勧告文を出しました。手続き無視なら研究者を学会から除名もするとしています。その記事によりますと:

ーーーー記事の引用ーーー
 日本再生医療学会(理事長、岡野光夫(てるお)・東京女子医大教授)は2日、全会員3475人(2月21日現在)に向け、薬事法による承認や保険適用を受けていない幹細胞治療に関与しないよう求める勧告文を発表した。岡野理事長は会見で「いきすぎた(関与があった)場合は除名処分なども検討したい」と述べ、会員の注意を促した。

 幹細胞は、分裂して同じ種類の細胞を生み出したり、血液や筋肉、神経、皮膚のように特定の役割を持つ細胞に変化したりできる細胞。幹細胞を患部や血液中に注入する幹細胞治療は、ほとんどが研究段階にある。

 しかし、一部の医療機関では、国の指針に沿った臨床研究や治験などの正規の手続きを踏まない「治療」が、医師の裁量で施されている。

 この問題に関連し、英科学誌ネイチャーが昨年11月、日本にある韓国企業の提携医療機関で、幹細胞治療を受けた韓国人患者1人が死亡した事例を報じた。会見では、同学会生命倫理委員会委員長の岡野栄之・慶応大教授が、同誌の記事をきっかけに学会内で議論した経緯を紹介。「自主診療の名の下で、安全性や有効性が疑問視されるような治療が行われている。勧告を抑止力としたい」と述べた。【須田桃子】

毎日新聞 2011年3月2日 22時19分
—–引用終了ーーー

清澤のコメント:
この記事を読んでも何のことか良く解からないのではないかと思われますが、関西医科大学法医学講座/関西医科大学大学院法医学生命倫理学研究室の頁(リンク)を見ますとこの辺りがやや詳しく解説されています。

最近では医学研究は、論文として発表する際に、倫理審査委員会の承認が得られて行われたということの証明が求められる場合が多くなりました。

この医学倫理委員会では当該研究施設で行われる人間を対象とする医療行為及び医学研究に関して、ヘルシンキ宣言の精神及び趣旨を尊重し、医の倫理に関する事項を遵守するために、研究の倫理的側面について議論・検討を行い、医の倫理、患者の人権が守られているか否かを審査します。

 その設置は医学系大学、医学系研究所、一般病院等で行われ、1980年代以降に自主的に設置され始めたものですが、最近はこの委員会の任務及び責務が、「疫学研究に関する倫理指針(平成19 年8 月16 日19文科振第438 号科発第0816001 号)」及び「臨床研究に関する倫理指針(平成20 年7 月31 日厚生労働省告示第415 号)」の定めるところによるとされたようです。

 その英語表記は:Institutional Review Board (IRB), Research Ethics Committee (REC) などですので、しばしば「IRBの承認を得て臨床研究を始める。」といういいかたがなされます。

また、「生命の萌芽を用いる研究」では準備はこれだけにとどまらず、各種指針に従って審査後、関係省庁の認可を得なければならないようになっています。

たとえば、ヒトES細胞:受精胚(受精後の胚盤胞)の中の内細胞塊と呼ばれる細胞群が多能性 (あらゆる組織、臓器に分化できる能力) を持ち、この細胞群を用いて研究用のヒトES細胞を作る、は種々の条件下で培養することにより、あらゆる臓器細胞に分化し得るものですが、もとの受精卵は体外受精の余剰胚を使用しています。

これでは、ヒトES細胞の樹立及び使用に関する指針(2001年9月、文部科学省)により、倫理委員会で審査・承認を受けた後、さらに文部科学省で審査・承認された研究のみが実施できると決められています。

クローン胚:体細胞中の核 (遺伝子を含むところ) を受精卵などに導入して作る細胞。
 この研究ならば、ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律(2001年12月)、特定胚の取扱いに関する指針(2001年12月、文部科学省)により規制されていますから、倫理委員会で審査・承認を受けた後、さらに文部科学省で審査・承認された研究のみが実施できます。

 また、人間改造につながるので、遺伝子治療臨床研究に関する倫理指針(2002年3月、文部科学省、厚生労働省)では、生殖細胞や胚 (受精卵) の遺伝子改変を禁止しています。

今回の学会の声明は、このような手順を踏まない研究的な治療に手を染めてはいけないということを言っているわけですね。

従来は、まず手を動かして見て、そこから得られた初歩的な結果を自ら積み重ねるという方法で医学論文は作られていったのですけれども、現在ではこのようにかなり厳密な結果の予想がなされた上で、安全性や有効性を確保しつつ実験が始められさらに進められなくてはならないという時代になっています。

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