お問い合わせ

03-5677-3930初診受付

ブログ

2011年2月9日

2031 白内障手術、後愁訴や不満への対応(塩川美菜子 先生)を伺いました

kyouto術後愁訴や不満への対応 眼科手術学会:
シンポジウムで井上眼科病院 塩川美菜子 先生の
”白内障および緑内障手術”を伺いました。

そのご講演の清澤メモです。
今回はポイントを絞って白内障手術の部分だけをご紹介いたします。
(4人の演者は清澤、塩川、梶田、山本、 各ページにリンク)

東京二重富士

ーーー概要ーー
術後の愁訴や不満は術者にとって名誉なことではないのですが、一昔前は多忙を理由に逃げ、看護師や視能訓練士任せも可能でした。しかし、昨今ではそれは外来の強力なストッパーとなっていて、医師を悩ませる軽視できない問題となっています。

社会背景として
患者の権利意識が向上し、自己主張をするようになりました。
必要な医療情報の収集が容易になりました (インターネット・過剰報道)
疾患・治療に対する患者の勝手な思い込みがある場合もあります
医療に対する過剰期待、ひいては不信や理解不足がある場合もあるでしょう
手術に思い通りの結果を求める傾向もあります。

 そして、結果が患者さんの思い通りでないことに我慢ができないゆえに

  「手術の失敗」と解釈するということが起きてきます。

ですから、現代の医師には”術者には技術だけでなく患者満足度追究も重要な課題”となっているのです。

術後愁訴を主訴に井上眼科病院神経眼科外来を受診した患者は2006.12月~2008.4月
に73人いて、内訳は白内障60%、網膜硝子体手術20%、眼瞼15%、斜視は10%だったとのことです。

新患はこの間に約8500人件で、術後愁訴を主訴とした患者の割合は新患の0.5%(当然、全例が他院での手術例)だったそうです。主訴は見え方に関する物が 26例、疼痛が6例、羞明3例、充血など4例、複視2例、眩暈1例ということです。(2008年白内障学会 教育セミナー資料)(注:母数は井上眼科の新患でしたので演者の指摘により訂正しました:20112.13)

術後不満・愁訴の種類は
1. 期待はずれの屈折・視力
2. 既存の視覚異常の顕性化(変視、飛蚊)
3. 眼表面の問題(充血、異物感、流涙)
4. 両眼のバランス(複視・不同視・不等像視)
5. 眼瞼痙攣様症状(目を開けていられない、羞明)
6. 心療的問題(疼痛性障害・めまい・不眠)
と、先生は綺麗にまとめておいででした。

緑内障などで白内障手術をしても視機能改善に制限がでる症例では術前に丁寧にその説明をしておくことが必要ですし、愁訴の発生後には、傾聴・説明を繰り返す必要がありますとのお話。

それを誤ると、カルテ開示から訴訟に発展するケースもあると注意を喚起しておいででした。

手術では、既存の異常の顕性化も重要なポイントです。例えば黄斑上膜による像の歪みです。

眼表面関連には眼瞼痙攣様の症状が起こりえます。ドライアイ治療継続、漢方薬(抑肝散)投与、遮光眼鏡処方、改善なければドライアイ治療追加、そしてボトックス治療検討もなされます。すでに内科などで睡眠剤、安定剤(ベンゾジアゼピン)を投与されているケースも多いですが、場合によっては逆効果の場合さえありますのでご用心。

両眼のバランスが悪く、複視という訴えの場合もあります。軽い斜視などでは後発白内障で片方の視力が低下下ことでやっと複視がなくなっているという症例もあるそうです。重症例は眼内レンズ交換や片眼遮蔽(眼帯・遮蔽膜)で対応する場合もあるとか。

多焦点眼内レンズもクレームは少なくないものだそうですが、単焦点眼内レンズへの
眼内レンズ交換により簡単に解決するとは限らないというのは困った問題です。

先生は、白内障術後愁訴・不満への対応のポイントとして
患者が満足する医学的解決への治療は困難な症例が多いので、術前の説明で予防に努めることをおすすめになりました。

術後愁訴につながりやすい危険因子もいくつか挙げておいででした。

1.まず本意でない手術は薦めるべきではありません。視力が低くても術前の見え方に不自由がない患者さんには手術を進めるべきではありません。主訴が白内障ではない患者や、通院歴が短い患者では手術適応は慎重に決定するべきです。

2.次に、生来患者の脳が適応していた屈折、不同視などを勘案して、眼鏡使用頻度の大幅な変更を強いるような手術はよくありません。そうしますと術後不適応がおこるとお話されました。

3.視力低下の程度が白内障と強さに相当していない場合には、加齢、弱視などの他疾患の存在を疑うべきです。それは、術後の視機能改善に制限がでるからです。

4.眼位異常など。
眼表面の異常(ドライアイ、結膜弛緩)を始め、眼瞼痙攣様症状、鬱傾向も重要な問題です。これらは、術後顕性になりやすいからです。

というわけで、白内障手術についてのまとめは、

不自由していない患者に手術を勧めない

情報(インターネット、マスコミ、近所のおばさん、友人)により根拠のない期待をしている患者が多いことに医師は注意しましょう

愁訴は患者さんの「期待」がはずれると増強します。ですから、術前にはキツメに説明をする必要があります。
     
要するに、患者さんに過大な期待をもたせない ということでありました。
ーーーーー要旨はここまでーーーーーーー
東京ゲートブリッジ
清澤のコメント:
術後の不具合は医師にとってよりも患者さんにとってより大事なのですが、この会は医師が話し医師が聞く会でのお話ですので、このお話はそのように組み立てられていることをご了解下さい。

順天堂大学で以前助教授をお勤めになった大先輩も、”手術を受けたいとも言っていない患者さんに、私が手術で見えるようにしてあげよう。”などというのは僭越の至極であるということを言っておいででした。最近になって、私も白内障手術を患者さんにおすすめするのには大変慎重になりました。さし出がましくない親切心が、手術を行う眼科医師には必要です。

このご発表は白内障手術後の問題点をすべて網羅する広がりもあって、しかも大変まとまりがよく完成度も高いご発表であったと思います。

”白内障術後に眼瞼痙攣があることに気がつくことがある”というストーリーは偶然ながら私の発表の4番目の話題と同じお話になっていました。前眼部担当の私がこの発表の前で助かりました。数日前に、座長の若倉先生にはこちらのスライドをご覧頂き、”面白そうな話題になりましたね”というコメントを頂いてあったのですが、同じ井上眼科病院の塩川先生と同じ事象を多少異なった切り口でとらえたことを御存知荷なってのコメントで有った訳です。

私の講演が塩川先生の後であったら、壇上で困惑した事であろうと思いました。

Categorised in: 未分類