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2010年12月13日

1890 抗Ma2関連傍腫瘍性脳炎についての解説

腫瘍随伴Harrison’s Internal Medicine (図は Chapter 97. Paraneoplastic Neurologic Syndromesより)

稀な病気ですが、抗Ma2関連傍腫瘍性脳炎についてBrainの論文のabstractを小林禅先生が訳して見せてくれました。

眼球運動障害が高率にみられる脳炎です。腫瘍細胞と神経細胞の共通抗原Ma2に対する抗体が悪さをするということになっているようです。
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Brain. 2004 Aug;127(Pt 8):1831-44.
Clinical analysis of anti-Ma2-associated encephalitis.

抗Ma2抗体関連脳炎は古典的な傍腫瘍性辺縁系脳炎や脳幹脳炎と異なるため見逃されている可能性があります。

著者らは38名の抗Ma2抗体関連脳炎患者を臨床的に分析しました。

34名(89%)の患者は辺縁系、間脳、あるいは脳幹の機能不全をきたし、4名は他の症候を示しました。

臨床的、画像的検査の結果、95%の患者が辺縁系、間脳、あるいは脳幹の障害を持っていました。

しかし、古典的な辺縁系脳炎を示したのは26%のみでした。
32%の患者には日中の過眠がみられ、時にナルコレプシー(睡眠発作)、カタプレキシー(情動性脱力発作)がみられ、脳脊髄液中ヒポクレチンは低値でした。

34%の患者でホルモン異常やMRI異常により間脳―視床下部の障害が示されました。

眼球運動障害は脳幹障害を有する患者の92%で顕著でしたが、辺縁系あるいは間脳障害を合併する患者では重篤に障害されていました。

眼球運動障害を示す患者の60%は垂直方向性の注視麻痺をきたしましたが、時に全方向性の外眼筋麻痺がみられました。

3名の患者は非典型的パーキンソニズムを呈し、そのうち2名に閉眼傾向、顕著な自発語の減少がみられました。

62%の患者では神経症候の出現は腫瘍の診断に先行していました。

脳MRIの異常は全患者の74%、辺縁系あるいは間脳障害を示す患者の89%にみられました。

悪性腫瘍が判明した34名の患者のうち、53%は精巣胚細胞腫でした。悪性腫瘍が証明されなかった2名のうち1名には精巣内微小石灰化が、1名には停留睾丸がみられましたが、これらは精巣胚細胞腫の危険因子です。

神経症候が出現した後、33名中17名は腫瘍に対する治療を(9名では免疫療法を併用)、10名は免疫療法を受け、6名は治療を受けませんでした。

治療の結果、33%は神経学的な改善を認め(3名は完全に回復)、21%は不変、46%は悪化しました。

症状の改善または不変に関連した因子は、1 男性、2 年齢45歳未満、3 治療による精巣腫瘍の治癒、4 抗Ma1抗体陰性、5 中枢神経障害が限定的であること、でした。

免疫療法(免疫抑制)と症状改善に相関はみられなかったが、一部の患者では明らかな効果がありました。

15名の患者(女性10名、男性5名)では、抗Ma2抗体に加え抗Ma1抗体が検出されました。

これらの患者には精巣腫瘍以外の腫瘍がみられる傾向があり、運動失調をきたしやすく、抗Ma2抗体のみを有する患者(女性2名、男性21名)に比べ予後が悪かったです。

死亡した患者の67%が抗Ma1抗体を有していました。

抗Ma2抗体関連脳炎は辺縁系、間脳、あるいは脳幹の機能障害がみられる患者、これらの領域にMRI異常がみられる患者、脳脊髄液に炎症反応がみられる患者で疑うべきです。

若年男性では原発腫瘍は精巣にみられることが多く、他の患者で最も多い悪性新生物は肺癌です。
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先日地方から上京して垂直性眼球運動障害を示した患者さんを念頭に於いてこの文献を私(清澤)に、教えてくださったようです。勉強不足でこのような疾患の存在は知りませんでした。

どなたかが、この翻訳を参考にしてくださることがあれば、私の不勉強が知られたとしても幸甚です。

腫瘍随伴

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